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ビジョナル株式会社FY24/7 Q3決算概要

ビジョナル株式会社は、日本企業の人的資本経営を支援するHRテック企業です。近年、日本企業は労働人口の減少やデジタル化の遅れといった課題に直面しており、人的資本経営の重要性が高まっています。

ビジョナル株式会社は、これらの課題を解決するためのサービスを提供しており、今後の成長が期待されています。本資料は、同社の2024年7月期第3四半期決算説明資料であり、同社の事業内容や今後の戦略を理解する上で重要な情報が含まれています。

また後段では、M&Aや資本業務提携のアイデアについても考えます。


概要

ビジョナル株式会社は、第3四半期累計の売上高が489.2億円と、前年同期比17.8%増と堅調に推移しています。特に、HRMOS事業が好調で、売上高は前年同期比74.4%増となりました。一方で、BizReach事業は、企業の採用ニーズの縮小や厳選採用の拡大により、やや伸び悩んでいます。

しかし、同社は、BizReachとHRMOSの連携強化や新規事業の創出など、成長戦略を着実に実行しており、今後の成長が期待されます。

会社概要

ビジョナル株式会社は、2009年に設立されたHRテック企業です。「新しい可能性を、次々と。」をグループミッションに掲げ、HR Tech事業とIncubation事業の2つのセグメントで事業を展開しています。

HR Tech事業では、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「BizReach」やHCMプラットフォーム「HRMOS」シリーズなどを提供しています。Incubation事業では、物流DXプラットフォームや脆弱性管理クラウドなどの新規事業を創出し、社会課題の解決を目指しています。

対象市場・競合状況

ビジョナル株式会社の対象市場は、日本の採用市場です。近年、日本企業は労働人口の減少やデジタル化の遅れといった課題に直面しており、人的資本経営の重要性が高まっています。

  • 労働市場の課題:

    • 少子高齢化による労働人口の減少: 企業は人材不足に悩まされており、優秀な人材の獲得競争が激化しています。

    • 終身雇用制度の崩壊: これまで主流であった終身雇用制度が崩壊し、転職がより一般的になっています。

    • デジタル化の遅れ: 多くの日本企業では、人材管理や採用活動において、いまだに紙やExcelなどのアナログな手法が主流であり、業務効率化が課題となっています。

    • 人的資本経営の重要性の高まり: 投資家や社会からの要請により、企業は従業員の能力開発やエンゲージメント向上に積極的に取り組む必要性が高まっています。

  • 競合:

    • 総合型人材紹介会社: リクルート、パーソルキャリア、dodaなど、幅広い層の人材を対象に転職支援サービスを提供しています。

    • ハイクラス人材紹介会社: JAC Recruitment、Robert Waltersなど、管理職や専門職など、ハイクラス人材に特化した転職支援サービスを提供しています。

    • その他HRテック企業: 採用管理システム、タレントマネジメントシステム、人材評価システムなど、様々なHRテックサービスを提供しています。

ビジョナル株式会社は、これらの競合に対して、BizReachとHRMOSという2つの強力なサービスを保有していること、AIなどの最新技術を活用したサービスを提供していること、豊富なデータに基づいたコンサルティングサービスを提供していることなどが強みとなっています。

事業概要

BizReach事業

  • 概要: 2009年に日本で初めてハイクラス人材に特化した会員制転職サイトとしてサービスを開始しました。求職者と採用企業、ヘッドハンターの3者をオンラインでマッチングするプラットフォームを提供しています。登録会員数は247万人を超え、国内No.1の規模を誇ります。

  • 特徴:

    • ハイクラス人材に特化: 管理職や専門職など、年収600万円以上のハイクラス人材に特化しており、質の高い求人情報と求職者が集まっています。

    • AIを活用したサービス: AIを活用したレジュメ自動作成機能や求人自動作成機能など、独自のテクノロジーを駆使したサービスを提供しています。

    • データに基づいたコンサルティング: 豊富なデータに基づいたコンサルティングサービスを提供し、企業の採用活動を支援しています。

  • 収益モデル: プラットフォーム利用料(リカーリング売上)と採用成功報酬(パフォーマンス売上)の2つの収益源があります。

HRMOS事業

  • 概要: 2016年にリリースされたクラウド型タレントマネジメントシステムです。採用管理、目標設定、評価、育成、配置など、人材管理に関するあらゆる業務を効率化することができます。

  • 特徴:

    • BizReachとの連携: BizReachと連携することで、採用から育成までを一気通貫で支援するHCMエコシステムを構築しています。

    • AIを活用したサービス: 生成AIを用いたポジション要件自動作成機能や社内レジュメ自動作成機能など、AIを活用したサービスを提供しています。

    • 多様な機能: 採用管理、目標設定、評価、育成、配置、エンゲージメントサーベイ、360度フィードバックなど、多様な機能を提供しています。

  • 収益モデル: 月額利用料制です。

経営戦略

ビジョナル株式会社は、以下の3つの経営戦略を掲げています。

  1. BizReachの持続的成長と利益拡大

    • プロフェッショナル人材領域における会員基盤の拡大: より多くのハイクラス人材にサービスを利用してもらうことで、採用企業にとっての魅力を高めます。

    • 未利用企業の新規開拓: まだBizReachを利用していない企業にアプローチし、顧客基盤を拡大します。

    • 利用企業への深耕営業: 既存の顧客企業に対して、より多くのサービスを利用してもらうことで、顧客単価の向上を目指します。

    • AIを活用した新機能の開発: AIを活用したレジュメ自動作成機能や求人自動作成機能など、新たな機能を開発することで、顧客満足度を高めます。

    • データ分析に基づいたサービス改善: 蓄積されたデータを分析し、サービスを改善することで、顧客企業の採用成功率向上に貢献します。

  2. BizReachとHRMOSのデータ連携を通じたHCMエコシステムの構築

    • 採用から育成までを一気通貫で支援: BizReachで採用した人材の情報をHRMOSに連携させることで、入社後のオンボーディングや育成、評価などをスムーズに行うことができます。

    • データに基づいた人材戦略の立案: BizReachとHRMOSのデータを統合的に分析することで、企業は自社の人材の強みや課題を把握し、より効果的な人材戦略を立案することができます。

    • 人的資本経営の実現: HCMエコシステムの構築を通じて、企業は従業員の能力開発やエンゲージメント向上に積極的に取り組み、人的資本経営を実現することができます。

  3. 継続的な新規事業創出やM&Aの活用

    • 社会の変化と技術の進化に対応: 社会の変化や技術の進化に合わせて、新たな事業領域に参入し、社会課題の解決に貢献します。

    • 事業ポートフォリオの強化: M&Aを活用することで、既存事業とのシナジー効果を生み出し、事業ポートフォリオを強化します。

    • 持続的な成長: 新規事業の創出とM&Aの活用を通じて、持続的な成長を目指します。

財務概要

2024年7月期第3四半期累計の連結業績は、売上高が489.2億円(前年同期比17.8%増)、営業利益が152.6億円(同53.2%増)、純利益が110.8億円(同57.5%増)となりました。通期見通しは、売上高が664.0億円、営業利益が172.0億円、純利益が122.2億円と、増収増益を見込んでいます。

クロスSWOT分析

強み

  • BizReachの市場での優位性: プロフェッショナル人材に特化した採用プラットフォームであるBizReachは、国内で高い知名度と豊富なデータベースを有しており、採用市場における競争優位性を確立しています。

  • 独自のビジネスモデル: プラットフォーム利用料と成功報酬の組み合わせによる収益構造は、景気変動の影響を受けにくい安定性を提供しています。

  • データとテクノロジーの活用: 蓄積されたデータとAI技術を活用したレジュメ自動作成機能や求人自動作成機能は、顧客の利便性を向上させ、サービスの価値を高めています。

  • HCMエコシステムの構築: BizReachとHRMOSの連携によるHCMエコシステムの構築は、企業の人材戦略を包括的に支援し、新たな収益源となる可能性を秘めています。

  • 新規事業創出のノウハウ: 新規事業の創出とM&Aを積極的に活用することで、新たな成長機会を創出し、事業ポートフォリオを拡大しています。

弱み

  • BizReachへの依存: 売上高の大部分をBizReachに依存しているため、同事業の業績悪化は、企業全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

  • HRMOSの収益化: 成長を続けるHRMOSですが、依然として赤字であり、早期の収益化が課題となっています。

  • 競争激化: HR Tech市場は競争が激化しており、競合他社との差別化が重要になっています。

  • 海外展開の遅れ: 国内市場での成功を収めていますが、海外展開は遅れており、グローバル市場での成長機会を逃している可能性があります。

機会

  • 雇用市場の流動化: 日本の雇用市場は流動化が進み、中途採用市場は拡大傾向にあります。この流れは、BizReachの成長を後押しする可能性があります。

  • 人的資本経営の重要性向上: 企業の人的資本経営への関心が高まっており、HRMOSのような人材管理システムの需要は増加すると予想されます。

  • デジタル化の加速: 企業のDX推進は、HR Techサービスの需要をさらに高めるでしょう。

  • 労働市場改革: 政府が推進する労働市場改革は、労働移動を促進し、BizReachの利用を促進する可能性があります。

脅威

  • 景気変動: 景気変動は、企業の採用活動に影響を与え、BizReachの業績に影響を与える可能性があります。

  • 競合の台頭: 新規参入企業や既存企業の新たなサービスによって、競争が激化する可能性があります。

  • 技術革新: AIなどの技術革新は、HR Tech市場に大きな変化をもたらす可能性があり、対応が遅れると競争力を失う可能性があります。

潜在的な競合とのシナジー

既存の競合とのシナジー

  • 人材紹介会社: BizReachと人材紹介会社は競合関係にありますが、協力関係を築くことで、より広範な人材プールへのアクセスが可能になり、顧客企業の採用成功率を高めることができます。

  • 求人広告プラットフォーム: BizReachと連携することで、求人広告の効果測定やターゲット設定の精度を高めることができます。

異業種とのシナジー

  • IT企業: IT企業との連携により、AIやデータ分析技術を活用した新たなHR Techサービスを開発することができます。

  • 教育機関: 教育機関との連携により、人材育成プログラムの開発やキャリア支援サービスの提供が可能になります。

これらのシナジーを通じて、ビジョナル株式会社は、HR Tech市場における競争優位性をさらに強化し、持続的な成長を遂げることが期待されます。

考えられるM&Aや資本業務提携のアイデア

買収企業となり得るM&Aや資本業務提携のアイデア

  1. タレントマネジメントシステム(TMS)ベンダーの買収:

    • ターゲット企業: タレントパレット、カオナビ

    • シナジー: HRMOSとの機能連携・統合による製品競争力の強化、顧客基盤の相互活用、クロスセルによる収益拡大

  2. 人的資本開示支援サービス企業の買収:

    • ターゲット企業: 人材研究所、プロノイア・グループ

    • シナジー: HRMOSとの連携による人的資本経営ソリューションの強化、コンサルティングサービスとの連携による顧客価値向上、人的資本開示に関するノウハウ獲得

  3. 福利厚生プラットフォーム企業の買収:

    • ターゲット企業: リロクラブ

    • シナジー: 従業員エンゲージメント向上施策との連携、HRMOSとの連携による従業員満足度向上、新たな収益源の創出

対象企業となり得るM&Aや資本業務提携のアイデア

  1. 大手人材派遣会社による買収:

    • ターゲット企業: リクルートホールディングス、パーソルホールディングス

    • シナジー: ビジョナルのHR Techサービスと人材派遣事業の連携によるワンストップソリューションの提供、顧客基盤の相互活用、採用・派遣の一体的なサービス提供

  2. 大手IT企業による買収:

    • ターゲット企業: NEC、日立製作所

    • シナジー: ITインフラやセキュリティ技術との連携によるHR Techサービスの安定性・信頼性向上、大企業向けシステムとの連携強化、グローバル市場への展開支援

  3. 金融機関による買収:

    • ターゲット企業: 三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ

    • シナジー: ビジョナルのデータ・AI技術を活用した金融サービス開発、人事評価データに基づいた融資サービスの提供、企業・個人向けの資産運用サービスの展開

これらのM&A戦略は、シナジー効果を最大化し、ビジョナル株式会社の企業価値向上に貢献する可能性を秘めています。

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