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#ユーザーインタビューけものみち

ユーザーインタビューは難しい。ターゲットを設定してその属性に近い被験者や、自サービスを使っている被験者に会って話をするが「で、何が分かったんだっけ?」となるケースが多い。ここでは、そういう経験を乗り越えて、自分が心掛けていることを記載する。

設計:インタビューの目的設定

「何を知りたいか?」ではなく「何を決めたいか?」から始める。これはリサーチの設計だけでなく、あらゆる意思決定の手順と同じである。

何を決めたいか?

そのためにどんな情報が知りたいか?(=何が知りたいか)

その情報を得るために何をすれば良いか

「何を決めたいか?」の裏には「誰が決めるか?」「どうやって決めるか?」も絡んでくる。例えば意思決定者が定量化を重視する人物の場合、N数の少ないインタビューでファクトを集めても、意思決定の材料にならないことが多い。

フォーカスする課題を決めたい

ありうる課題を定量的に測りたい

自サービスユーザーにオンラインアンケートを行う

上記の場合はこのような出口(オンラインアンケート)になるはずだ。そこを外してはいけない。デザイナーやリサーチャーがチームの意思決定プロセスや力学を掴めていないプロジェクトでは、無駄リサーチが繰り返されることが多い。

設計:インタビュー準備〜実査

半構造化インタビューや探索型・検証型などいろいろなメソッドがあり、そういう情報はインターネット上に転がっている。拾って組み合わせれば良いためここでは割愛する。ちなみに現職場ではリサーチ設計がある程度体系化されたフォーマットがあり、例えば「顧客課題探索・定性」と選択するとインタビュー骨子や質問例が自動的に出力される。便利。

なお、実査もラポールや深掘りの仕方などいろいろ tips はあるが、こちらも経験で積んでいくものだと思っているので割愛する。

過去に被験者に「なぜ」と問いかけることについて書いた。こちらも併せてご覧いただきたい。

実査後:デブリーフィング

実査後は同席者と共にすぐ1時間ほどのデブリーフィングを行う。自分は仕事柄、学校でインタビューをすることが多いため、実査後は最寄りの喫茶店やファミレスで行う。

デブリーフィングでは、同席者がそれぞれインタビューで得たファクト、特に注目した事実そこから得た示唆を書き出していく(コンフルエンスやスプレッドシートなど、事実と示唆が左右見比べることができるフォーマットが良い)。これは、インタビューに同席できなかったチームメンバーに内容を共有すること・翌日以降に行う分析会の準備をする目的がある。

実査後:分析会

実査翌日以降、できるだけ早いタイミングで分析会を行う。ここでは、デブリーフィングで集めた事実と示唆をお互いに共有し、気付きを多角化して被験者の理解を深める。その後(このプロセスが一番重要なのだが)あらかじめ設定していた目的(=何を決めたいか?)に対する評価を行う。

コンセプトアイデアが複数あり、どれを採用するかを決める調査であれば、どのアイデアを採択するのか(またその理由はなにか)。プロダクトの要件を決めることが目的であれば、候補の要件をバックログに入れるか入れないか(またその理由はなにか)を話して決めていく。

この分析会の過程で、インタビューに対する改善点(メモがいまいち取れていない etc)被験者チョイスの改善点(ターゲットと少しずれていた etc)のようなトピックが挙がることが多いため、それも次回インタビューや被験者選定への改善ネクストアクションとなる。

参考)計画的なインタビューの場合
上記は単発インタビューの際の進め方だが、複数人を被験者とする計画的なインタビューの場合は分析会は毎回行わない方が効率的。それでもデブリーフィングはしておいた方が良い(非同席者が雰囲気を掴むため)
計画していた人数にインタビューを行いログが溜まった後に、チームでKA法なりなんなり行い、価値ツリーなりジャーニーマップなりメンタルモデルなり、目的の分析を行えば良い。その際、チームメンバーが公平にファクトにアクセスできるように、インタビューの録音 or 録画がマストになる。

ユーザーは答えを教えてくれない

試行錯誤の瓦礫を踏み抜きまくった結果、現在上記のような進め方をしている。このプロセスでいちばん大事なことは「ユーザーは答えを教えてくれない」という至極初歩的なことをリサーチャーもチームも忘れないことである。誰も教えてくれない答えにチームで挑むからこそ、今決めたいことどういう情報があればそれを決めることができるかその情報を得るためにチームでできることをリサーチの前に考え、答えを出しておく必要がある。



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