[第九話]初皆中。ご褒美と、山梨遠征。
2月位。
その日はいきなりやってきました。
秋以降、めっきり上達しなくなってしまって、何がいけないのか、何が解らないのか。
それすら解らず悶々としていたところ。
先生の教えを、従順に守っているのだけど……
“違う”と言われる。
自分の首が、どんどん閉まっていく感覚を覚えていた時期。
母校の練習では、練習の最後に、試合を想定した4つ矢2セット(立練習)をします。
この頃になると、同期の中にも、チラホラと皆中(4射4中)をする人が出てきていました。
しかし、私のその頃の的中は、4射0中…1中……分け(4射2中)だせれば、まだ良い方でした。
射は汚い。中らない……いいとこなし。
しかし、ある日、何が起きたのか、1回目の立でいきなり皆中が出ました。
他の人は、初皆中の時は、部費から好きなジュースを1本奢ってもらっていました。
私の場合。
と、退場してきた瞬間、脅しが飛んできました。
その時、ふと1年前の事を思い出しました……
とりあえず、1本中てればいいんだな、と思い、2回戦目。
……邪念と力が入りすぎて0中……
退場した瞬間、T監督。
仁王立ちで待ち構えている。
そして、無言で手に仕込んでいた弦輪を、私の鼻の穴に突っ込む。
同期連中。。。
“ざまぁ”と言いながら、手を叩いて爆笑している。
“他人の不幸は蜜の味♡“とか抜かす人もいる。
しかし、一通り弦輪の刑が終わった後。
初皆中のご褒美という事で、当初、私は連れて行って貰える予定ではなかった、2つの大会の同行の許可が出ました。
選手登録の締め切りが終わっていたので、マネージャーとしての参加でしたが”勉強してきなさい”との事で、ありがたく、参加させていただくことにしました。
山梨の近県大会……
山梨県の大きな弓道場で、関東近県から招待された強豪校の集まる非公式戦です。
慶應義塾大学附属高校、作新学院、市立船橋……錚々たる顔ぶれが揃う、割とヤバめの山梨遠征。
卒業してから、他県の弓道部員さんに聞いて知った話ですが。
東日本大会を想定した練習大会という事らしい。
そこで、体配や射技ひとつ取っても、いろんなやり方があるのだと知ることが出来たり。
全国クラスの安定感とレベル感を知る事ができました。
控えめに言って、カルチャーショックがデカすぎました。
選手紹介があって、選手の名前が呼ばれるたびに拍手が起きる……
そんな大会自体、見るのが初めてだったので、応援しているだけでも雰囲気に飲まれてしまって、正直、あまり良く覚えていないです。
…もったいない事をした。
しかし、そんな環境で、実際に弓を引く先輩、実際に立に入ることが許された他の同期が、でっかく見えてしまいました。
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