レコードと部屋と彼1 -マッチングアプリで3週間の本気の恋をしたお話-
小説のような、きれいな終わり方の恋をした。
35歳にもなって、それも、マッチングアプリで出会った人を相手に。
普通に生きてたら、絶対出会うことのなかった人。
唯一の接点が
マッチングアプリ
私たちは自分を偽れる仮想空間の中で出会い、
もしかして、この人なら…
そういう幻想を抱いた。
現実の世界でお互いを認識し、時を共有し、相手を測り合った。
この人で、いいのか。
この人で、だいじょうぶか。
冷静な判断を下したのは、彼の方。
私は、本気で好きになってしまったので、冷静な判断ができなかった。
私たちは、求めるものが違うから、長く一緒にいることは、きっとできない。
彼には、私ではダメで、
私にも、彼ではダメだった。
ダメだったって、分かっているのに。
冷静に考えれば分かることなのに、
数えるくらいの彼との時間を思い出して、涙が滲んでくる。
悲しいというより、
恋しい。
会いたくて、たまらない。
でも、決して会ってはいけない。
二人の関係は、私たち、お互いを幸せには、しない。
早くに決断を下してくれたから、傷つくことなく、きれいな思い出としてお互いの中に残っている。
それで、いいじゃない、と彼は言う。
美しい思い出は必ずあって、それしか見えないし。それがあれば充分だと、そう思わない?
そうね。
「ありがとう」と思えるということ。
恨んだり、嫌な想いをすることなく、お互いに感謝を言い合ってキレイに終われたこと。
私も、人として、一回り成長させてもらった。
彼との出会いで。
本当に、感謝しか、ない。
それでも、思い出すたびに、涙が滲んでくる。
彼は、誰にも言えない秘密を抱えて、人前で偽って、この先も生きていくのか。
それを話せる友人も、家族もいない中。
彼が自分の心の内をさらけ出して、頼ることのできる人に出会えますように。彼を支えてくれる人に巡り合えますように。
彼の幸せを。
心から願う。
だから、私は彼との物語を書き留めておこうと思う。
あなたのことを、あなたの幸せを願う人が、この世に確かに一人はいたんだって。
その証になるように。
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