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m_hyugaji
2021年5月21日 14:52
プロローグ 閉塞感の漂う時代、たくさんのヒトミさんたちが、片目を瞑って生きています。 先人たちの言うように、両目を開いて伴侶を探し、片目を瞑って伴侶と暮らし、なんとかなると思っていたはずなのに、なぜだか心が壊れてゆくのです。 先人たちに、可哀想だと思える間は我慢しろと教わって、同情は愛情と同義語なのかと考えたり、いつかは変わるのではないかと期待したり、優しいところもあるからと思い直したり、自
2021年7月30日 20:57
ヒトミちゃん! その日がちょうど、一年前に夫と暮らす家から出奔した日だと気づいたのは、それが故郷の祭りの日だったからだ。 一年前、ヒトミさんはミコちゃんの家で、その祭りをちらりと観た。ニュース番組の中で流れた故郷の風景は、あのときのヒトミさんには遠過ぎたけれど、いま故郷は、ヒトミさんの足元にある。 祭りのために、町のホテルは満室だったので、祭りが終わるまで、叔父の住む島へ渡ることにしてい
2021年8月2日 20:45
ヒトミさんは泣いていない 翌日、ポンちゃんが作ってくれた美味しいブランチを食べたあと、ヒトミさんはバスに乗って実家のあった町へ向かった。少しだけ二日酔いがあったけれど、それすらも楽しいと思えたヒトミさんは、バスの中から懐かしい景色を眺める。 終点のバス停で降りると、日曜日だというのに町はしんとしていて、いまヒトミさんが住んでいる海辺と似たその町は、時が止まっているように感じられた。 小さ