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【5分で読む】苦難を乗り越えるリーダー像について考える。

皆さん、こんにちは。神村です。

前回はモンテディオの新企画である「Morning Pitch for Interns」の紹介などを通じて、組織の「採用・育成」についてお話しました。
今週のテーマは、苦境を乗り越える ~リーダーのあり方~ について取り上げたいと思います。皆さんもこれまでの人生の中で、大なり小なり苦境あるいは修羅場のような場面を経験したことがあると思います。今回のStandfmの収録直前(2021年4月)、モンテディオではクラブ史上初めてシーズン途中での監督解任を余儀なくされました。この事についても、今回のテーマと紐づけながら話していきます。

(本稿は「Off the pitch talk 」第83~85回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー小出さん&文責:神田さんでお届けします)

↓↓音声で聞けるstand.fmはこちらから↓↓

#83 : https://stand.fm/episodes/608699e2abb2ac9b11faae8a
#84 : https://stand.fm/episodes/60893fcdaa63e53952d40544
#85 : https://stand.fm/episodes/608bd1a6abb2ac60ddfb1101

クラブが直面する苦境の中で感じること・考えること

本題に入る前に、大前提として私はサッカーの専門家ではないため、今回はサッカーの技術面での議論はするつもりはありません。しかし、サッカーでもビジネスでも、物事はそう簡単には上手くいかないという点においては本質的に同じだと改めて痛感しています。シーズン開幕前には、一部メディアからも「優勝候補の筆頭」と謳われていたので、自ずとファンやスタッフ陣の期待も高まっていたのは紛れもない事実です。ただ、現実として監督解任が起きた以上、スタッフ含め社員一人ひとりが今こそできること、やるべきことが必ずあると思います。

私自身、これまでの社会人経験を振り返っても、いくつもの苦境や修羅場を乗り越えてきました。例えば、20代~30代前半にかけて過ごしたロサンゼルス駐在時、日本ではリクルート事件という政界を揺るがすような出来事が起きました(若い方でも、名前くらいは聞いたことある方も多いと思います)その事件が、アメリカにも飛び火し、しまいにはアメリカでも日本とは別の事件が発生する事態に陥りました。事件の影響が響いて業績が厳しくなった結果、当時ロサンゼルスとニューヨークにあったオフィスを縮小し、大量のリストラが発生しました。事件前は30人ほど居た筈の社員を5~6人にまで減らしました。当時の支店長は日本へ帰国し、私は日本人一人残ることになり、現地メンバーと業務を続けることになりました(リストラというのは、残されたメンバー、その管理者双方にとって極めて苦しい仕事であることは想像がつくと思います。)

その後も、経営幹部として、さらには社長業を経験する中で潜ってきた修羅場の数は数えきれないと言えます。ビジネスでは、望むと望まざるにかかわらず、厳しい場面は常にやって来ます。難局を打開する成否を分けるのは、そこに向き合う姿勢そのものです。上手くやる、要領よくやるなんてことを考えてはいけません。真正面からぶつかって苦労すればよいのです。特に、若いうちこそ苦労しないと、40代以降になった時に重要な決断ができなくなってしまいます。そうならないためにも、以前の投稿で触れた言葉も交え、苦境に立たされた際に大事な指針となる3つの言葉を紹介します。

・すべては自分が蒔いた種
→一言で表すなら、「自責であれ」ということです。どんな物事も、誰かのせい、環境のせいばかりにしていては、苦境を乗り越えられないだけでなく、そこから得られる学びや成長もなくなってしまうので注意しましょう。
・動機善也や、私心なかりしか
→自分がやろうとする行為の動機は、いったい何のためなのか?自分の地位や名声のためにという利己的な動機があると、最後には苦境に立ち戻ってしまうものです。逆に、私心を極力減らして誰かのため、社会のためという外にベクトルを持っていくことが大切です。
・真剣にやる、でも深刻にならない
→人間は無意識のうちに、苦境に陥る時ほど深刻になってしまいます。ただ、状況を打破するには、深刻になっていては中々難しいものです。逆に真剣にやれば、そこから活路を見出し、苦境を乗り越えるためのヒントが得られます。

苦境の中にも必ず「原因と結果」が

言わずもがなですが、どんな物事にも必ず原因と結果があります。苦難に直面した時は、まず冷静に状況を分析すると良いと思います。人間は不思議なもので、うまくいっている時ほど現状に満足してしまい、冷静に原因を分析しなくなります。逆に上手くいかなくなって初めて「問題の原因は何だったのか?」と慌てて分析し始めることが大半です。結果として気分が落ち込んだり、絶望感にさいなまれたりするのです。日常生活の中でも、物事に一喜一憂しないメンタルを構築できるよう、常に原因を探る思考回路に慣れていることが大切です。

これまで度々、「自責である」ことの大切さなどを語ってきました。ただ、そうは言いつつも外的要因によって苦境に立たされることはあるものです(昨年から続くコロナ禍が良い例です)。その外的要因が引き起こした苦境に対して、どう向き合えばいいのでしょうか。
人間は弱い生き物なので、周りに文句を言ったり嘆いてばかりいる人に囲まれていると、つい自分もその考え方によせられてしまいます。そういった意見(愚痴)と一線を画す決断ができるかが大切なのです。嘆いても始まらない状況の中では、少し周囲と距離を置いてでも冷静になるのもよいかもしれません。

また常に言うことですが、世の中の時流に無理して逆らってはいけません。流れに逆らった努力は、徒労に終わることが多くなります。自分だけならまだしも、メンバーや他人に無駄な努力をさせるのは避けなければいけません。

苦境な時は決断することが怖くなります。怖い中でも決断をする。それこそが、リーダーに求められる大きな資質です。
あらゆる決断には失敗のリスクが伴いますが、失敗を過度に恐れず、勇気を持って決断できるリーダーが増えていけば、組織は強くなっていきます。

このような場面で正しく決断を下していくためには「心の安定」が非常に重要になります。元サッカー日本代表キャプテンの長谷部選手が書いた『心を整える』という本が話題になりましたが、私が大事にしている3つのポイントを紹介します。

・自分を見つめ直す
→自分の在り方や心の動きなどを客観視して、あらゆる物事に対して自分はどう感じ、どう向き合ったかを定期的に振り返りましょう。座禅を組むなども一つの手段だと思います。
・焦らない
→物事に素早く対処すること(≒スピーディーさ)は大切な要素ですが、過度に焦ると手戻りが発生するリスクも高まります。泰然自若と言われるくらいドシンと構えるくらいが丁度良いかもしれません。
・信じ抜くこと
→自分に対しても、周囲の仲間に対しても信じ切ることができるかが成否をわけると言っても過言ではありません。

以上の3つを意識し実践を重ねることで、徐々に心が整っていく実感が得られると思います。私も苦境に立った際にアタフタしない(動じない)状態になることができました。また、心が整うと穏やかになるので、よく眠れます(笑)

今、自分がやるべきこと

私自身、フロントスタッフの一員として、強い組織づくりを目指しています。「強い組織」とは、もちろん競技の強さ(順位)も含みますが、経営としての事業成長・拡大があった上での話です。想像に難くないと思いますが、一度チームがなかなか勝てない(苦境な)状況に陥ると、スポンサーの不安の声やサポーターからの不満も増してきます。そのような中、もう一度、未来をきちんと見つめ直す(書き直す)ことで、「いつまでに、何をやるべきか」を決め切ることが肝要です。山登りに例えるなら、途中で悪天候によってこれ以上前に進めないような状況に直面しても、またいずれ登り始める、あるいは別ルートで登ってみる等の対処方法があります。山頂に行くという当初の目的を忘れなければ、再起できるのです。

上記の部分はどちらかというとパッションに近い論点でしたが、一方で「選択肢の整理」も大切です。具体的には、「最高」「普通」「最悪」の3パターン位を常に想定しておくことです。
ロジカルに考えながら各パターンを整理し、それぞれの状況が現実として起きた際、どのように対処しておくかを事前に明確にしておけば、どんな状況でも慌てることはありません。まさに、「備えあれば患いなし」との言葉通りです。以前、大分トリニータに入社した際は J3 でしたが、当時も J2 昇格パターンとJ3 残留パターンを事細かく考え抜いた記憶があります。用意周到な準備ができたからこそ、実際に昇格した際にも迅速に次の一手が打てたと自負しています。

そして、最後は楽しむ力・鼓舞する力です。メンバーが深刻に感じたり、意気消沈するような発言(「もっとやらないとダメだ」や「そんなんで大丈夫か」など)を私自身もついしてしまうことがあります。本当は、苦境なときこそ「何とかなる」や「大丈夫だ」とポジティブなメッセージを発信できるようになりたいものです。悲壮感が漂うリーダー、怖いリーダーは、これからの世の中には受け入れられないですし、淘汰されゆくだろうと最近つくづく感じます。「仲間を盛り上げていくリーダー力」現代社会に即した、あるべき姿なのかもしれません。

まとめ:苦労は買ってでもせよ

皆さんも、思い描いていた成果が出なかったり、自分のいる組織がバラバラになってしまった経験は少なからずあると思います。ただ、それらの苦い経験を経て、自分なりの考え方や価値観が醸成されてくるのだと考えています。あえて皆さんに申し上げるとすれば、苦労すること・難局に立ち向かうことを厭わない方が、後々の糧となります。過度に深刻になる必要はないので、常に真剣に取り組みながら、苦難を乗り越えていって欲しいと願っています。

(文責:神田)


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