ゼロ金利。


 わが国の金利はほとんどゼロで、普通預金の金利は0.001%、定期預金は0.002%で、「金利はなし」が常識になった。普通、銀行に金を預ければ、その時の経済状況に応じて金利が付いた。
 バブル経済崩壊(1990年)後金利は急落し、急速に経済は落ち目になり、98年(平成10年)には経済が最悪の状況に陥り、大規模な財政政策が行われた。金融政策でも緩和措置が必要となり、99年2月から日本銀行は短期金利を史上最低の0.15 %へと誘導した。この時期から実際にゼロ金利が始まり、この20年間以上金利は付かないことになった。16年1月には異次元の金融緩和も相俟って、禁じ手のマイナス金利政策が導入された。
 当然、様々な議論が湧出した。ゼロ金利と金融緩和は企業経営の危機感を失わせ構造改革を阻害する、低金利が経済・物価情勢と離れ長く継続するという期待が定着すると、金融・経済活動を通じて分配に歪みが生じ、経済成長を阻害するなどの意見は真っ当だった。
 これを長期間続けた今、結果は案の定だった。この間に禁じ手の消費税の増税を2回も実施したことから、経済・産業の停滞を促進し、貧富の格差は拡大した。その結果、顕著なインフレと円安を招いている。
 現在、銀行からお金を借りたい人にとっては低金利で借りられるいい時代で、国債を発行する政府としても大変心地いい状況である。国債を購入した機関や人に支払う金利は低くても済む訳で、いわば金はじゃぶじゃぶ状態になっている。といっても、一向にその大金を国民に配布する気はなく、さりとて使い道もない。
 こんな状態であるから、わざとインフレにして金を回そうとする。ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギーや食糧の価格が高騰した現在、これまで長い不景気でデフレが続いたから、これを契機にインフレを起こすという政府と日銀の目的は達成されようとしている。
 そうなれば、米国と同様に給料を引き上げ、1.75%まで利上げを急ぐ必要がある。わが国でも1970年から90年まで銀行の一般預金の金利は2.5%前後が続き、74年頃の郵便預金は7.5%の金利が付いて、10年定期で2倍になった。これが本当の貯金というもので、昔の人は利子と言えばこの時代を指す。
 しかし、利上げをしたら、日銀は膨大な利子支払いで債務超過に陥る。最近の経済記事の見出しはずっとインフレも円安に対しても打つ手はなしの連発で、日銀と政府は一体であるから、政府としても打つ手がない。デタラメな異次元の金融緩和に必然とされるツケが回ってきたといっても、利子は付くのが普通である。
 独断と偏見で申し訳ない。

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