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「探究する精神 職業としての基礎科学」を読んで

東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長である大栗 博司さんの表題の本を読みました。

最近は早野龍五さんの本橋本 幸士さんの本仲野 徹さんの本等、(物理)学者の本を読んでどれも面白かったので本書も検討しつつ、目次を見て哲学の内容が多そうだったので躊躇してたのですが、出だしの文章がシンプルかつ論理的なのに惹かれて読んだのですが、大正解でした。

大栗さんがどう物理を始めて行かれるかから始まります。最近は「自分の頭で考える」教育等とよく言われますが、自分の頭で考える塊のような方だと思いました。

以前の記事で日本の自由研究はただの調べ物になりがちで研究ではないとよく批判して来たのですが、大栗さんは高層レストランの高さから地球の半径を割り出そうとしたり、通行量を調べる中で気温の変化はどんなに細かく測定しても意味があるのに通行量は細かく測定し過ぎると01の羅列になってしまう事から示強性と示量性の違いに迫っていたり、ここまで自分の頭で考えれば問題無いのだと思い知らされました。

その後高校、大学、研究機関での事が語られます。

大学で知識を教えるだけでなく、新たな知識を発見するのに必要な技術を教えるフンボルト理念は、自分が約30年前にカナダの中学で受けて今も続くサイエンスフェアも、その理念が中学まで降りて来てたんだろうなと思わされます。

当然十七世紀の科学革命や、科学とは仮説と検証である事にも触れられつつ、博士とは知識の多い人ではなく、新しい知識を生む人だと述べられます。

知のグローバルスタンダードが広く分かる、最近読んだ科学者方の本をも上回る良書でした。


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