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春和景明

九條です。

先日、奈良の興福寺から信者や「友の会」の会員向けに手紙が届いていたのですのが、先程ようやくそれを開封致しました。^^;

その手紙の冒頭に時候の挨拶として記されていたのが、この記事のタイトル「春和景明の侯」です。

けれども、恥ずかしながら私はこの語を存じませんでした。意味を調べると、

「明るく穏やかな春の日」

で、その出典は北宋の范仲淹の散文「岳陽楼の記」の一節、

【原文】
春和景明 波瀾不驚 
上下天光 一碧萬頃 沙鷗翔集 錦鱗游泳 岸芷汀蘭 鬱鬱青青
而或長煙一空 皓月千里 浮光耀金 靜影沉璧 漁歌互答 此樂何極
登斯樓也 則有心曠神怡 寵辱皆忘 把酒臨風 其喜洋洋者矣

(范仲淹「岳陽楼記」より)

【読み下し】
春和し景明に波欄驚かず。
上下天下一碧萬頃沙鷗翔集し錦鱗游泳し岸芷汀蘭、郁郁青青とす。
或いは長煙一空、皓月千里、浮光金を躍らし、静香影璧を沈め漁歌互いに答ふるが若きに至りてはこの楽しみ何ぞ極らん。
斯の樓に登るは則ち心曠く神怡び寵辱皆忘れ、酒を把て風に臨み其の喜び洋洋たる者有り。

だそうです。その意味は(私訳)、

【意味】
春の明るく穏やかな景色の中、水面もおだやかで波も立っていない。
空も海も光り輝いて青一色である。岸辺にはカモメが集まり、水の中では錦の魚が泳いでいる。草々は青々として緑の香を馥郁と放っている。
夕暮れ時には霞がかり、白く輝く月が千里の遠くを照らしている。その月光が波に映ってキラキラ輝いている。
月の光が玉のように静かに水の底をも照らし、漁の船からは歌が聞こえてくる。なんと楽しいことか。至福のひとときである。
そのような時にこの楼閣に登ると、心は晴々として喜びにあふれ、恩も罰もすべてを忘れてしまう。盃をとって春風にあたれば、その喜びは限りなく広がって行く。

(九條 訳)

などとなるようです。

「春和景明」

美しい言葉ですねぇ。これからは私も「春和景明」を使わせていただこうと思います。^_^

©2022-2023 九條正博(Masahiro Kujoh)
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