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Peripheryの話2/"Djent Is Not A Genre"

Peripheryの話というかDjentの話というかです。
あらかじめ言っておくと"音楽のカテゴライズのバカバカしさ"というのは今回の『P:V Djent Is Not A Genre』という意味ではあるのですが、人に説明するにはジャンル化する方が分かりやすいので一応まずはジャンル化しますね。

前に基本的なことは書きましたがまた書いていきますね。

・Djentとは
繰り返し彼らの方針はともあれ、便宜上ジャンルという描き方をしますね。新鋭のカテゴリで..といってももう00年代まで遡り、フレドリック・トーデンダル(メシュガー)がギターの低音開放弦の音を『ジェンジェン』(日本語で言うジャンジャンとかズンズン系の事だと思います)擬音にしてジャンル化したもので、メタルコア+プログレッシヴしたPeripheryを現在も中心に存在しているメタルのサブジャンル、今となってはメインストリームの1つとまでなりました。

まあこんな感じでPeripheryでは『Lune』なみに一番好きな『Omega』を持ってきました。流麗なピアノから激しいリフに入れ替わる、途中からはかわるがわるの展開。聞いての通り変拍子や開放弦を各所挟んだテクニカルな(といっても最近のPolyphiaみたいな何やってるのか分からないレベルのことはないですが)8弦とか昔は何それ色物扱いだったギターなんかも最近はDjentや類似ジャンルの人気によって結構売れているようです。
さて、一方でスタンダードな7弦が妥当かと思いきや結構ドロップCチューニングであることも多いのがこのジャンルだったりします。(ベースは5弦が多いような)。
本稿はPeripheryでもMisha Masoor、とAdam"Nolly"Getgoodにフォーカスしようかなと思うのですが他のバンドでも(Djentと言えるかは任せますが)、サブカテゴリくらいには入るだろうというバンドとして、例えばPolaris(AU)なんかはそこに入るのかなと思います。

Polaris(AU)は厳密なDjentというよりサブカテゴリでメロディックとかそっちも入っているのでしょうが、最近多いメタルコアジャンルの1つとして分かりやすいものですね。ちなみに昨年新アルバム『FATALISM』をリリースしたPolarisですがギタリストのRyan Siewが逝去されてしまってからのリリースとなったようです。26歳との早逝でした。ご冥福をお祈りします。

・音楽バンドだけでは食べていけない。

さて、Peripheryに戻しまして中核となったメンバーがいまして創設者のMisha Mansoor(Gt)と大きな転換点を作っているAdam”Nolly”Getgood(Ba/mix/2012-2017)ですね。元々PeripheryはMishaのネットでのギター音源配布みたいな界隈から口コミ的に広がった所があるのですが、彼のインタビューでよくあるのが『バンドだけでは食べられない時代になった』というところ。これ、私が好きなKornのHeadも言っていたのですが、例えば80'sとか90'sはそれしかコンテンツが無い時代、音楽も今みたいに何でもかんでも聴き放題ではない時代、時代が時代ならエアーチェックしたり、カセット、LP、CD、MDと物理媒体を主に行き来していたころの話ですね。
例えばメタリカを中核としたスラッシュメタル四天王が当時はメタルの王道だったわけで、90年代に入るとNirvanaがグランジの先進を、KornやLimp、Slipknotがニューメタルの先駆けを、00年代、ここが限界点で、Linkin Parkあたりのバンドがラウドシーンを席巻して一般化しました。80'sからだとVaiやガスリーゴ―ヴァン、Dream Theater/John Petrucciなどいわゆるギターヒーローも居ましたね。私もドリームシアターのマンジーニ前後までのファンでしたので、ミーシャと年こそ違いますが好きなジャンルは近い年代だったりで彼の言わんとすることは分かります。

(2022年の日本向けインタビューより)

Peripheryはチューニングが様々なのでギターの種類や本数も必然多いのですが彼の場合はシグネイチャーも出ているJacksonのギターが主軸となっています。

Headが言っていたのは『今の時代は昔のような(メタリカのような)大きなバンドはもう出ないだろう』というもので、サブスク全盛期、消費が早い現代において個性よりも数をこなす現代ならではの現象を悲観したのか、商売人の経験もあるHeadらしい観方だなと思いましたが実際そのようで先のインタビューでもあるようにメタルの市民権は日本より海外の方が意外と無いようで、少し色物扱いされるようです。その中でくるお客さんといえばゴリゴリのメタラーとか物見できただけの人たちばかり、ましてプログレとメタルコアを合わせたDjentのリスナーはとにかく限られていますし、挙句Tim Hensonのような美青年(なのかな)でもない、髭を蓄えたおじさんメタラーバンドです(誉め言葉)。私からすればゴリゴリのメタル顔してるおじさんたちは最高にカッコいいのですがまあ同じ価値観が米国やその他で共有されているわけでもないようで。彼らが大きな箱でプレイしている映像は見たことが無く、その完成度の高さから何とも苦虫を噛むような思いなのですが、本人たちは気にしていないようです。が、それだけで食べていけないということは自覚しているようでそれを自覚させたのが実際の収支は勿論、Nollyの存在も大きいと思います。以下のインタビューで語っている通りですが、

ミーシャの場合はJacksonなどから出ているシグネイチャーモデルなどの売り上げから自分の利益を得ていて、Peripheryでは収益はほぼ0。アメリカはバンドが多く何度もできる環境ではなく、EUは利益になり辛いといった事情があるようで、ここで上手く動いたのが、あらゆる面で収益を得ているNollyかと思います。DTMをしている人でバンド物を触る人、特にメタルをしている人だと知っている人は多いかと思います。GGD(Get Good Drums)シリーズ。
Kontaktで動作するライブラリで、Peripheryのシグネイチャードラムサウンドや、Architectsなどのシグネイチャー、またちょっと知られてないですが、キャビネットシミュレーターなども販売していたり、ミックスレクチャー、更には自身の改造DingwallのサウンドをサンプリングしたNolly Bass Libraryなどもあります。これとNeural DSPプラグインと打ち込み技術やテクニックがしっかりあれば、かなりお手軽なPeriphery再現セットができるわけです。
こんな感じでちょっとやり過ぎじゃない?と思う位商売に舵取りをしていますが、この位しないとPeriphery的な、本人曰く『オタク系メタル』では食っていけないというわけです。Nollyは2017年、Periphery的にはここからババッと売れていく頃に脱退しているのですが、それ以降もGGD関係でよく当時のメンバーとも交友、あるいはビジネス関係があるようです。

・Djent Is Not A Genre

さて、そんな中発売になった『Djent Is Not A Genre』。ナンバリングアルバムでは5番目となるアルバムで過去一番の優れたミキシングと聞きやすさが両立されながらもDjentならではの要素が徹底的に作り込まれています。
じつはこの『Djentならでは』これももはや必要ない単語です。私はDream Theaterとかは通ったのですがKornなどニューメタルの人間なのでDjentは聴く専門であまり詳しくないのは見ての通りでしょうが、当時Kornも似たようなことがあって、90年代Kornが流行った時とにかく類似バンドがでまくったのですが、その際『俺たちより危険なことができるか?』という跋扈した類似バンドたちに向けて送ったのが『Follo The Leader』という皮肉とアンチテーゼだらけのアルバムだったりします。今回の『P:V』もちょっとそういう一面と、世間が『え?Djent?また?嫌だなあ(アメリカではDjentへの好き嫌いが激しいらしい)』っていう風潮に対しても送ったメッセージとみられます。確かにWikiとかには必ずDjentかメタルコアとか載るのでしょうがそもそも音楽をカテゴライズしてしまう事の愚かさや、オリジナリティなしで模倣することの意味の無さを強調する、ある種攻撃的な、そして挑戦的なネーミングセンスでしたね。其れに裏打つようにでてきた『Wildfire』などはPVでは見られませんが中盤ではジャズ、最期は壮大なオーケストラで締めるなど挑戦的な試みが見られます。音楽を作り続けるとは挑戦し続けること。
そんな凄みと職人技を思い知らされたPeripheryのお話其の2でした。


おまけ。

今のところ最新アルバムの再現をしたくば、
ギターではドロップC、および7弦や8弦が1本づつと、
シミュレータではNeural DSPの『Archtype Nolly』、IRとしてGGDから好きなキャビネットを選んでください。私はMESAを選んでます。モダンメタルに際してはピッチベンドというよりノイズゲートをきっちりかけてチューニングの正確性が重要と思いますのでEVERTUNE搭載も良いと思います。

ベースではNollyの音がそのまま出るといえば出るGGD『Nolly Bass Library』がまああるのですがピッキングノイズが強めに録音されているので、ピックのアタック感が必ずしも必要でない場合、同じくDingwallからはN3をサンプリングしたSubmission Audioの『DjinBass』『Ample Bass Ray』なども良い出音だと思います。そのジャンル柄バツバツに切れた方が良いので打ち込みとは若干相性がいいのですが、生々しさではピック引きライブラリは少しグリスなどに弱いのでそこでリズムを構築しにくかったりもします。プリアンプシミュとしてNeural DSP『Darkglass』、アンシミュとしては何でも歪めばいいといえば暴論ですが同社『Parallax』でこの界隈の音は完結するかもしれません。

ドラムはパラアウトの知識があるならばGGD『P V Matt Halpern Signature Pack』が一番それらしいというかシグネイチャーなのでその音がします。Kontaktのパラアウトは一癖あるのと素の音では何の使い物にもならないので、その場合はAddictive Drummerみたいな出来合いの音かSuperior Drummer3みたいな作り込み必須だがパラアウトするほどでもない自己完結型などを使うもよしですが、ここでKontaktやパラアウトの知識があると便利だと思います。

以上、ちょっとしたおまけでした。それではまた!







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