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「ここは素晴らしい学校です」

 馴染みのない教室にいた。床の材質は木で、なんだか懐かしい感じがする。通っていた小学校の低学年が使う教室の床と似ていた。細長い木の板が規則的に並んでいる。

 教室には大きな窓があった。校舎の中庭ではなく、小高い丘が見えた。丘のてっぺんには「バスのりば」と記されたポールがあり、小路が走るそばには野原があった。空は晴れていて、野原の緑が映えている。

 背面黒板の方に先生がいて、その隣に私は立っていた。前には20人ほどの生徒がきれいに整列していて、みんな私に注目している。そのせいか、私は転校生のような気分を味わっていた。実際、生徒たちの顔を見渡す限り知人はいないようである。しかしよくよく見ると、2列目の右端にひとりだけ顔の見えない友達がいた。仮にYとしよう。Yは私と同様、教室にいる生徒たちとは異質の存在であり、私の仲間であった。ただひとつだけ異なるのは、Yだけが室内の集団から受け入れられているという点である。私とYは実は教室の集合時間に遅刻していた。そのことについて先生は私を叱ったが、Yには寛容であった。Yは生徒たちにからかわれ、まんざらでもなさそうな態度で列に加わったのだ。私だけが生徒たちの前に立たされていた。

 仲間のいない空間に居心地の悪さを感じていると、後ろの扉から別の女の先生が入って来た。先生は唐突に英語でYに質問をした。虚を突かれたはずのYだったが、瞬時に「ここは素晴らしい学校です」と答えた。私はYの英語が質問の答えになっていないと思った。質問の内容を一部聞き取れていたのだが、「この学校はいかがですか」などとは決して聞かれていない。しかし英語の先生はにこやかに頷いて、「あなたはどう思いますか」と私の方へ顔を向けた。私は別の答えを用意していたが、突然不安になり、Yと似たようなことを言う方が得策だろうと判断した。

「とてもきれいな学校だと思います」

 すると英語の先生は高らかに笑い、「これでもかしら」と言って何か球体のようなものを床に転がした。それは新聞紙を丸めてその上に青と赤のガムテープを巻いただけの奇妙な物体だった。私はすかさずその球体を拾い上げポケットにしまった。床をきれいにしたいと思ったのだ。すると英語の先生だけでなく教室にいる生徒までが笑い声をあげ、先生はまた赤と青の物体を床に転がした。今度は私だけでなくYも一緒になって、床を清潔に保とうとその球体を拾い、ポケットに詰め込んだ。教室は大盛り上がり。私はようやく生徒たちから受け入れられた気がし、とても幸福だった。

 その後の交流会では教室内でボール遊びのようなものを2つか3つほどした記憶がある。難しい遊びに挑戦しようとして、目が覚めた。

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