1Q84一気読み/読まずに死ねるか
2023年の内にアマゾンaudibleからリリースが完結した村上春樹の「1Q84」を、この年末に一気読みというかaudibleで一気聞きした。
1Q84はBOOK1からBOOK3の前後編からの構成になるので文庫本にして6冊(1600ページ)の分量となる。オーディオとして聞く分には総時間70時間を超える長編だ。
読み出せば物語の最後まで一気に読みたい性分なので、リリースが全巻終了するまで待ってこの年末の時間が取れる期間で、集中してaudibleで聞いたという次第。
※アマゾンaudibleは月額1500円ですが、30日間の無料体験がありますので十分その期間で本書は読めると思います。
村上春樹の作品は好きなので当然この1Q84も発刊された2009年から各巻が発行されるのを待って読んだ。でも15年も前の話しで、読んだといえどもほとんどの部分を忘れている。人間の記憶(僕だけかも)というものは、いかに曖昧かということを今回も思いの外味わった。。。(だから生きていけるのかもしれないが)
お気に入りの本や映画というものは、実際何年後かに再度観たり読んだりする方がいい。なぜならその数年間に自分も変化しているので、必ず受ける印象やそこから得るものは違うからだ。
今回のこの1Q84の再読からも、以前読んだ時と全く違う新たな要素をたくさん得た。再読してよかったと思った。それらは3時間のセミナーで、解説したいと思えるほどに質量とも分量共に多かった。
村上春樹という作家はすでに世界的作家の位置を占めている。が、未だに熱狂的なファンだという人と、ほとんど馴染めないという読み手が真っ二つに分れる作家も珍しい、と思う。
僕はその両方の言い分が分かる。
村上春樹の他の作家にはない中毒性の魅力は何か?
まずは登場人物全てに、狂気じみた独特の魅力があるということ。
こちらの表現も他の作家の追随を許さない。
キャラクターを特徴付けるものとして、村上春樹は特にその人物の食べ物の好みとセックスの描写にとても長い分量を取る。
食べるものとセックスの傾向は、ダイレクトに人物構成に影響を与える。それは何も小説の登場人物というよりも、生きている我々がそうだと思う。
ただ食べたり飲んだりする好き嫌いというものは、日常会話に出てきてもおかしくないが、セックスでの嗜好や性癖というものはまずは口にしない。
そういうとても日常の表明には露出しないけど、誰でもが心の中で思い描いて思考の中で意識的にも無意識的にも何度も巡らせているものってたくさんあると思う。
そういう一つ一つを村上春樹は、丁寧にこれでもかというくらいリアリティーに表現してくる。中にはそこまで性描写する必要があるのか、という評もあるくらいに。
その無意識に誰もが持っている恥部的な部分にひどく共振する読者がいっぱいいるのだ。でも恥部的な部分なので、共感したとしてもまずは共感の意を表さない。
なぜなら「恥ずかしい」からだ。
「私もレズの経験があるの」とか「私も肛門プレイが好きなの」とか「拘束プレイが刺激があって好き」とか、気軽にBlogなんかでも書かないでしょ。でも、思っている人は思っている。
みたいに。
そういう事を村上春樹は、哲学のプラトンや厳格なクラシック音楽というフラグメントと同じ土俵に並べてくる。
そこが面白いとボクは思う。
この「1Q84」という小説の軸となる部分には「さきがけ」というオカルト集団(宗教団体)が登場してくる。
そのオカルト組織の長となる人物を、主役となる青豆(女性)が殺害することで、物語が始まりだす。
そしてストーリーが進行していく上で、このオカルト集団を動かしている本当の影の存在としてリトルピープルなる生命体が出てくる。(人間ではない)読み終えた読者の大半は、このリトルピープルなるものがそもそも何か全然分からん!となる。
なぜなら、物語の中でこのリトルピープルなる存在が何かというものが全然語られていないからだ。
ここでこのリトルピープルが何かとか、そのオカルト集団は何をメタファーとしているのか、と解説してしまったら読む楽しみが無くなりますので言いませんが、5次元世界やアセンション(次元上昇)、パラレル移動などをよく知る人なら、そういう側面を頭に置いて読めば、きっとこの小説の醍醐味が分かって面白がられると思うよ。
僕の、超お勧めの長編ファンタジーミステリーSFであります。
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