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彼との別れがつらすぎるので、だれか話をきいてください


出会ってからちょうど4年。

叶うはずのない願いを、

現実になるようにと

自分に言い聞かせているうち、

"これからもずっと一緒にいられる"

いつのまにか、そう思い込んでいた。

だから、うっかり、忘れていた。

わたしたちには、タイムリミットがある。



先日、彼が、急に体調を崩した。


これまでただの風邪すらほとんど引かなかった彼が、
珍しく調子を崩したこと。

共に過ごして、4年が経ったこと。


これらがもつ意味にどこかで気づいていながら、
その先に待っている現実がこわくて。

わたしは不安を頭の隅に追いやって、
考えないようにしていた。


出会ってからは、ずっと一緒にいる彼。
とても優しくて、わたしが八つ当たりをしても、
いつも変わらず穏やかな顔でいてくれた。

今も、傷ひとつない綺麗な顔。
だから本当に考えたくもなかった。



しかし事態はわたしを待ってはくれない。

時間を置いても彼の体調は一向に良くならず、
民間療法などあれこれ試みるも、悪化する一方。

さすがにもう、誤魔化しきれない。

考えないようにしていた最悪の事態が頭に浮かぶ。



それでも微かな希望を抱き、北海道で唯一、彼を治してくれる可能性のある場所へ向かった。

そこには救いを求めて多くの人が集まるが、タイミングがよかったのか、あまり待たずに診てもらうことができた。


担当してくれた若いスタッフは、わたしにいくつかの質問をしながら、テキパキと彼の検査を行なっていく。

ときどき何かを考えるように手を止めたり、首を傾げたりするけれど、それもほんの一瞬で。

なんとなく、わたしの中で嫌な予感がもくもくと大きくなる。

背筋を伸ばし、気を張って、結果を待った。


検査を始めてどのくらい経っただろうか、とても長く感じたけれど、時計を見ればわずかに5分ほどだったはずだ。

スタッフがわたしへ向き直り、口を開く。



そして、ハッキリと告げた。


"回復の見込みがない"


これで、微かな希望も打ち砕かれた。


もう、彼と一緒にはいられなくなる。

どこかで予感していたとはいえ、突然の別れに、頭を、心を、整理できない。

直前にガムテープで補強した心になんて、到底耐えられるものじゃなかった。

依存しすぎていたのが悪かったのか。
どうすればもっと一緒にいられたのか。


いつか来る別れではあった。

わたしたちの出会いには、はじめから、おわりが用意されていた。

わかっていたはずだ。

わかってはいたはずだけど、つらいものは、つらい。


どうにか帰宅し、今後のことを考えようとするも、彼との思い出が次から次へと浮かんでは、邪魔をする。

別れたくない。
離れがたい。

今はまだ、ここにいる彼。
正直、見た目には体調の悪さはわからなくて。

それが余計、別れを受け入れるのに時間を必要とさせた。


毎日わたしを起こしてくれた。
笑わせてくれたし、たまに泣かせてくれた。
沢山のことを教えてくれた。

わたしが我儘を言ったり、乱暴に振る舞ってしまっても、辛抱強く側にいてくれた。

何も話さなくても、一緒にいるだけで安心できる、そんな存在だった。

いつも貰うばかりで、わたしは彼に、何をあげられただろう。

涙が溢れて止まらない。


悲しさと愛しさ、後悔と感謝。

プラスもマイナスも、ありとあらゆる感情が一気に押し寄せてくる。

自分がこんなに感情豊かだったなんて、知らなかった。

それもぜんぶ、彼が教えてくれた。


出逢えてよかった。
これだけは確かだ。


しっかり者の彼だけど、迷子になってわたしを困らせたこともあったね。

いつもは道案内が完璧だったけれど、バンコクに行ったときには2人でたくさん迷ったよね。


友達には、彼のちょっと時代遅れなところを馬鹿にされることもあったけど、それでもわたしは好きだった。

小柄で薄い体も、実はカナヅチなところも、すぐに疲れて電池が切れてしまうところも、目が悪いところも、全部含めて、好きだったよ。


大好きだったんだよ。


ありがとう。


本当にありがとう。





さようなら、わたしのiPhone6。









【後日談】


新しい彼ができました。

自分でも嫌になってしまうのですが、わたしは常にパートナーがいないと、どうしてもダメで…

元彼に比べると身長が高く、肩幅は広く、胸板も厚いです。あと、顔がよくて、たぶんちょっとお洒落。

出身地は前の彼と同じです。

ガタイがよすぎて、わたしとは凸凹コンビだなあって思ったけど、慣れてきたらそんなに気にならなくてよかった。まあ本音を言うと、もう少し細くてもいいんだけど。

ほんとうにパワフルで、一日中活動していても疲れる様子がない…まだ一緒に海やプールに遊びに行ってはいないけれど、水も苦手ではないみたい。

さらに、彼の瞳に映る世界が美しくて、そこがわたしは大好き。


でも、なにより一番好きなところ。

それは、彼が、"彼"にそっくりなところ。

まるで"彼"が生まれ変わったかのよう。

中身が、何から何までそっくりなんです。

初めて会ったはずなのに、4年間、ずっと一緒に暮らしていたかのような安心感があった。

きっと。

今の彼には、"彼"の魂が宿っている。


わたしが寂しくならないように、"彼"が最後に、魔法をかけてくれたのだと思う。


だからこれからも、わたしは"彼"のことを忘れないし、ずっと一緒にいられる。


大好きだよ、ありがとう。





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