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男の人は『女性のしたたかさ』を見抜くことができないのだ│私の記憶を小説にしてみた

今日も朝がきた。
布団のなかで携帯を見る。

7時40分。
既に遅刻だ。
もう会社には間に合わない。

寝坊したわけじゃない。
6時に起きてから、ずっと携帯とにらめっこを続けている。

私は、会社に行きたくないのだ。
正確には、行けなくなってしまったのだ。

行かないといけない。
今日こそ休んではいけない。
でも布団から抜け出せない。

最近は毎日がこの繰り返しだ。

8時半になって、会社に欠勤の連絡をいれる。
決まってお局が電話にでる。

私が『体調不良で休みたい』と伝えると、いつもとても嬉しそうだ。
このまま休職することを期待されているのだろう。

このお局は、まだ30代だ。
私は『嫌がらせをしてくる人』という意味で、心のなかでいつもお局と読んでいる。

お局は、私が体調不良で休みたいというと『分かりました』と答えて電話をガチャ切りする。

これは仕方のないことだ。
腹立たしいのは、翌日出勤したときだ。

お局は私の隣の席だ。
私が出勤しても『大丈夫ですか?』などという言葉は一言もない。

別にいいのだ。
休んで迷惑をかけているのは私であることは自覚している。

しかし、出勤すると係長から必ず言われるのだ。
『昨日、お局さんが心配してくれてたよ。忙しいときは、もっとお局さんを頼っても大丈夫だよ。女性同士だし、色々相談してみたらいいよ』と。

係長は良い人だ。
良い人であり、私生活では良い父親をしているのだろう。

そのため、お局の本性には全く気付いていないようだ。

お局が私のことを本当に心配してくれているのなら『なにか手伝いましょうか?』と私に直接言うのではないだろうか。

なぜか私にはなにも言わず、係長に『最近つむぎさんが忙しそうなので心配で…私にできることがあるなら手伝うんですけどね』と愁傷に話すお局。

つまり私のことを心配するふりをして、自分の株をあげているのだ。

なんのためにそんなことをするのかは、私には分からない。

係長にはとても良い先輩だと思われているらしいが、現実はただのしたたかな女性である。

男の人は、女性のしたたかさを見抜くことはできないのだな。
社会人になって、私が最初に学んだことの1つである。

記憶の世界から抜け出した私は、カーテンを開けてみた。
部屋の外から、強い日差しが差し込まれた。

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