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事業会社内で分析ニーズ、どう探す? ~エムスリーでの取り組み紹介~

 こんにちは。エムスリーのデータ分析グループのグループリーダーをしている篠田です。今回は、データ分析担当者であれば、誰しもが直面する「分析ニーズの探り方」について、エムスリーでの取り組みを少しご紹介したいと思います。

現在、エムスリーのデータ分析グループは、大きく分けて以下の2つのユニットが存在しています。

- プラットフォームユニット:エムスリーが運営する医療従事者向けのプラットフォーム(m3.com)上の施策改善を実施するユニット
- 製薬ビジネスユニット:製薬企業のDX化支援に関する分析、および製薬会社向けの新規分析サービスの設計開発を行うユニット

製薬ビジネスユニットのメンバーは、各自担当のクライアント(製薬企業)を持ち、クライアントの抱える課題や、クライアントのDX化を支援する上での課題を、エムスリー社内の営業・コンサルティング組織から聞き取り、分析面で支援するような働き方をしています。
 ここでは、私の担当している製薬ビジネスユニットに置ける、「分析ニーズの探り方」についてご紹介をしたいと思います。


分析ニーズをデータサイエンティスト自ら探しに行く理由

 そもそも、なぜ私たちが自らプロアクティブに分析ニーズを探しに行かなければならないのか?というところから話を進めていきたいと思います。

エムスリーのデータ分析グループのKPI

 エムスリーのデータ分析グループのミッションは、「あらゆるデータとあらゆるデータ分析技術を活用して、エムスリーグループの各事業を成長させること」としています。簡潔に言えば「エムスリーグループの利益を最大化させる分析を行う」事が求められ、「利益を最大化させる分析を行う」というビジョンを実現するために、我々データ分析グループは「利益貢献額」という数値をKPIとして追っています。利益貢献額は以下で定義されます。

利益貢献額 = (1) プロジェクト効果額 × (2) 貢献割合

このうち、(1) プロジェクト効果額については、単純にそのプロジェクトによって得られた利益額を指しています。例えば、ある施策によって年間利益額が2億円向上した場合、この2億円がそのままプロジェクト効果額となります。その次の、(2) 貢献割合は「そのプロジェクトにおいて、我々データ分析グループの貢献はどれほどであったか」を表す数値で、分析の内容によって、10%~100%の範囲で細かく定義がされています。この利益貢献額の目標を毎期初に定め、年度末に達成度を評価する仕組みになっています。(詳しくは、「エムスリーのデータ分析グループが、どのようなKPIを追っているのかについて」の記事をご覧ください)

 エムスリーにデータ分析グループが立ち上がって約10年が経過し、エムスリー社内でのデータ分析グループの認知も高まって来たため、待っていても勿論分析相談や分析依頼は来るのですが、それだけではKPI達成には不十分です。そのため、各メンバーが担当組織に定期的に分析ニーズを探しに行き、エムスリー全体として利益を最大化するような取り組みを実施しています。

分析ニーズ発掘の際の事前準備

 ある日突然、担当する組織に出向いて、担当者に「何か分析ニーズはありませんか?」と聞きに行っても、その場は盛り上がらず、まず期待するような成果は得られないでしょう。そこで、私たちはニーズ発掘の際にいくつかの事前準備を行い、出来るだけオープンクエスチョンにならないような形で、具体的な課題を得られるように工夫をしています。
ここでは3つピックアップしてご紹介したいと思います。

1.データ分析グループのプロダクトカタログの整備

 私たちの組織では、まずは「データ分析グループってどんな事(分析・課題解決)が出来るの?」という基本的な問いに答えられるように、データ分析グループ内で型化された分析プロダクトや、過去実施した分析プロジェクトの事例を、分析課題軸や、担当する組織におけるプロジェクト進捗フェーズ軸毎にスライドにまとめたカタログ集を整備しています。
また、カタログ集を作るだけでは無く、主要な分析プロダクトに関しては、定期的に社内で勉強会を開き社内での認知度・理解度を高める取り組みも実施しています。

2.担当組織が抱える課題の下調べ

 次に、自身の担当クライアントについて抱える課題の下調べを行います。
 過去にヒヤリングを実施したことがあれば、その際にどのような課題が上がっていたか内容を確認し、データ分析グループ内で、該当クライアントについて、どのような分析プロジェクトを行ったのか確認をします。並行して、Salesforceのデータを使って、担当クライアントのサービス契約状況(契約規模や契約経過年数、契約更新時期など)を確認します。これらの情報により、担当クライアントに関して、おおよその抱えている課題や分析ニーズの方向性にあたりを付けていきます。
 例えば、契約更新のタイミングが近づいているのであれば、「サービス利用による効果検証の分析ニーズ」、契約から時間が経過していて、直近契約規模が縮小傾向であれば「競合比較の分析ニーズ」があるのではないか、といった感じです。詳細はヒヤリングをしてみないと分からないので、あくまでニーズを探る要素の一つにします。

3.課題にフィットする分析提案準備

 課題やニーズの方向性にあたりを付けたら、そこにフィットしそうな分析内容を検討していきます。その際、考える順番としては、まずは、定型化された分析プロダクトのうち、フィットしそうな物はないか考えます。もしなければ、次に、置かれている状況が類似した他クライアント向けの事例で、横展開出来そうな事例がないか考えていきます。もしそれらも無ければ、最後に、ゼロベースで課題を解決できそうな分析ソリューションが考えられないか設計をしてみます。
 もし分析をする工数がそれほど大きくなく、データも揃っているようであれば、ヒヤリングを行う前に、プレ分析をし、課題を予め見つけ出した上で解決策を提示します。

 ここまで準備が出来たら、これらを当日使う議事録のページにまとめ、事前準備は完了です。当日は、あたりを付けた課題をベースに課題やニーズを聞き取り、内容に応じて準備をした分析提案をぶつけていきます。そうすることにより、オープンクエスチョンで質問を繰り返すよりも、より具体的な分析ニーズを拾う事が可能になります。

分析ニーズ発掘の頻度

 基本的には、担当する組織で分析が必要になりそうなタイミングに併せてヒヤリングを実施しています。例えば、上期/下期といった期初のタイミング、担当するクライアントのサービス契約更新に併せたタイミング、その他隔週や月次で定例として実施している場合もあります。
 多くは、はじめに単発のヒアリングを実施し、担当組織と必要な頻度を話し合って決定することが多いです。

さいごに

 今回は、エムスリー社内でのデータ分析ニーズの発掘方法についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
 データ分析組織の役割や組織のKPIによって、データサイエンティストに求められる働き方は異なる為、もしかすると内容に違和感を覚えられた方もいらっしゃるかもしれません。一方で、企業の中で「ビジネスインパクト」を求められるデータ分析組織においては、何かしらプロアクティブに企業内のビジネス課題を発掘して、データや分析力を用いて課題を解決する事が求められます。ビジネス課題や分析ニーズを発掘するといっても何をすればよいのか分からない、ヒヤリングを実施しても思うようにニーズが拾えない、という課題をもっている方の少しでも参考にしていただければ幸いです。

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