見出し画像

京都市青少年科学センターですよ

いきもにあに出展していたのですがまずは先にその前日、10月28日に行っていた科学センターのことを書かせてもらえればと。

70~80年代のレトロな科学館のスタイルを保っている施設なのですが、ただ漫然と古いのではなく、京都だからなのか「古いものを大切にする」という理念が感じられ、さらにあくまでも科学について伝える場として本質的なものを大事にしているからこそレトロスタイルに辿り着いたのだということがよく伝わる、れっきとした京都の財産でした。

ちなみに、京都府内では恐竜関係の展示施設はここだけで、あとは京都大学総合博物館に恐竜以外の古生物関係の展示があるのと、他には大阪市立自然史博物館(恐竜はある)か琵琶湖博物館(恐竜はない)に足を伸ばすことになると思われます。もし京都在住のかたがご覧になりましたらご参考までに。

科学センターに「かがくセンター」って書いてあるのは可愛らしすぎませんか。マンガの中の建物みたい。

ずらりと揃ったオキナエビス(深海性の原始的で貴重な巻貝)のコレクションや、下鴨神社の神主だったかたから寄贈されたというチョウ中心の昆虫標本コレクションが出迎えます。

モルフォらしからぬ色のモルフォ達。ラベルも並べかたも綺麗に整えられていて、この先の展示内容に期待させてくれます。

建物も物理関係の展示装置もこのとおりです。

ピタゴラ装置と呼ばれるようになって久しい装置、ここではボールコースターの名で位置エネルギーの変換や様々な運動を見せてくれます。他は鏡を使った光学関係の体験装置や、「フーコーの振り子」の原理を体感する装置など、どれもしっかりした動作を見せてくれます。

物理エリアを過ぎると、大胆な弧を描く吹き抜けの下に古生物エリアが広がります!

動くティラノサウルス像です。ボタンを押すと吠え声を上げた後、男性の優しい声で「本当は鳴かなかったと考えられているんだよ」と語るという独特なギミックが仕込まれています。もうひとつのボタンを押すとその語りどおり無言で動きます。
解説を読むに、爬虫類なので哺乳類のような鳴き声自体出さなかっただろうという考察がなされているようです。(ただ、つい先日、肺魚やアシナシイモリ、カメといった意外と様々な脊椎動物が複数種類の鳴き声を出していて、音声コミュニケーションの起源はかなり前までさかのぼるらしいという論文が発表されました。こうした更新も古生物の楽しみです。)

吹き抜けに屹立するのはサウロロフスとタルボサウルス、白亜紀末のモンゴルを代表する恐竜2体の復元骨格です。この組み合わせは日本にモンゴルの恐竜が紹介された70年代の来歴を反映したものです。また頭を上げ尾を下ろした古いスタイルにするとシルエットが似ているにも関わらず、分類的には大きく離れている鳥脚類と獣脚類の対比になっています。
私のような関東の恐竜ファンには、カンプトサウルスとアロサウルス、あるいはマイアサウラとタルボサウルスというように、かつて国立科学博物館に鳥脚類と獣脚類のペアが展示されていたことを連想させます。

この2体がただ立っているのではなく、サウロロフスのもっと大きな個体の後肢や、サウロロフスの皮膚の痕跡(裏を見ると尾の骨が分かります)、サウロロフスとタルボサウルスの頭骨、さらには現在の小さな脊椎動物の骨格と、この2体をさらに補足説明する展示が骨格を取り囲んでいます。解説の内容は骨格のスタイルと同様古いものの、この2種に的を絞って理解を深める堅実な展示です。

吹き抜けにはプテラノドンの頭骨と前肢を全身の型に並べたものと、ランフォリンクスの模型もぶら下がっています。翼竜って「小柄」な生き物なんだなっていうことがタルボサウルスとの比較で分かりますね。壁のプテラノドンの絵は以前にここの職員のかたが描いたものだそうです。

いっぽうでは「化石トンネル」と銘打たれた門があり、巨人達だけではない化石や古生物の世界の広がりを伝えています。右側にあるのは京都市左京区で発掘された約1万年前以降の断層の標本です。

このアロサウルスの頭骨は小川勇吉という人が寄贈したものです。小川氏は国立科学博物館にアロサウルスの全身骨格を寄贈し、日本で初めて恐竜の骨格の常設展示を実現した人物です。
そして奥に見える骨格図は、現在特に信頼のおける骨格図の描き手として様々な研究者や展示施設に古生物骨格図を提供している増川玄哉氏によるものです。日本の古生物学アウトリーチの初期と最新の人物の仕事が合わさっています。

岩山にも卵殻にも見えるアーチの下で、そもそも化石とは何でどんなものがあるかという解説と、地球の生き物の歴史年表が、両手に乗るサイズながら良い化石標本で展開されています。

化石トンネルを抜けたところに京都府内の化石のコーナーがあります。地層から発見されたものだけでなく建物の石材から見付かったものも含み、かなり細かい内容がぎゅっと詰まっています。

元々プロトケラトプスのものだと考えられていた卵ですが、現在は獣脚類のマニラプトル類のものと考えられています。サウロロフスやタルボサウルスの解説は古いままですがここはなんだか素早く直してありました。

今の生き物の世界に迎えてくれるのは京都市動物園にいたアジアゾウの友(トモ)さんのご遺骨です。

振り返ると恐竜と哺乳類の比較にも。

新しく綺麗にまとまったコーナーもあれば……、

かなり前に作られたギミック付きの展示を大事に使っているところもあります。

水族展示もあります。水槽のクオリティはさすがに水族館並みとはいきませんが、京都の川の上流から下流への様子や日本海の岩礁のことを伝えるべく作り込まれています。

最初のオキナエビスもそうですが、なんだか貝のコレクションが充実しています。

奥には今の生き物代表という感じでヒトの展示が……何度も苦手だと言ってきたアレっぽい感じが少ししますが、なんぼのもんじゃいこの程度のもんにビビッてられるかい科学センターの人が伝えたいことがあって作った展示なんじゃい、ということで……。これを見て以降、アレのイメージによるさいなまれが減った気がします。本格的な造りだったら近付けもせんのですがね。

建物のレトロさにあんまり触れていませんでしたがこの階段、もはや遠い昔に連れられて見たサーカスか遊園地をも思い起こさせます。

3階(先程までの階は2階だったので)に上がると、それこそレトロかつ本質的な展示装置のサーカス状態です!特に美味しいところだけに絞ってみましょう。ボタンを押すとその元素を含む物質の実物を見せてくれる周期表!

美しい炎色反応の実演!さらにこれがどのように利用されているか琵琶湖花火大会の映像や花火の備品の実物で示しています。

極めつけは1970年に作成されたという数当て装置です。二進数の原理によって、思い浮かべた数を6つの質問で的中するのです。修学旅行の中学生が大騒ぎしていました。今の若者にもこの装置の核心的な働きが驚かれたのです。しかも表示の一部は……、

ニキシー管!数字の形をしたネオン管を重ねたような構造をした表示装置です。見た目に原理が分かりやすく、また幻想的な雰囲気をまとった魅惑的な装置です。かつて国立科学博物館の旧本館で月の模型の月齢を表示するのに使われていたのを覗き込んで魅了されていたのですが、まさか現役で科学館に使われているところに再び出会えるとは。

再び地層が現れましたが、上の階なだけに新しい時代に堆積した京都の地表の地質に関する展示が中心です。

京都を挟んで岐阜のデスモスチルスと大阪のマチカネワニ、これも恐竜絶滅より新しい古生物です。

こうして見るとまるでこちらの階の床が中生代と新生代の地層の境界のようです。タルボサウルスがこちらを睨みつけ噛み付かんばかりです。

懐かしい造りの建物に懐かしい造りの展示、幼少の頃の単純な恐竜への憧れを呼び覚ますかのようです。私が幼少の頃から好きな恐竜といえば、サウロロフスによく似たパラサウロロフスという種類でした。「恐竜と友達になりたい」……、柄にもなくそんな素朴な想いもよぎります。

吹き抜けの反対側は企業により科学の成果が実践されていることを示すコーナーと、

主に電磁気や空気の働きを示すコーナーです。

空気を抜いていくと何が起こるのか……、上品な言葉遣いと美しい表示によるクイズになっています。

その他にもプラネタリウムや細かい展示が館内にあるのですが、庭の展示で終わりましょう。館内にも敷地内で採れた松ぼっくりなどが展示されていたので気配はずっとありました。

ソテツなどの特徴的な植物や様々な岩石が、小さいながらもすがすがしい空間に並んでいます。

作物らしきものを育てる畑なども見えます。

もちろん岩石は京都市内のもの中心で、しっかり解説されています。

庭の中心を離れると野山を再現したようになっています。

植物展示と岩石展示の自然な融合。

開放時間は過ぎていましたが、チョウを育てる温室もあります。外から見る限り小さいながらも工夫されているようです。

ナラ枯れの被害にあった木もしたたかに展示に利用しています。

小さくともしっかり植物や岩石の展示になっていました。

もし早く見終われたら京都市動物園にも行こうと思っていたんですけれど、全然そんなこじんまりとしたものではありませんでしたね……あまり興味のない分野を飛ばすっていうことが苦手ですし。

大人なのでレトロなものをついひいき目で見てしまうけどそれは動水博の本来のターゲットである若い人には通じないのだから気を付けよう……と普段は思っていますが、以前閉園が近付いたみさき公園で思ったように、本質的だから残っているというものならレトロなものを尊重するべき、ということを改めて思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?