見出し画像

両家の顔合わせ会、緊張を解いた姉の一言

7月半ば、長引く梅雨が不安な空模様を連日運んでくる時期に私たちは両家の顔合わせを行いました。

もともと、彼女は一年同棲したら結婚という心持ちだったようだし、かくいう私も結婚に現実味はなかったもののそれ自体は満更でない気持ちでした。

本日はガチガチに緊張した当日の様子を。


・・・

■父は背広、お義父さんはかりゆし

「当日、どんな服が良い?」

これは一週間前に、私の父から聞かれた言葉です。

結納式みたくフォーマルに執り行わないとはいえ、服装は気にするようでした。そのとき私は「襟付きで、ちゃんとしてれば何でも」と回答。

当日、ドレスにネックレス、パンプス姿の母と姉の間に、背広を着た父がいました。

女性陣が髪のセットや靴の履き替えなどで少々時間が掛かりそうだったので、

私は3人に参加のお礼を伝えつつ、既に指定のお店に入っている相手側のご両親にひと声かけに行きました。

ーーこんばん、あうぁhわうぁッィ

そこには、相変わらず肌が日に焼けて、ガタイのガッシリとしたお義父さんが、かりゆしを着ていらっしゃいました。

さすが島育ち。私は開始前から面を食らってしまいました。

「いやー、スーツなんて持ってないんだよね~。」

脳では「相手のライフスタイルでは正装」と思いつつも、気持ちの方が動揺。

なので自分の両親が入店する前に、「そうそうお義父さんは鹿児島ご出身! だから、かりゆしをお召しでした! 島の流儀に則った正装なんだナァー!」と、わざとらしいジャブを打っておきました。

スピードワゴンも引くくらい、早口で。


■鱧(はも)や湯葉、豪華な料理と、緊張する私

飲み物はどうされます? お祝いでしたらまずシャンパンなどにされます?

ーーあ、そんなのあるんですね、ぜひぜひどんどんお願いします

実は私と彼女は家族書や婚姻届など書類関係やお店の手配、スケジューリングで(恥ずかしながら)手一杯で、当日の進行は頭から抜けていたのです。

緑のドレスを身にまとった、なかなかクールな装いの彼女に目を向けると、顔を真っ青にさせ眼をキョドキョドとさせていました。

(……まずい、、、ここは私がリードするのが妥当だ、、、よし)


ーーきょきょ、今日は、だいぶ遅れてしまい恐縮ですが、けけ結婚前の顔合わせでございます。ご参加、、お忙しいところご参加ありがとうございます。


自分でも引くくらい噛んだ。本当噛んだ。あとで帰り道に姉にクソ笑われた。

私、両親、姉と、彼女、彼女の両親、彼女の弟二人の顔合わせ会は不安な立ち上がりでした。

その舞台は正統的な懐石料理。あわびの入った煮凝り、茶わん蒸し、旬の鱧、そして同店自慢のちゃんとコシのある湯葉のしゃぶしゃぶなど次々にサーブ。

……でも、料理の味が緊張しすぎて全然わからない! 

家族書のおかげで「真人(私)の兄は今どこどこで働いてて」「何番目の兄は歳が近い」とか、身内ネタでどうにか場が持っていました。

ただ、私はこのままではまずい、という危機感をずっと抱いていた。


■緊張を解いたのは、姉だった

私は、お義父さんお義母さんと3ヶ月に一回ほど会っていました。なので、そこまでアウェイ感はありません。

とはいえ、この両家顔合わせという雰囲気特有の緊張が包み込んでいました。

私は5人兄弟の末っ子で、兄弟の結婚ラッシュもあり、家族みんな祝い事に慣れています。ただ相手の家族は彼女が長女ということもあり、だいぶカチコチで、その緊張が伝わってきます。

特に気になったのが姉(31)と向き合っている、彼女の弟君たち(21, 23)。苦笑いがお面を張り付けて息しているような、引きつった顔でした。

……まずい。幹事として、どうにか楽しめる雰囲気にしないと……

そのとき、冷え切った世間話をさえぎるように姉が口を開きました。


「私、小さい頃の真人(私)のお世話をしていたの」

「あのね、今でこそ彼はあんなだけど、小っちゃい頃は真っ裸で家を脱走してた」

「家族アルバムにも裸の写真が多い真人だけど、あるとき自我が芽生えたのか、家族の写真ケースに上からシールを貼って大事なところを隠し始めたの」

「たまに、自分の子供(私の甥)が何か悪いことすると『コラ、まさひと! あ違う』て、呼び間違えるんだよ」


相手のご両親、弟君、そしてうちの両親、全員大爆笑。

いつも一緒にいるはずの彼女ですら知らない話だったのか超笑う始末。

そこから姉は、私が小さい頃どんな子供で、どんな性格で、どう家族に育てられたのか、相手家族にも肌ざわりが良く理解しやすいトピックに展開してくれました。

私や皆の緊張を汲んで、私の暴露話を赤裸々に話すことで、一気にアイスブレイクしてくれた姉。

そこから両父は焼酎を追加し大盛り上がりし、弟君も穏やかな表情になり、両家は一気に近づけました。

味の分からなかった湯葉も、最後にはトロトロに溶けていた。

・・・


●過去のノート


サポートしてくれた方、いつでも靴を磨かれに来てください。