吃音せんせいVol.5:吃音とテクノロジー
吃音を抱える私は、これまで様々な場面で言い換えを多用してきたので、言い換えのできない固有名詞が苦手です。自分の名前や人の名前、地名を言う場面でもっとも緊張します。「世の中で一番嫌いなものは自己紹介」と言っても過言ではないです。いつも持ち歩いている「吃音ノート」に試したことやその成果・気づきをたくさん書き込んでは読み返す毎日です。それにしても、教育現場は話す場面が非常に多いので、吃音者の私にはけっこうしんどいです。
メトロノームのリズム
流暢性形成法などの吃音治療でメトロノームを使うことがあります。メトロノームの拍を意識することで、発話がゆっくりになるだけでなく、吃音への意識がリズムの方に向けられるようになり、話しやすくなるからです。私の場合も同様で、メトロノームのリズムに合わせると話しやすい感覚があります。普段は、予期不安を感じると「言い換え」をしたり、「フィラー(つなぎ言葉)」でタイミングを計ったりしながら、うまく吃音を回避しているのですが、メトロノームのリズムに合わせてみると不思議と予期不安も緩和されるのに気が付きました。吃音を抱えて教師を続けている私としては、このメトロノームのリズムを、日常的に利用できないかと考えたわけです。
耳開けイヤホンとメトロノームアプリ
最近では耳を塞がないタイプのイヤホンが安価で販売されています。私の場合は吃音の調子が悪いときだけ、片耳のみにこの耳開けタイプのイヤホンをつけてメトロノームアプリのリズムを聞きながら話すようにしています。結論から言うと、とても話しやすいです。イヤホンはBluetoothでスマートフォンと接続できるので、コードが邪魔になることもありませんし装着していて目立ちません。もちろん、スマートフォンがスリープモードになっていても、バックグラウンドでアプリは稼働します。耳を塞ぐタイプのイヤホンも試してみましたが、自分の声が不自然に大きく聞こえてしまうだけでなく、周りの音がメトロノームの音にかき消される感覚があり、とても話しにくかったです。メトロノームアプリはYAMAHAのものを使っています。設定はいろいろ試してみましたが、個人的には拍子2/4・テンポ160が話しやすかったです。メトロノームの音量は若干小さめにしておくと、メトロノームのリズムを意識したときにだけ自然と音が大きく聞こえる感覚があって話しやすいです。
おわりに
テクノロジーが進歩することで、私たちの生活はより便利により豊かになってきました。テクノロジーを活用することで、吃音者に対する新しいサポートができる可能性があります。今後もテクノロジーを上手に活用して、吃音があっても自分らしく楽しく生きていきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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