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フリー・キャッシュ・フロー(FCF)ースタートアップ経営者必携の8つの知識⑧

この連載では、「スタートアップの経営者が必ず知っておかなければならない8つのコト」をテーマに、各論点についてまとめて参ります。

① 株主間契約
② 資本政策
③ ストックオプション
④ 資金調達用資料の作り方
⑤ バリュエーション
⑥ 基本的な事業計画の構成 
⑦ 投資契約の留意点 
⑧ フリー・キャッシュ・フロー ◀今回はこちら
執筆者情報
■加藤 涼  株式会社リアルワールド 執行役員CFOグループ本部長 

中央青山監査法人、モルガン・スタンレー証券、フォートラベル、バークレイズ証券、コーチ・ジャパン、クオンタムリープを経て独立。会計、金融、マーケティングに至るまで幅広い経験を有し、特に金融分野においては、ベンチャー企業投資、M&A、IPO、ストラクチャード・ファイナンス全ての実務に携わる。複数のベンチャー企業の役員を務めるなど、企業内部からの経営支援実績も多数。複数の上場企業・大企業のクライアントに対してCFO支援およびM&A・資金調達アドバイザリーサービス等を提供。
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IPOでもM&AでもカギになるDCF法・FCF


第8回目の論点は、「フリー・キャッシュ・フロー(FCF)」です。

未公開の会社におけるバリュエーションでは、ご存じの通りDCF法が多く使われますが、ここでいうDCFの「CF」はフリー・キャッシュ・フローを指します。
従って、バリュエーションを上げていくにあたって最終的に目指していくべきはフリー・キャッシュ・フローの最大化ということになります。

ベンチャー・ファイナンスにおいては、PSR(売上高の●倍というバリュエーション)だったり、KGI/KPIの指標、プロダクトがあるかどうか、トラクション(顧客の牽引力)の状況など、会社のビジネスモデル、ビジネスの進捗状況や投資ステージに応じてバリュエーションのロジックがあろうかと思います。
しかしながら、N-2(IPOの申請期をNとして、その2期前)以降の会社については、引受証券会社の審査上、基本的に第三者機関が策定するバリュエーション・レポートを求められますので、DCF法によるバリュエーションが行われることが多いですし、バイアウト時におけるバリュエーションでもDCF法が使われることが多いため、その本源的な価値となるフリー・キャッシュ・フローを抑えておきましょう。


また、後段ではスタートアップの会社がバリュエーションされる際に第三者評価機関の評価で使われることが多いDCF法の中でも、ベンチャー・キャピタル・レートを用いたPerpetual growth法について、実際のエクセルを使って説明したいと思います。
こちらは、シード・ラウンド以降でこれまでエンジェル投資家など身近な方々以外の外部投資家(VC含む)から調達を検討されている方々には抑えて頂きたい論点になりますので、やや難解な部分もありますが、是非覚えて頂きたいと思います!



FCFの向上方法:PLの改善以外にBSにも着目!


フリー・キャッシュ・フローは以下の算式で求められます。

FCF = EBITDA -資金(資産計上される開発費など) 
   -税金-運転資本の正味増加額

各項目については、ネット上多くの説明がありますので、それぞれの定義などの解説はここでは割愛させてください。

ここで強調したいのは、経営努力でFCFの向上をするにあたって、PLに目が行きがちではないかというところです。
例えば、ビジネスモデルとして利益率の向上が中々難しいために、中々FCFを上げて行くことができないと考えている場合などです。小売業、卸業、代理店業などが該当するかと思います。

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