早朝、凛と溺れる
いつも通り何回目かのアラームでのっそりと体を起こし、ぼーっと白湯を飲みながらむくんだ顔に色々と乗せる。
弁当を詰めて、ミルクティー味のプロテインをシェイクしながら家の扉を開ける。
いつもと同じはずだが、この瞬間、扉を開け空気に触れただけが今日は少し違った。
凛としている。
一息吸うと、体内を心地よく回って排出されるのを感じる。
自然と背筋が伸びるような、そんな感覚。
ああ、これは好きな空気だ。
車のエンジンをかけ、会社へ向かう。
高速に乗って横を見ると、畑一面に霜が降りて見事なまでの銀色。快晴のどこまでも水平線がくっきりと見える海を目にしたときと同じ感情を覚える。
気を緩めすぎると泣いてしまいそうな、喉がきゅっと締め付けられるような、そんな感覚に襲われる。
現実はモーター音と車内にかけた音楽でうるさいはずなのに、その景色を見ている間は何も音というものを感じないように思えた。何も聞こえない。水の中のあの静けさよりも、更に静かな無に近いほど空気が震えていないような。
その景色も一瞬で直ぐに長いトンネルに入って現実に引き戻されたが、その日は一日呼吸することが気持ちよくて背筋が伸びた。
何でもない日でも、いつもあるはずのものが違って見えるだけで、一日を心地よくすることを知った春を告げる前の冷たい朝の記憶に残しておきたい記録。
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