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フルーツサンドの天使、あるいは㉑

 あれから5年が経った。
僕は今秋、岡崎まきこと結婚することになった。

 一度街ではるかを見かけたことがある。
3歳くらいの子供を連れて歩いていた。一瞬混乱したが、子供の大きさから新たなパートナーとの子どもだろう。
 彼女はあの時と同じように、透き通るような美しさだったが、目は「どこか」ではなく、この世界をしっかり見つめていた。
 周りを包み込む柔らかなオーラは明らかに大きくなり、彼女そっくりの小さな娘を温かく包みこんでいた。
 
 今でも僕は金曜日にフルーツサンドをひとつ食べる。
彼女が塞いでくれた心の傷がえぐられて開いていくのを感じながら、毎週かかさず食べる。クリームの甘ったるさに胃がムカムカするが構わない。

食べ続けることで、許されてはいけない記憶を引き戻すのだ。
自分を許すことの大切さを説いた話はよく聞くけども、
天使とその卵さえも堕としめた、僕にできる懺悔はこんなことしかない。
                              ーEND-


※画像はkei 02様のイラストを使用させていただきました。素敵な作品をありがとうございます。

※連載はこれで終わりとなります。少しでも読んでくださった皆様、ありがとうございます。

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