見出し画像

「お医者さま」 谷川俊太郎

「お医者さま」
お医者さまは病気をみつけるのが趣味です
というのも近ごろでは何故か
病気になりたがっている人が多いからです
どこも悪くなくてぴんぴんしてるのは
鈍感みたいで恥ずかしいという銀行員に
桃色と黄色と透明な薬をあげます
ひとつも病気がないというのも病気の一種だと
お医者さまは分かりやすく説明してくれます
お医者さま自身ももちろん病気です
なおらないように毎日湿布をしています
 (p.340)

ずっと、希死念慮を抱いています。
これは、病気なのでしょうか。

精神科に行くと、鬱病かそれに近い病名がつくのでしょう。
それならば、私は成人する前からずっと鬱です。

でも、それとはなんだか違う気がするのです。

友人がいて、恋人のような人がいて、家族がいて。
学校に行って、仕事に行って‥‥。
大切な仲間と、普通に過ごしてきました。

病名がつけば、楽になるのでしょうか。

鈍感力が欲しいです。
誰にどう思われていて、何を言われていても、気づかないような。

とりあえず、肩に湿布を貼って、早めに休もうと思います。

マッサージをしてくれる貴方が、今日はいないので。

ーーーーー

「お医者さま」 谷川俊太郎 『朝のかたち 谷川俊太郎詩集Ⅱ』(角川文庫、1985)より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?