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”面白ければ”何でもいい

10月2日、キングオブコント2021の14代目チャンピオンに空気階段が君臨した。SMクラブでの火事、架空キャラ「メガトンパンチマン」のコンセプトカフェという二つのコント設定はどちらもぶっ飛んでいて、一本目は過去最高得点をたたき出す、まさに圧勝だった。


私はお笑いが好きだ。幼い頃から家でお笑い番組を見たり、地域にお笑い芸人が来るイベントに家族で見に行ったりしていた。

父もお笑いが好きで、サンドウィッチマン、ナイツ、博多華丸・大吉、ブラックマヨネーズなど、ベテランの洗練された漫才をよく見ていた。どうやら父はしゃべり一本または日常的な設定でのコント系のお笑いが好きなようだった。

また、父はお笑いに関して好き嫌いが激しく、無名の若手や設定が難しいコントを見ると「わかんねえ」「面白くないな」とチャンネルを変えてしまうことがよくあった。

一方、私はお笑いに関して「面白ければ何でもいい」というスタンスを取っているため、実家に帰った時に父とお笑い番組を見ていると、「なんでチャンネル変えるんだよ」「ふざけんなよ」と父と衝突しお互いに不機嫌になってしまうこともしばしばだ。


私が本格的にお笑いに目覚めたのは2018年だ。M-1グランプリで霜降り明星がチャンピオンとなり、その後いわゆる「第七世代」の台頭が始まった。M-1グランプリのアナザーストーリーで粗品さんが大号泣している姿を見たとき、芸人一人一人の人生にドラマがあること、自分の人生をかけてお笑いをやっていることに気づかされた。

チャンピオンを夢見て新しくチャレンジする者、敗者復活に全てを賭ける者、栄光にあと一歩届かなかった者、無冠のままラストイヤーを迎える者

アナザーストーリーは決勝進出者にフォーカスされるが、それ以外にもたくさんの芸人にそれぞれのストーリーがある。当てれば勝ち、外せば負け。お笑い芸人は一か八かの博打の世界で生きている。だからこそ、生き残るために必死で実力主義のサバイバルゲームに挑んでいるように見える。


お笑いを見ながら、父はよく「こんなバカなことやってねえで…」と口にする。一見お笑いを蔑んでいるようにも聞こえるかもしれない。しかし、私はそうではないと思う。正確には「こんな博打なことやってねえで…」という意味を含んでいると思っている。誰だって安定した収入、安定した生活があることが一番だ。だが、安定さと引き換えに自分の夢を買ってみてもいいんじゃないか。一筋縄ではいかないけれど、この海を越えた場所を見てみたいという欲望は、何千年も前から変わっていないと思う。


私はこれまで普通に進学して、普通に就職して、おそらく普通に結婚して家庭を持つことになると思う。多少のハプニングもあったが、全体的に見ればありがたいことに安定した人生を送ることができている。そんな自分とは対照的な人生を歩むお笑い芸人の方々。自分がひたすら面白いものを追求し続けるその姿は本当に尊敬するし、だからこそ最高にかっこいい。


どんなにくだらなくても、どんなに訳が分からなくても、面白ければそれでいい。一お笑い好きとして、芸人たちが本気で作るバカらしいものを客席や画面の向こうから本気で笑っていきたい。


正月のリビングではまだこれからも父との衝突は続く。


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