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すずめの戸締まりを観ました。(ネタバレあり)

お疲れ様です。まずもって注意として考察ではなく素人の感想です。
その点個人的視点、曲解があってもご容赦ください。
また、普段の私のテンションとは違うのは本作の内容柄です。

さて、新海監督の作品は『秒速』以来ノベライズ含めその美麗なデザインと、特に『君の名は』以降の野田洋次郎との音楽共作が功を奏し、素晴らしい出来となっているのはいうまでもありませんね。ゆえ、一応全部見てはいたのですが、本作については、題材がら敬遠していたタイトルではありましたがテレビ放映を期に見て、やはり、非常に辛くなった作品でもあるし、映画好きの自分を以てしても多分映画館では見る勇気はなかったなと思います。同時に考えることが多かったです。あまりまとまらないのは申し訳ないです。

能登、熊本、阪神淡路、関東大震災、そして3.11。色々な言葉が明滅します。

※以下、私の個人的私見ですし、題材が非常にセンシティブゆえ攻撃的・否定的ご意見はお控えください。あくまで一意見です。

・震災だけではないのかもしれない。

言うまでもなく、本作は東日本大震災やあらゆる災害を中核に描かれています。繰り返される災害シーン、2024年にしたって能登の震災があったりで、dimコード(かな?)が鳴る緊急地震速報の音、黒塗りの3.11のページはあまりにショッキングでありました。このため私はテレビでしたが、一度止めないと悪心で吐きそうになるほどだったので少し休憩しながら見ました。
私は中国地方というか、広島出身ですので安佐区の土砂崩れなんかが結構身近な例でした。また私の街は線状降水帯で浸水した地域でもあるので防災意識は強い方でしょう。さて、福岡、愛媛、神戸、東京、そして東日本。君の名は、のロンチ段階からそんな感じはありましたがいかに監督の中で3.11を起点とした災害意識があるのかが気にはなっていましたが、本作は彼なりの挑戦としか言いようがない、命がけの作品だったかと思います。似た例では朝ドラ『あまちゃん』(2013)もそうかもしれないですね。優れたシナリオライティングでないと成立しなかった、東北の方々を逆なでするような作品になる一歩手前まで戦いに来た、同時になんとか描画しきれた作風でもあると思います。

・トラウマ。PTSD。

自分の話で申し訳ありませんが、訳合って僕は幼少期の家庭でのトラウマゆえ、若干の発話困難やフラッシュバック、精神疾患があります。隠してはきたのですがね。なのでそれがNoteのような文章に現れがちです。それは家庭環境ゆえですが、いわゆる環境因とそのトラウマというようです。(精神科医曰く)。バウムテストというものを調べて戴いたら分かりますが、黒塗りにする気持ちはどこか分かります。精神疾患を持つ人間が受ける絵を描くテスト(こう書いてくださいというルールはあるのですが)ですが、僕は当時心身衰弱から、ド真ん中に『分かりません』と書いてすべてを黒く塗りつぶしました。樹木の描き方をどうとか、まあルールは確かにあるのですがフラッシュバックのため、そんなことを考える気にすらなれなかった、とにかく頂いた紙面を徹底的に黒に潰しました。これについてカウンセラー様にはご迷惑をかけた覚えがあります。ただどうしようもなくひたすら黒で覆いました。私は服装も未だ黒ですが、恐らく自分を守るための色が黒なのかなとも思いました。私の中でこういった、大勢の方々が亡くなるニュースで最も衝撃的だったのは災害ではないのですが最悪の人災である9.11世界同時多発テロ(2001/9.11/NY)でした。あの時子供だったなりに、CNNを母親とずっと見ていてすべての記憶が写真のように音まで覚えています。トレードセンターに飛行機が2機突っ込む場面、そして何より嫌だったのは、バン、バンと音がすること。何が起きていたか分かりますか。火災から逃げるために死ぬと判っていて高層ビルから人が堕ちて地面にぶつかる音です。これは、私にとって家庭問題とは別に、苦しすぎる記憶でした。以降20数年にわたり二つの原因をもってした、私は食べても太れない身体にもなりましたし(簡単に言えば,BMI13.8が20年続きました。今は健康体です。)、官解にもっていくにも時間がかかり過ぎました。そして、2011年、NZ地震の直後起きたのがいわゆる3.11な訳ですね。これも私にとっては悪すぎるブレイクスルーで、価値観の変化の二度目でした。当時焼けていた気仙沼や、のちの大船渡、勿論福島、すべてが辛すぎました。ニュース速報は言うのです。『この集落で1000人が壊滅か』と、何度も言う。信じられない人数が消えるんです。恐ろしいほかなかったです。原発だとか、私にも意見はありますがそれは置いておいて、確かに色々な人災はあります。ですがそれ以上に天災の恐ろしさを目の当たりにして、以降、もう一つの私にとってのモニュメントであるしレリーフでもあるし、新海監督にとっても恐らくはそれが目的なのかな、と。簡単に言えば風化する前に形として残すためのもの。

・シビアな現実を描画する本作。

君の名は、では彗星を、天気の子では洪水を。確かに災害を描いてはいましたが、どこかSFチックな世界感だったのが今回は実際に起きた3.11に対するあまりにセンシティブな題材が多く、事前告知が必要だった作品かもしれません。『VIVANT』(ドラマ)や『戦場のジーニャ』(ドキュメンタリー)でも告知が再三行われましたが、その位覚悟が必要だったかと思います。私は西日本の人間ですがそれでもあまりに辛かったので、東日本の方々におかれましてはもしまだ見ていないのであれば一定の覚悟が必要かと思います。私の理解をあまりにこえた苦しい記憶を持っている方々には、時に悪心を催す、フラッシュバックを催す可能性もあります。
すずめの心象は、何かと色々な場面で表現されますし、特に東北へ向かうにつれ彼女の所作は塞いでいく。ミミズを防ぐために何度も閉じる場所は常に役割を終えざるを得なかった場所。亡くなられたお母様が創られた椅子(草太さん)を介在して、物語は進んでいきますよね。よくできている、というと上からなのでやめておきますが素晴らしい筆致だと思います。
天災の恐ろしさ、津波の脅威、火災。亡くなられた方々のこと、すべてがたった122分の中に凝縮してありました。

・ファンタジーでも、現実でもある日本神話。

"かけまくしもかしこき日不見の神よ。 遠つ御祖の産土よ。 久しく拝領つかまつったこの山河。 かしこみかしこみ謹んで、お返し申す。"

草太さんが閉じるとき繰り返す祝詞ですね。
これ自体は創作とのことですが、簡単に言うとよく厄除けとか神社に行くと言われる祝詞に近いものがありますよね。君の名はなどもそうですが、日本
神話的アプローチが変わらず存在しています。のちの右大臣などにも言えますが、全体的に日本神(というより自然信仰)に対するアプローチが多かったですね。

・現実とあの世、この映画の意図。

特に常世(あの世)の描写は一見演出上天の川が色彩豊かで美しいけれど、これもまた心象描写を上手く描いたものかと思われます。ただ、終盤地獄さながらの東日本における常世の場面は言うまでもありません、あの景色でしたね。要石は一種のレリーフというご意見も見ましたが、そうなのかもしれませんね。例えば、この場所では100年前、あるいは千年前こういうことがありました、という石碑は各地にありますが、それを覚えておくことで新たに犠牲が出なくなる。本作もそういった位置づけなのかもしれませんね。これを風化させずに、後世に語り継ぐ必要がある、勿論物語ですから美談的解決をせざるを得ませんが、それは希望にあふれたものではなく、少しうつむいていた顔を前に向けようとする、後押しのような表現で、簡単には治りようのない、大切な家族を失った、友人やお子さんを喪った方々への最大限の勇気づけかと思います。

・まとめ

まとまるわけもなく、まだまだ見返す必要もありますが、見返せるか堂かもわかりませんがひとまず。本作はかなりの新海監督の挑戦となりました、クドカンなんかもあまちゃんでそうでしたが、被災地の方々の事を描くにはそれ相応の覚悟と筆致が必要です。そして語り継ぐこと、風化させないことが大事である、我々が生きているうちに認識し、新しい世代へつなぐこと、それがいかに大切かを問われた作品となります。いくつかのブログで、『まだ傷がいえていない問題について、表現というコンテンツに昇華するのは尚早』という意見も散見しましたが、恐らく今やらざるを得ない作品であったのだと思います。風化して、これが単なる歴史の1ページになってはダメなんです。もしもこれを映画館で見て何も感じない方がいるのであれば、それは非常に悲しい事であるし、そんな人々が同じ国の人たちと信じたくないくらいです。日本の素晴らしき景色、言葉、人々、歴史、風土すべてはこの国でしか存在しえなかったものですからね。
さて、今は2024年4/7日。私は音楽しか作れませんが、台湾で3日に花蓮にて大地震が起きて、その支援のため募金と一曲だけ書き下ろしました。ピアノは弾けないのですがなりふりは構っていられません。


私は9.11と3.11、安佐の土砂崩れや自宅回りの軽い水没もあるし、HSPだか過敏なのもあるので、強く受け止めがちですが、何か力になれることがあれば、助けたいは傲慢だと思います。人は人を救えない。ですが、少し塞いだ気持ちを明るくはできないかな、と模索する。もがく。

もしも誰か1人でも心が軽くなればそれ以上の事は無いのですが、あまりに私は無力ですね。

ただ、そう感じながら自然への畏怖と、時に人間の過つことについて考えさせられる本作でした。素晴らしい作品です。ただ、覚悟は必要ですね。

そして1つだけ。何度も己をあやめようとした過去の自分へ。
『死』を軽く見てはいけないよ。復讐心で生きてきたのだろうけれど、
まともでなくていいから、生きてほしいかな。今は生きようと思うよ。

なんか明るい話をしたいのですが、それは次回以降。普段の私のテンションとは違うので驚いた方もいるかもしれませんが、よろしければ今後ともお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。




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