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紆余曲折のキャリアと、支援者の線引き:大田 仁美(精神保健福祉士)

「INTERVIEW」では、カウンセリングプラットフォーム「メザニン」のカウンセラーに広報室からインタビューを行い、その”人”を掘り下げます。
今回は大田 仁美カウンセラーです。

現在は精神保健福祉士の資格を持ちながらカウンセラーとして働く大田さんですが、そのキャリアの始まりは雑誌編集。
一体どんな経緯を経ていまに至るのか、そして福祉と心理のどちらも知る大田さんならではの「境界線」について、話は広がりました。

大田 仁美(おおた さとみ)
精神保健福祉士
出版編集者を経て、精神医療の世界に飛び込む。児童から高齢者まで幅広い方々の相談支援・生活支援・診療補助等に従事。
電話相談や講師業を通じて、精神医療に繋がっていないメンタルサポートを求める方々にも対応してきた。


芝居〜雑誌編集〜福祉のキャリア

——大田さんのカウンセラーになるまでのキャリアはだいぶ変わっています。

大学生の頃はお芝居に興味があって、舞台に参加していました。
旅回りの劇団に参加したり、大学卒業後1年間はテレビのエキストラをやってみたりしていました。
ただ、テレビの効率よく作っていくやり方は、あんまり合わなかったですね。

——その後は雑誌編集の世界に移られていますね。

もともと私は本が好きでした。
撮影の現場で、たまたま出版社の編集者さんと仲良くなって話しているうちに、会話の内容は忘れてしまいましたけれど、ライターをやってみればと声をかけてくれて。
「あ、そういう職業があるのか」と思って飛び込んで、しばらくはフリーのライターとエキストラを同時にやっていました。

雑誌の業界では犬がブームだった時期があり、私自身も犬が好きだったので、その仕事が多かったですね。

「動物介在療法」と言いますが、病院や高齢者施設に犬が行く、そんな活動があるらしいということでアメリカまで取材をしてレポートを書いて持ち込んだりしていました。

動物介在療法(AAT)
伴侶動物(主に犬、馬など)の力を借りて人の精神的あるいは肉体的な健康状態を向上させるために実施される補完医療の一種

動物介在教育・療法学会HPより(https://asaet.org/about/ab03/)

また、動物が好きだったので高校生の頃は馬術部に所属していたんです。
で、ライターになってから「障がい者乗馬」というものを知って、実際に私も地域のボランティアとして参加するようになりました。

そうしたら日本の福祉の現場に乗馬を取り入れている施設があると聞いて、北海道まで行って本にまとめたりもしています。

——「障がい者乗馬」とは何ですか?

身体障がいをお持ちの方や、知的障がい、発達系の方も乗られるのですが、乗馬は身体機能のリハビリに効果的なんです。
なので、ドイツでは代替医療として保険が適用されています。

私自身は障がい者乗馬の専門家ではないのですが、馬の足の運びが上に乗っている人間の骨盤を自然と動かしてくれるようです。
普通のリハビリでは、歩行訓練の一歩目は自分で筋肉を動かさないといけないのですが、それを馬が代わりに動かしてくれるので、筋肉が動きを覚えていくんです。

それに、馬の上では大騒ぎしちゃいけないんですね。
人間には通じるわがままが、馬には通用しない。
なので、知的障害をお持ちでも、馬に乗りたいという気持ちから、お約束を守れるようになる方もいます。

心理と福祉、重なる部分と異なる部分

——心理や福祉の領域には、どのような経緯で入られたのですか?

そうしたことをしていた辺りから、心理学的なことについても知識をつけなければと思い、社会人のオンラインで受講できる大学のコースに入学しました。

心理学の学習しているうちに、今度は精神保健福祉士の資格を知ったんですね。

福祉の対人支援活動は、生活で課題を感じている人と、人や制度、サービス、相談窓口といった社会資源とを結びつける仕事です。
そうした行為はとても現実的だなとも感じて、心理の学習と同時並行で始めました。

ソーシャルワーカーの仕事は、現場がとにかく面白いんです。
先生についていって、患者さんがどう変化していくのか経過を観察したり、ケアマネさん、社会福祉協議会の人、役所の係の人をつないでいく地域連携とか、入院調整をしたりとか。


——カウンセラーとソーシャルワーカーは重なる部分があるのでしょうか。それとも、全く違うものですか?

どちらも経験してきて、今の私はカウンセラーなのでしょうね。
電話での心理相談の仕事もしたことがありますが、使い分けている意識は特に無かったです。

ソーシャルワーカーとカウンセラーでは、相手との関係性は違いますから、対応はもちろん違います。

ソーシャルワーカーであれば、目の前の相手に対して、利用できる公共の施設や制度、情報は何か、この人を相手にどう組み立てるか、という考えで接することになります。
カウンセラーなら、傾聴しながら相手がより良いコンディションになることを目指すことになると思います。

そういった対応の違いはありますけれど、マインドについて意識的に使い分けをしているわけではないと思います。

尊重の態度を示せるのは「敬語」

——様々なお仕事をされる中で、大田さんが気をつけてきたことはありますか?

距離感でしょうか。

私自身が、自分のパーソナルスペースに入られることがあまり好きではないからだと思います。自分のペースでいたいし、自分の領域を荒らされたくない。

施設のなかでは、基本的に敬語を崩さないようにしています。
こちらが専門家だからといって利用者さんに対して上から目線で接していたら、人間関係として良くないですよね。
関係性が良くないと、サポートはうまくいかないんです。

相手をきちんと尊重しているということを伝えること。
精神論的なハートももちろん大事なんですけれど、一番端的にそこが伝わるのは敬語を崩さないという日本的なやり方だなと、現場で学びました。


——今後のビジョンみたいなものはありますか?

ビジョン……
これからも、なるようになりますかね。そんな気がします(笑)

インタビュー、撮影、文:メザニン広報室

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