社会機能の維持と外国人。

 昨今、時々話題に上るが、わが国は人口減少と高齢化の進行により、社会機能の維持に直面している。出生数の減少によって、日本人の人口は13年連続でマイナスとなり、経済の衰退、社会保障費の増大、労働力の不足、地方の過疎化など多くの課題が浮上した。
 少子高齢社会による人口減少は、1970年に高齢化率が7%を超えた高齢化社会を迎えた時から認識されてきた。政府にはこの50年間に人口推計に基づいて、持続可能な国の運営に対する計画を予め立てる時間が十分にあった。
 それにもかかわらず、それをしなかったのは政治の責任と言えるが、行政の怠慢もある。政治家はその場限りの目先のことばかりで、あるいは公共事業一点張りで、30年先、50年先の国の在り方に対して、真剣に取り組もうとはしなかった。
 国際化や多文化共生社会を否定する者ではないが、江戸時代は人口3000万人程度で、鎖国政策で、食料、エネルギー、労働などはじめすべてを自給自足で国を運営した。自国のことは自国で賄う、こういった覚悟があれば、人口が減少しても、労働不足で路頭に迷うことはなかった。
 2023(令和5)年の将来推計人口によれば、総人口は30年には1億1662万人、50年後の70年には8700万人に減少する。また65歳以上の人口割合は70年には38.7%に増加する。
 一方、14年2月に内閣府の「選択する未来」委員会が、外国からの移民を毎年20万人ずつ受け入れると、わが国における人口1億人を100年後も維持できるという試算を示した。
 23年のわが国の外国人の人口は299万人で、非常に大きな存在となった。総人口(日本人+外国人)に占める割合は2.4%を占め、現状では外国人在住者の数は増加の一途を辿る。
 彼らは労働力不足の解消や地方活性化に貢献する。しかし、日本語や習慣の壁、法制度や社会資源の不備、社会からの誤解・偏見、教育の困難、社会保険の未加入、不安定な雇用など新しい社会的な問題を生み出している。
 したがって、外国人労働者のなし崩し的な受け入れは、社会の混乱を招く可能性が高い。彼らの受け入れ数だけでなく、生活支援や人権保護、社会参加の促進を含めて、包括的な視点から策定する必要がある。
 わが国には移民政策は存在しないと言われる。政府は国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を、家族ごと期限を設けずに、受け入れて国家を維持していこうとしている。しかし、現在のように専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることは移民政策とは異なるという。
真に奇妙な話である。

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