虫のコース料理
(閲覧注意!)虫たちの美味しそうな料理写真を掲載しています。
かつてより、「昆虫食」という言葉を耳にしたことはあった。
実際にアフリカや東南アジアを訪れた際、現地の人から味見させてもらったこともあったが、自分から進んで食べてみようと思ったことはなかった。
しかし。2021年のゴールデンウイークをいかに過ごすかという課題を目の当たりにした快晴の日、僕は魔界である上野センタービルの1階にて虫の自動販売機を発見し、そこで虫のコース料理を思い付くに至ったのであった。
尚、足や羽が歯に挟まってしまった場合を除き、僕はすべての料理を虫たちに敬意を払って完食していることを事前にお伝えしておきたい。
趣旨
さて。僕自身、虫を食べるのが好きなわけではない。ただ、せっかく食べるなら、よくある罰ゲームとしてではなく、美味しく頂くことはできないか。
そのように考え、虫のコース料理を思いつくに至った。
さほど料理が得意なわけでもないが、知恵を絞り「虫」という素材を生かしたメニューを検討した結果、和洋折衷の料理が完成した。
実食した感想を含めて、ここに記してみたい。
調達
上野センタービル1階にある虫の自動販売機にて行った。
ラインナップは、サソリ、タガメ、バッタ、ミックス幼虫、ハバネロコオロギ、タランチュラ、コオロギクッキー、芋虫、お楽しみ缶 etc.. とかなり充実している。
日本ではなかなか見かけない自動販売機であるとは言え、やや値段が高い。最も高価なのはタランチュラで、なんと2600円だ。
とりあえず、喉が渇いたのでタガメサイダーを購入し飲んでみた。
うーむ、美味いが、全くタガメの味がしない。普通のソーダを飲んでいるような感覚だ。ちなみに、裏面に注意事項が書いてある。
昆虫は甲殻類(エビ・カニ)等と非常に近い生物です。アレルギーをお持ちの方が食べないよう十分ご注意ください。
僕はエビもカニも好物なので、問題ない。むしろ好都合だ。
何を買うか迷ったが、中途半端は良くないと思い、高価なものから買い占めていった。残念ながらタランチュラ(2600円)は売り切れていたため、その次に高価でインパクトがあるタガメ(1500円)やオオスズメバチ(1500円)から仕入れていき、合計6つの虫ボトルを購入した。
自動販売機には、怖いもの見たさで足を止める人々が多いが、実際に購入している人はほとんどいない。高価な商品が多いくせに自動販売機はなぜか一度に1000円札1枚しか受け付けない仕様になっているため、隣に設置されていた両替機で両替しては購入、を繰り返すハメになった。購入中、虫の自動販売機を独占している男に視線が集まっていたのは気のせいだろうか。
実食
溢れんばかりの虫たちをバッグに詰め込み帰宅。テーブルの上に虫たちを並べると圧巻だ。
ただ、プラスチックボトルの蓋を開けてみると、パッケージ自体はさほど大きいわけではなかった。そして、パッケージを開けるとまた各々に発見と驚きがあった。
それでは、熟慮を重ね作った料理を紹介していこう。
前菜①:幼虫のサラダ
まずは軽めに。シンプルなレタスとトマトのサラダに幼虫ミックスをさっと振りかけた一品。アップで見ると、青々とした葉の上で幼虫たちが踊っているようだ。
口に入れると、幼虫の香ばしさが口腔内いっぱいに広がる。サクサクとした食感は、ロメインレタスのサラダにおけるクルトンのようだ。やや風味が強いのは否めないが、初心者でも気軽に味わえるのが幼虫たちだろう。
前菜②:幼虫のカナッペ
これもまだまだ序の口。既に幼虫に慣れているため、何の違和感もなく食べることができる。カナッペの場合、サラダと異なり、ハムやサーモン、チーズなどの存在感が強いため、幼虫はどちらかというと裏方の風味付け的な立場になってしまった。つまり、普通に美味い。しかし、素材を生かせているかというと、疑問が残る結果となった。
スープ:さそりのコンソメスープ
さて、さそり。素材としてはかなりパンチが利いている。以前メキシコにいたとき、キッチンのシンクにサソリが現れたことがあったが、それ以来の対面だ。もちろん毒は抜かれているのだろうが、心の隅に怖さは残っている。
だが、パッケージを開けると拍子抜けした。小さな乾燥した小ぶりなサソリ君が2匹だけ入っている。うーむ、ちょっとインパクトに欠ける。
コンソメスープに入れてみたが、サソリがスープの海に溺れて死んだような絵になってしまった。
味はあっさりとしており、幼虫よりクセもない。サクサクとして非常に食べやすい。予想よりも難易度の低い一品となった。
メイン:タガメ寿司
さそりがインパクトに欠けたため、この自動販売機の商品を侮っていたが、 タガメのパッケージを開いて驚愕した。
でかい!なんという存在感だ。企画の流れを一気に変えてしまうゲームチェンジャーである。文句なしの主役だ。
問題はどう調理するかだ。炒め物にしようか、てんぷらにしようか、はたまたラーメンの具にしてみるか。
熟考した結果、このフォルムをそのまま生かせる料理を選ぶことにした。
ついにメインディッシュ!最高の自信作がこちら、タガメ寿司だ!
海老やサーモンやマグロに勝るとも一歩も劣らない圧倒的な存在感!
サイズ感も絶妙であり、素材を存分に生かした料理である。タガメ寿司を思いついてしまったときは我ながら何て素晴らしいアイデアかと唸ってしまった。
さて、実食。
さすがにサイズが大きいだけあり、本当に食べられるのかと、一瞬戸惑ってしまう。しかし、ここまで来て食べないという選択肢はない。
寿司では一般的にネタに少量の醤油をつけて食べるのが良しとされているようだが、タガメが醤油にダイブしてしまいそうなので、シャリに醤油を少しつけて、一気に口へ放り込んだ。
バリバリバリッ!!
凄まじい音が口内で炸裂した。噛むたびに、タガメが砕ける音が身体に伝わる。外骨格、翅、足、乾燥した内臓。昆虫の構造を口の中で経験することができる。
クセはさほどない。おそらく製造の過程で塩漬けにされているのだろう、ほんのりとした塩気を感じる。だが、何より感じたのは、醤油が実によく合うということだ。タガメは「洋」ではなく「和」の素材なのかもしれない。またタガメのパリパリとした食感とシャリの柔らかさが絶妙で、新しい寿司体験を得ることができた。
タガメの質量が大きいため、翅や足が歯に挟まり、なかなか飲み込むのに苦労したが、2貫とも無事頂くことができた。
唯一悔やまれるのは、シャリとタガメの間にワサビを挟むのを忘れたことか。
デザート:①イチゴのオオスズメバチ添え
タガメ寿司でかなり満足したが、まだデザートが残っている。オオスズメバチだ。パッケージを開けると5匹のハチが現れたので、そのうち3匹をイチゴに添えハチミツをかけた。おまけにミントもトッピング。
どうだろう。ハチたちの鼻歌が聞こえてくるようだ。
ここで小さなトラブル。フォークでイチゴとスズメバチを一気に刺して食べようとしたが、スズメバチが意外と脆く、頭部が落ちてしまった。
この一品を作りたい方は、スプーンで掬いあげるように食べるのがおすすめですよ。
味は、文句なしに美味い。イチゴとハチミツの甘さが強いためか、スズメバチはサクサクとしたウエハースのようだった。そういえば、ウエハースの語源は蜂の巣だと聞いたことがあるが、図らずしてストーリーのある一品となった。
デザート:②コオロギクッキーのOREO仕立て
コオロギクッキーをそのまま食べるのはつまらないので、OREOを解体し、クリームの部分をコオロギクッキー2枚で挟みこんだ。結果、昼下がりのティータイムにぴったりな、上品な一品となった。
クッキーとOREOクリームの甘さにコオロギの仄かな塩気が加わり、一つ上の大人の味に仕上がっている。いつかイギリスで紅茶でも飲みながらつまみたい。
番外編:ハバネロコオロギ卵かけご飯
唯一食べたあとに気持ち悪くなったのがこちら、ハバネロコオロギ卵かけご飯だ。
ハバネロコオロギは、名前の通り、コオロギをスパイシーに味付けした食材だ。彼らを卵かけご飯のスパイスとして添えたら美味しいのではないかと目論んだのだ。
しかし。僕が卵かけご飯をそもそもあまり得意でないこともあり、ねっちょりとした食感と、ハバネロのしつこい辛さがいつまでも口の中に残り、完食するのに忍耐を強いられる一品となった。また、味が単調であるのも失敗の要因と考えられる。空心菜などと炒めたら美味しくなったかもしれない。
総括
どうだろう、虫はゲテモノ、という世間一般の見方を変えることができただろうか。たしかに生理的に拒否反応を起こしてしまうのは否めない。がしかし、パッケージに記載されているように、エビの仲間だと思えば不思議と食べることができる。
決して毎日食べたいものではないが、工夫次第で虫たちを美味しく食べることができるのだ。
最後に、かかった費用について記載して終わりにしたい。
(費用) オオスズメバチ 1500円、コオロギクッキー900円、タガメサイダー580円、サソリ1500円x2=3000円、タガメ1500円、ミックス幼虫1100円、ハバネロコオロギ1100円
※サソリ君は企画の準備段階で一度購入したため、2度頂きました。
これだけ食べまくって合計9,680円! うん、安いね!
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