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『世界の名作』を本屋さんが配達してくれた思い出 〜本とのこと②〜

小学生のころ、家の前にブロロロ・・・ガチャンとバイクの止まる音がすると、私は玄関に飛び出して行ったものだ。
それは、馴染みの本屋さん「エース書房」さんのバイクの音。私は子どものころから本が大好きだった。
家族みんな、好きな雑誌を定期的に届けてもらったり、学校で必要な辞書類などを頼んだり。いつも「エースのおっちゃん」がバイクでブーンと持ってきてくれるのだ。

その中で私が一番楽しみにしていたは、小学館の「少年少女世界の名作」という、月に1冊ずつ配本される、分厚い文学全集だった。
そこには、世界中の読み物が詰まっていた。児童文学だけでなく、古典・伝記・科学読み物などなど。
本の虫だった私は、いつもその本たちをむさぼるように読んでいた。
私にとって「世界の名作」は文字通り、世界への入り口だったのだ。

50年近く経った今でも、その全集が並んだ本棚や本の重み、栞をしゅがんだ匂いまでが思い出される。
(私は小さい頃、本を読みながら栞の紐をしゅがむクセがあったのだ)

そんな自分の一部のようだった「世界の名作」だが、55巻もあるためものすごくカサばり、新しい本が並ばないので箱に詰めて押入れにしまっていた。

結婚して家を出るとき、実家に置いていくかどうかを悩んだ末、
「やっぱり持って行こう!」と決めていざ押入れの中をあけてみると、
あるとばかり思っていたその本たちは、いつのまにか母が知り合いの子どもさんにあげてしまっていたのだった。 
ガーン!

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