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#5 「柳のようにブレる、折れないために」:酒井 真純(公認心理師)

メザニンのカウンセラーに広報室スタッフがインタビューをする本企画。
第5回は公認心理師、精神保健福祉士の酒井 真純カウンセラーです。福祉領域での経験を経て、心理臨床へ。その過程とカウンセラーとしての想いをお聞きしました。

ー 酒井さんと心理学の出会いを教えてください。

小さな頃から人の役に立ちたいという思いがあって、最初は看護師になりたかったんですが両親からは反対されてしまい、親の勧めで看護とは関係のない短期大学に入ったんですね。

でも、やっぱり面白くなくて。

当時、その大学では心理学科がすごく人気だったんです。
人気なら行ってみようかな、という単純な気持ちで2年次に編入しました。
学費が新たにかかるので父は嫌そうでしたけれど、最後は「しょうがない」という感じでしたね。

ー その後は心理ではなく福祉のキャリアを歩まれていますね。

学部生時代の卒業論文のテーマが、「高齢者の生きがい」でした。
私以外に2人、他の短期大学から編入してきた人がいて、3人グループでの卒論制作だったんです。その2人が社会福祉の領域から来ていたため、福祉寄りのテーマになりました。

卒業後は人のために働きたいと考えていたのと、一般企業に就職して働くことには関心がなかったので、福祉一択で決めていました。

就職後は、通所支援を行う知的障害者施設で指導員として仕事をしました。
1年くらいで異動になって、系列の老人ホームの事務もしつつ、精神保健福祉士の資格も取りました。

結婚してからは主婦になって、子供が小さかった時は子育てに専念していました。
でも少しずつ手が離れていく中で、子供が大きくなった後に何もないのも嫌だなと思って、何か働いていたいと思い、精神保健福祉士の資格を活かして働ける心療内科のクリニックに入職しました。


ー その後、大学院に入られて臨床心理学を学ばれています。時期的にはコロナ禍でもありましたが、どのような経緯だったのでしょうか。

クリニックでの仕事は、訪問看護でした。
そのため、コロナウイルスの流行が始まってからは難しくなってしまい、家族からも反対されて辞めることになったんです。

緊急事態宣言も出て、外に出ることもできなくなったので、じゃあその間何か勉強しようかなと。
そうしたら友達が「大学院に行けば」と言ってくれて、その手があったかと思い受験することにしました。

そもそも訪問看護の場面では、当人やご家族の方から医療相談を受けることが多くありました。

でも、相談に乗ってお話を聞いているけれど、聞き方はこれで合っているのかなという思いがずっとあったんです。
一応、本を読んだりして自分で勉強をしているつもりではあったのですけれど、きちんと学べたらいいなと思っていた部分もありました。

研究計画書を書くのはすごく大変で、でも一生懸命調べたりしていたら引き下がれなくなって、受かりたいなとも思うようになり、最後はなんとか合格できました。

ー 現在はスクールカウンセラー、そして精神科のクリニックでカウンセリングをされています。どんなお仕事なのでしょうか。

スクールカウンセラーとして働いているのは、通信制の高校です。
通信制なんですけれど、校舎があって、通って勉強ができるんですね。そこの相談室に居ます。
それと、「適応指導教室」という通常の教室とは別で、教室に入れない子が居る事ができる教室があります。

教育支援センター(適応指導教室)
不登校児童生徒の集団生活への適応、情緒の安定、基礎学力の補充、基本的生活習慣の改善等のための相談・適応指導を行っており、平成27年度間に約16,000人の義務教育段階の児童生徒が支援を受けている

文部科学省 不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実 ~個々の児童生徒の状況に応じた環境づくり~

みんながいる教室には居る事ができないけれど、ここなら自分のペースで過ごすことができる。そういう場所で、私が話し相手になって問題を出し合ったりとか、雑談したりしています。

クリニックの精神科では、10代から高齢者まで、幅広く対応しています。
主なクライエントは、神経症(ノイローゼ)に近いような症状の方が多いですね。
健康ではあるんですけれど、寝られない。

あとは、発達障害のご相談もここ最近は多いです。
仕事中にミスをしてしまうとか、いろんな事を言われた時にどれから順序立ててやれば良いか分からなくなってしまうとか、言われたことを忘れちゃうとか。

それを他の方から指摘されてしまうと、今度は落ち込んで、寝られなくなってしまって、さらにミスが増えてしまう悪循環にはまってしまうんですよね。

でも発達障害は難しいんです。メモをするとか、いろんな対策を本人は既にしていて、それでも出来ないと、出来ない自分を責めてしまい、嫌になってしまいます。


ー 酒井さんの、こんなカウンセラーでありたいというビジョンを教えてください。

ずっと思っているのは、カウンセラーとして素直でありたいということです。

ゼミの先生が、まさにそれを強調されていたんです。
カウンセリングの中で迷ったり悩んだりしたときは、今自分が迷っていることをクライエントに素直に伝えれば良い、と。

人は歳を重ねるごとに頑固になっていくし、色々な経験から「ああじゃないか、こうじゃないか」と予測して先回りできるようになります。
そうすると、相手の言葉を待たずに自分の中で答えを出しちゃうんですよね。

そうではなくて、今の自分の受け止め方を正直に伝えて、クライエントさんの思いを一緒に確認していけたら良いなと思います。

ゼミの先生は「柳のように」って仰っていました。
芯は強くてブレないけれど、風に揺れる。折れないために。

酒井 真純
公認心理師/精神保健福祉士
大学で心理学を学び、大学院で臨床心理学を修了。
福祉施設、障害者施設の指導員を経て、現在はスクールカウンセラー、精神科におけるカウンセラーとして所属。

インタビュー、撮影、文:メザニン広報室


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