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中秋(仲秋)の名月

九條です。

今日は9月10日。十五夜。中秋の名月ですね。

ここ大阪市内では、いま(お昼すぎ)は青空が見えているのですが、果たして今夜はお月さまを観ることができるのでしょうか?

この「中秋の名月(十五夜)」は、もともとは中国・唐代で始まった「仲秋節」だという説があります。わが国には平安時代の頃に伝わりました。

この時期(旧暦8月15日ですが)には、夏の作物の収穫もほぼ終わって稲刈りまでの間の少しだけ余裕のある時期にあたります。ホッとひと息つける頃なのでしょうか。

ですからわが国における「中秋の名月」は、古代においては夏の収穫祭や秋の初穂祭の意味がありました。

さて、この中秋の名月について、わが愛すべき清少納言さんは『枕草子』で、

【原文】
しきにおはしますころ。八月十余日の月明き夜、右近の内侍ないしに琵琶弾かせて端近くおはします。これかれ、もの言ひ、笑ひなどするにひさし(ひさし)の柱に寄りかかりてものも言はでさぶらへば、

「など、かうも音もせぬ。もの言へ。さうざうしきに」

とおほせらるれば、

「ただ秋の月の心を見はべるなり」

と申せば、

「さも言ひつべし」

とおほせらる。

(『枕草子』第九六段「職におはしますころ」より)

【意味】
これは(中宮定子さまが)職の御曹司にいらっしゃった頃のお話しです。八月十日過ぎの月の明るい夜に(中宮定子さまは)右近の内侍に琵琶を弾かせて、端のほうにいらっしゃいました。女房たちはそれぞれ話をしたり笑ったりしていたのですが、私(清少納言)は廂(廊下)の間の柱に寄りかかって何も話さないで黙っていたところ(中宮定子さまが)、

「どうしたの?あなたはなんで(今夜は)そんなに静かなの?何かお話ししてよ。(あなたが話さないと)場が淋しいのよ」

とおっしゃったので私(清少納言)は、

「ただただ秋の月の心を感じていたのです」

と(中宮定子さまに)申し上げると(中宮定子さまは)、

「ほぅ、なかなかウマいこと言うね、そういう風に言うこともできるよね(笑)」

とおっしゃられた。

(現代語訳:九條正博)

と書いています。

冒頭で、わが国における「中秋の名月」は収穫祭や初穂祭の意味があると申しました。

「中秋の名月」の日には、神々に収穫の感謝の気持ちを伝え、また同時に五穀豊穣などさまざまなお願いをする日でもあります。皆さまは、どんなお願いをされますか?

皆さまがいつも幸せでありますように。


【参考資料】
◎上坂信男 他『枕草子(上・中・下)』講談社学術文庫 1999年
◎曹述愛「中秋節の来歴とその慣習」愛知淑徳大学 2010年
◎吉原啓「日本古代の祝詞にみる神話の視覚化構造とその普及」奈良県立万葉文化館 2020年


©2022 九條正博(Masahiro Kujoh)
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