私流 知らない町の歩き方
21年間、趣味を聞かれるたびにごまかしてきた。
映画とか読書とか音楽とか。当たり障りのないことを言うけれど、深堀されてもそれ以上特に話すことはない。
写真を始めて少し趣味らしいものができたが、逆に変に熱中してしまったせいで、周りに素敵な写真を撮る方がたくさんいる中で「趣味は写真です」なんてなかなか言えなかった。
留学中に旅行をするようになった。旅行は好きだけれど、「趣味は旅行です」なんてなんか高尚な感じ。
それにこれを言っては元も子もないが、そもそも私はあまり芸術や建築に詳しくない。だから定番観光地巡りもそこそこに、町をひたすら歩きまわるという、ある人から見ればもったいない旅の仕方をしていた。
うん。もったいないかもしれない。
でも、これが私の旅のスタイルだと気付いたのはスロヴァキアのブラチスラバを訪れたとき。
行く前から、半年前までスロバキアに住んでいた友人に
「観光地少ないからすぐに見終わっちゃうかもよ。」
と言われていたブラチスラバ。
「街歩くの好きだからいいよ」
なんて何気なく返していた。
ところが実際は、1日で帰るのが惜しいほど、私にとっては見どころ満載の町だった。
お城と教会と銅像をいつものようにサクッと見終え、メイン通りに繰り出す。
観光客にあふれたその通りを抜け、あえて人気のない雑貨屋に入ってポストカードを一枚購入。メイン通りのお土産屋のよりかわいい。
その後道端でアクセサリーを売っていたおばちゃんのお店をのぞき見。
スロバキア名物でも何でもない、おばちゃん手作りの指輪を買う。1つ3ユーロのお手頃価格。
友人おすすめの抹茶カフェで一息。
スーパーによって、ほかの国では見たことがないレモンのドリンクを購入。暑い日だったのでしみた。
メイン通りに戻る途中、教会の横に緑にあふれた道を見つけて侵入。
人はちらほらしかいなくて写真撮り放題。ツタに覆われた建物や、道端に咲いているお花を撮っていたら、あっという間に帰りのバスの時間。
後日、スロバキア観光のアドバイスをくれた友人に、
「時間足りないくらい楽しかったよ。」
と報告すると
「またまたー。」
という反応。
本当なのに。
そして気づいた。
私の趣味って、「知らない町を歩くこと」かも。
観光客が行かないようなお店にふらっと入って、お店の人とおしゃべりする。
地元の人が使うスーパーで同じものを買ってみる。
フラッと心の赴くままに一本外れた道を歩いてみる。
道端で何分も立ち止まって、納得がいくまで写真を撮る。
普通にやっていたことだけど、みんなはしない楽しみ方らしい。
「知らない町を歩くこと」が趣味?
「旅」ほど意識高すぎないし、「散歩」よりはちょっとワクワクする響き。
ちょうどいいかもしれない。
自分の趣味を意図的に決めるって変だけど、今まで自己紹介の度に肩身の狭い思いをしながら、ごまかしごまかしやってきた私にとっては、趣味ができるということは一大イベントなのだ。
これからも、ワクワクするものを求めて、「私流 知らない町の歩き方」を見つけていきたい。
カメラ:Panasonic LUMIX GF10
撮影地:スロバキア・ブラチスラバ(Bratislava, Slovakia)
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