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ジョンウィック:コンセクエンスを観たよ!

一言でいうと、計算されつくした神話であり、アートの集大成です。

お疲れ様です。
観たといってももう公開日なのでもう1か月くらい前ですが、そういえばNoteの更新をしていなかったのでここらで感想をば。
ネタバレ前提なので注意してください。

・過去一面白いシリーズ最新作!

よく、シリーズ物は特に3作目でコケるという俗説のようなものがあって、実際殆どのシリーズは2くらいまでは良くても3でコケるもので、ジョンウィックも恐らくは3作目のパラベラムでコケた方だと思うのですが、まさかまさかの4になって逆に物凄く面白くなって帰ってくるという驚きの回帰を果たしています。正直1から4だと4が一番面白かった!
ジャンル的にはいわゆるキリングアクションではありますが暴虐的で嫌味なヴァイオレンスというものとはまるで違い、様式美とアートにこだわった作風が受け堅実に続いたシリーズの集大成としてこれほど良いものはそうないでしょう。アクション好きは間違いなくハマれるはずの本作です!

・大阪コンチネンタルの激闘は哀しくも爽快!

物語の前半では大阪のコンチネンタルホテルが舞台となりますが、そこで支配人を務めるは日本発のアクションスター、真田広之。そしてその娘アキラを演じるのは今回が初めての女優デビューとなったシンガーのRina Sawayama。パラベラムではゼロというキャラクターに日系のマーク・ダカスコスの配役がなされておりましたが名言(迷言)こと『オレハオナジコロシノタツジン!ミスターウィックァ↑』という独特の日本語回しでシリアス感より妙な愛着とお笑い要素になってしまった訳ですが、今回はコンチネンタルのほぼ全員が日本人俳優やスタントでなされており、当然ながら流暢な日本語と真田さんの演じられるジョンの旧友シマヅのクールな殺陣とガンアクションを組み合わせた動きを見ることが出来ます。

前半のみの登場ながら圧倒的存在感を見せた真田広之さん。

ブレットトレイン('22)などでも描かれていた海外解釈の独特な超ハイファイイメージのネオノワール日本な感じも残しつつ本作ではより日本らしさも追及されています(といっても複雑な梅田駅までどうやってジョンが軽々と行けたのかは謎)。レコード時代からの真田さんのファンというチャド監督はパラベラムの際ゼロの配役も考えていたそうですがその時は真田さんがアキレス腱の手術をしていたそうでかなわなかったらしいです。もしその時元気だったらゼロは真田さんだったかもしれない・・けれどゼロはあれで良いんだ・・シマヅも真田さんだからよかった部分も大きいです。
一方のRina Sawayamaさんは今回が初とは思えないこれまた圧倒的アクションを放ちました。弓や銃、ナイフを使った多種多様な格闘術も魅力の一つで、本作の主題歌『Eye for an Eye』も彼女の歌であり、文字通り『目には目を』を、或いは『コンセクエンス(報い)』を表すアキラの生き様を示していました。エンディング後を観ず席を立ってしまった方は是非とも次は最後まで見てみてください。

・グラモン公爵はサンティーノの再来?

実は出てくるたびにスーツが変わるお洒落公爵

本作のラスボスことグラモン公爵(演:ビル・スカルスガルド)。
序盤からNYコンチネンタルを爆破、みんな大好きなシャロンを射殺、
非道なのに、自分が追い込まれると仲間の殺し屋を大勢けしかけてジョンを何とか退けようとするセコさ、決闘をケインに代行させてとどめだけをとろうとするやっぱりせこい感じ、いつか観たことがあるなと思えば2のサンティーノ。自分に力がないがゆえに強者に頼り続けるなんとも情けない役を、演じるビルの高級感でなんとか拭い去っているのですが彼の小賢しい感じに誰しもが報いを受けてほしいと感じたことでしょう(報いを受けます)。
ここはあからさまなウィンストンとの対比だと思っていて、知略に長け大人の余裕があるウィンストンに対して、まだ若く公爵家の再興を考える野心家でありながらも臆病な部分があるグラモン公爵とで、それぞれ決闘の際にジョンとケインに命を託す形になるのですがまるで正反対の様相を見せます。ケインに対して最後まで脅しかけをして不仲なグラモン公爵と、自分の命もかかっていながらに『美しい景色だ』と朝焼けを楽しむウィンストン。この二人の差は歴然です。中盤調子づく彼に対しては主席連合の"告知人"も『その人間以上の器量以上の力を持ってはならない(意訳)』と言ってある意味でバカにした感じでしたね。

・本作随一のライバル、ケイン。


盲目の殺し屋ケイン、今作で好きになった人は多いはず。

香港のアクションスター、ドニー・イェンが演じた盲目の殺し屋であるケイン。グラモン公爵に娘の命をかけられ旧友ジョンを殺す役目を担いますが、これがまた良い役で敵でありながら同時に味方でもある、グラモン公爵の対比がウィンストンならジョンの対比がケインという感じで、双璧を成す伝説の殺し屋として君臨。それまでのどの敵キャラクターよりも圧倒的に強い。
盲目と聞いて思い浮かぶ人も多いでしょうが、監督の言う通り、彼は座頭市(おそらく勝新太郎版)をモデルとしているようで、銃と仕込み刀で戦う亜流のスタイルで圧倒していきます。とはいえ、本意でジョンを殺したいわけではないので、ジョンとの決闘までは何かと共闘することが多かったり、大阪でも激戦の中ラーメンを食べていたりして憎めない良い人物に仕上がっていました。本作ではジョンを応援したい人もケインにも目が行くようにたくさんの魅力を散りばめていました。ですがエンドロール後(ポストクレジット)での最後のシーンはヒヤッとしましたね!
大阪でシマヅを倒した結果娘のアキラに恨まれることになったケインの運命もまた、殺し屋世界から逃れられない宿命を暗示しているかのようでした。

・謎多き観戦客『ミスター・ノーバディ』


本作の犬枠。基本はライフルでの狙撃と犬との連携攻撃。パラベラムのカティアの枠。

謎多き賞金稼ぎことトラッカー、或いはミスターノーバディ(誰でもない男)。一応はグラモン公爵にまさに血のにじむ契約を交わしてジョンを報酬金目当てで追いかけるのですが、相棒である愛犬をジョンに助けられたことで、ジョンの味方サイドになってしまう第三者的な、ある意味本作で一番お客さん目線に近い敵でした。実際、最後の決闘シーンを犬と一緒に観戦する様は感動的なのに笑える部分でもありましたね。また、ベルリンのカジノでイカサマポーカー師キーラを殺す際にもケイン、ジョンとともに共闘。卓越したスナイプ技術で圧倒していきます。犬との共演はもはやジョンウィックでの様式美の一つですから今作でも犬とのドッグ・フーが炸裂していますね。

・ついに主席連合に復讐をするジョン・ウィック

なんといっても本作は3までで鬱積したカタルシスの解放を、見る人は皆望んでいたでしょう。実際今回はバワリー・キングがダンテの神曲から『地獄篇』の一節を読みつつ、その合間でジョンの復讐の拳打ちが合間に差し込まれる形で始まります。これまで徹底的に裏切られた分やってやろうじゃないか、と今回はキングとウィンストンを味方につけ万全の状態。これまでの1-3は約1週間の物語だったので戦い続きで余裕がないジョンでしたが、今回はしっかり余裕があり、首長から始まり周到に敵を倒していきます。敵も強くなりますがジョンのレベルもかつての伝説に戻りつつあるほどで、総合キル数は140と過去最多。そしてストーリー尺ではたった400語弱しか喋らないのに168分という長尺をほぼアクションでこなします。大阪での3を思い出させるネオノワール日本・シリーズ恒例の電飾を凝らした空間での激闘、ベルリンでの1を彷彿とさせるダンスフロアでの戦い、そして2の美しさをより磨き上げたパリでのカーチェイス&戦闘シークエンス。何よりも見てほしいのはパリ中盤での俯瞰ショット・ワンカットでのドラゴンブレス弾を撃ちまくるシーン(台湾のゲームを参考にしたそうです)と、サクレ・クール寺院前での終盤でのジョンの222段の階段落ち。キアヌ本人がしたという迫真のスタントは見ごたえ抜群で、監督が意図したギリシャ神話のシーシュポスをモチーフにした何度落とされても這い上がる場面、そこに現れるケインとの共闘は何度見ても良いシーンです。

総評

ジョンウィックシリーズ、フランチャイズは2,3と続くほどに人気が下がっていったのですが、しりすぼみになることなく4でまさに復讐を果たした印象です。チャド監督とキアヌがこれまで築いてきたジョン・ウィック・ワールドの様式美を徹底的に極めたのが本作という印象。
アクション極振りの約3時間、アクションの満漢全席を食らえとばかりに魅力的なキャラクターたちもしっかりと出てきて力の入った集大成と相成りました。一方で、アクションだけなの?と思いきやその構造論は非常に神話ベースでなおかつアートを探求した結果を帰納的かつロジカルに組み上げている理詰めな構築をしていて、それがジョンウィックという作風を単純化させず、同時に美しさになっているものだと考えます。

昨年はトップガン・マーヴェリックとRRRが凄まじいクオリティで映画館を席巻し、現在はハリウッドのストライキでトム・クルーズも来日できなかったり、キアヌもあくまでDogstarのベーシストとして来日したため、映画のPRはできないなどと新作に不安の多い2023年でしたが、この作品やミッションインポッシブル:デッドレコニング、グランツーリスモなど、面白い作品が目白押しで良かったです。観た人はもう一度劇場で、配信が始まったら何度でも見ましょう!

では!


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