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【日本IBM、アストラゼネカ、パーソルキャリア登壇】ダイバーシティ&ウェルビーイング戦略から考える経営/企業成長(後編)

【第二部イベントレポート】健康からDE&Iを考える。Femtechがもたらす組織の変化


企業向けダイバーシティ推進のサポートを目的とした組織コンサル・プログラムを展開する株式会社LYL(リール)は、2023年9月5日にオンラインイベント「ダイバーシティ&ウェルビーイング戦略から考える経営/企業成長」を主催いたしました。

二部制のイベントの第一部では、『ダイバーシティ経営がもたらす持続的な企業成長と新時代のアプローチ。挑戦し続けるDE&I企業が実践する、全社推進に向けたストーリーと巻き込み力』をテーマに、経営とダイバーシティをつなぐストーリーのつくり方、全社を巻き込むために実施している効果的取り組みについてディスカッションを行いました。

第一部のレポートはこちらのnoteでお読みいただけます。
                                   

第二部では、パーソルキャリア株式会社 DI&E推進部マネージャー・松尾 れい氏にご登壇いただきました。“女性の健康”を切り口に、セミナーや研修を社内外に向けて実施しているパーソルキャリア社。その活動は、女性という枠組みを越えて、男性社員や組織風土の変革にもつながっていると言います。

本記事では、試行錯誤を繰り返し、全社での取り組みへと発展させていった松尾氏に、経営戦略とDI&E推進のつなげ方、推進のポイントなどをお聞きした第二部の模様をお届けします。

□登壇者(第二部)プロフィール




健康を切り口としたDE&Iな組織づくりに至った経緯・全社推進/巻き込みのポイント


小山:ダイバーシティ推進においては、女性・障がい者・外国籍など、特定のセグメントへフォーカスした取り組みが先行しておりました。しかし、LYLでは、性別・健康状態・働き方・国籍・年代・スキル・価値観などのさまざまな組み合わせにより、“誰もがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)の当事者である”という定義を前提とし、日々、企業様のダイバーシティ推進を支援しております。

健康もDE&I推進において欠かせないテーマですので、イベント後半のテーマを『健康を切り口としたDE&Iな組織づくりに至った経緯・全社推進/巻き込みのポイント』としました。さっそく、松尾さんからパーソルキャリア社の取り組みをご紹介いただきたいと思います。


松尾:パーソルキャリアでは、社内向けと社外向けの2つの活動を行っています。2021年4月に活動実施の検討を開始し、2021年9月に本格始動いたしました

最初は、女性特有の健康問題で悩んでいる人の実態を知るために、定性的なヒアリングから始めました。それにより悩みを抱える方の多くの声を拾い上げることができたので、女性ホルモンに関するセミナーを開催ランチタイムに自由参加できる形式での実施でした。

仕事熱心な方が多い会社なので、パフォーマンス向上につながることを全面に押し出して告知しました。自由度の高いセミナーは、参加者が平均して50〜80人ほどなのですが、そのときは130人も集まってくださったんです。ニーズの高さを感じました。そして終了後のアンケートの意見を参考にして、11月には更年期をテーマとしたセミナーを開きました。

小山:セミナー開催、そしてそこから吸い上げたニーズを元にして次のテーマを策定……と進められたんですね。社外への取り組みもお聞きしたいです。

松尾:社外に向けては、2022年1月に「はたらく女性の活躍と健康を考える会」というコミュニティを立ち上げました。コミュニティでは、調査による課題提起、取り組み推進に関する情報発信、そしてネットワークづくりの3つを活動の柱にしています。

小山:調査を通じて新たに発見した課題はありますか?


松尾:「女性特有の症状による仕事への支障」についての調査では、半数以上の方が仕事に支障があると感じており、そのうち「働き方を変えたり諦めたりしたことがある」という人が54.1%という結果でした。仕事を軽いものに変えてもらったり、昇進・昇格を諦めたり、なかには転職や離職をしたという方もいらっしゃいました。

また、健康に対するリテラシーが高い人たちは、そうではない人たちと比べると、仕事の満足度や働く喜び度、それから自己決定感・目標達成度などの項目の全てが高いことがわかったんですね

組織に関しての調査でも、DE&Iな組織づくりがいかに重要であるかがわかるデータが取れています。女性特有の不調を周囲に伝えやすい組織は、そうでない組織と比べると目標達成度が高い傾向にあります。合わせて、個人の目標達成度も高いという結果が出ており、個々人のパフォーマンスへも影響していることがわかります。

さらに、健康に関する研修会が行われている組織とそうでない組織を比較すると、行われている組織の目標達成度が高いです。この領域内で施策を実行することが、企業にとってポジティブであることが伝わるのではないでしょうか。

こういった働き方とヘルスリテラシーの関連性を解き明かす調査は、他企業のDE&I促進にもつながると期待し、今年(2023年)1月から、社内で1,800人規模の組織で実証実験をスタートしました。

ほかにも社内では、生理痛やPMSなどに関するセミナー女性向け・管理職向けにそれぞれ実施しています。管理職向けには、セミナーの後にインクルーシブリーダーシップにつなげるための研修も用意しました。また、知識を得て終わることなく、自ら対処する行動に移してほしいと考え、人数限定ではあるもののオンライン診療や処方の費用負担の制度を導入女性ホルモンバランスプランナーの資格を持つ専門家との1on1・ヘルスコーチも試みました。試運転的に開始した取り組みでしたが、来年度からこれらは全社展開することが決定しております。

小山:DE&I推進の必要性をデータで語るところ、研修をやって終わりではなく行動変容へつなげる取り組みまで実施されているところが、パーソルキャリア社の特色なのではと感じました。インクルーシブリーダーシップ研修は、どのような内容なのでしょうか?

松尾:部下から相談を受ける場面を想定し、対応をケーススタディする研修内容となっています。相談するに至った原因が同じであっても、人によって要望は異なりますよね。たとえば、「生理痛が重たく、仕事がしんどい……」という悩みを抱える人でも、業務を軽くしたいのか、それとも別の改善策を模索しているのか、詳しく聞かないとわかりません。

さまざまなケースを学ぶことで、マニュアルがあるわけではないということを知ることができます。受講した方は、一人一人と対話する必要性に気づかれています。


きっかけは個人の体験。全社での取り組みへと拡大するためのポイント

小山:ランチタイムのセミナーからスタートして、徐々に組織を巻き込む取り組みへと変容していったことがよく分かりました。パーソルキャリア社がFemtech関連の取り組みを始められたきっかけはなんですか?

松尾:実は、きっかけは私個人の体験なんです。私は20年弱、生理痛やPMSに苦しんでいました。1日寝込むことは珍しくありませんでしたし、薬は年々効きづらくなっていきました。同じように悩んでいた友人から「低用量ピルを服用したら、劇的に症状が緩和されたんだ!」という話を聞き、ようやく病院へ行こうと思い立ったんですね。処方後3ヶ月で、私も効果を実感できたんです。プライベートも仕事も前向きに、何事に対してもポジティブな心持ちで過ごせるようになりました。

人それぞれ体のつくりは違いますので、低用量ピルを推奨したいわけではありませんが、「女性が知識を獲得し、対応しようとすることを後押ししたい」と考えたんです。それで、会社として取り組めるのではと思い、経営陣に提案をしました。

小山:松尾さんの勇気ある行動が、組織のインパクトにつながっているんですね。個人の経験・思いが、会社単位の行動へと拡大する工程に興味があるのですが、推進のポイントを教えていただけますか?

松尾:試行錯誤のなかで、推進には3つのポイントがあると見えてきました。

1つ目は、データの活用2つ目は、小さく始めること月経による労働損失は4,911億円というデータがあります。これも注目すべき数字ではありますが、私がここで大切にしてほしいとお伝えしたいのは、会社に関するデータです。

最初、経営陣に提案をしたとき、「こんなに社会的に労働損失がうまれているので、私たちの会社にも必要なはずです!絶対やった方がいいので、全社で取り組みましょう!」と熱弁したんです。しかし、結果は撃沈。そこで開催したのが、先ほどお話ししたランチタイムのセミナーだったんです。関心のある方に集まっていただき、アンケートを実施して、社内のデータを取得しました。「似たようなセミナーは世の中にたくさんあるけど、会社でやってくれたから初めて参加した」、「女性の健康に関する情報が溢れすぎていて、選択できずにいた。会社が主催だから信頼できる情報だと思えた」などの声が集まりました。「求めている人が社内にいるし、会社でやることの意味もある」と確信を得られたことで、もう一度、アンケート結果を伴って経営陣へ再提案し、さらなる活動へとつながっていきました。

小山:我々もFemtechのプログラムを展開するなかで、時に、社会規模の大きな数字よりも、メンバーの声の方が大きなインパクトを持っていると感じることがあります。小さく始めるサイクルのなかにデータ取得を組み込むのは真似したいポイントですね。

推進の3つ目のポイントはなんでしょうか?

松尾:3つ目は、会社の優先順位を意識することです。特に大企業の場合、会社としてさまざまな課題があり、経営戦略上、取り組むべき優先順位がありますよね。そこにミートさせることが重要です。私が最初につまずいたポイントでもありました。

女性の健康問題なので、健康推進の文脈で経営陣に活動の提案を行ったんです。すると、「メンタルヘルスや腰痛、頭痛などに悩む社員の方が割合として多く、深刻度が高いため、女性の健康よりも優先されます」と回答されました。そこで、文脈をダイバーシティ推進に変更したんです。当社は20〜30代の社員が8割を超えています。今後もその層の採用に注力するため、まずはDE&Iの中でも女性の活躍に力を入れることが経営戦略で決まっていました。それを踏まえて、「女性の健康問題に着手し、女性から選ばれる企業に変わっていきましょう」と提案したことで受け入れられたんです。

たとえ、それまで経営陣からノーと言われていた取り組みでも、会社の優先度の高い項目に合わせて必要性を訴えれば、イエスに覆る可能性は高いのではないでしょうか。


Femtechがもたらす企業の変化、組織の変化

小山:なぜFemtechの取り組みが始まったのか、そして具体的な施策についてお聞きしました。続いて、それらによるパーソルキャリア社に訪れた変化について伺いたいです。

松尾:Femtechの取り組みに注目していただいた結果、ダイバーシティ全般のイベントへの登壇依頼が増えたり、関連するアワードを受賞したりと、企業ブランディングにつながっています。増加傾向にあるものの、まだまだ女性の健康問題に本腰を入れて取り組んでいる企業は少ないのが現状です。現時点で先進的に取り組むことで、注目していただけるという副次的なメリットが得られます。

社内での意識の変化も見えてきました。1,200人規模の実証実験を通じて、1億円以上の労働損失がありそうだ、という数字が見えてきたんですね。かなりインパクトがある額ですので、会社として改めてしっかり向き合うべき領域だという意識が高まりました。プレゼンティーイズム(健康の問題を抱えつつも仕事を行っている状態)やアブセンティーイズム(仕事を休業している状態)に対してアプローチすることで損失額を減らしていけると期待しています。

社員にも確実に変化がもたらされました。セミナー後に募集したオンライン診療や処方費用負担など、あっという間に応募枠が埋まったんです。これまでずっと症状を抱えながら働いてきた人たちが行動に移すきっかけとなったんだと受け取っています。これは会社側が後押ししたからこそうまれた行動変容だと思いますし、会社側が用意した制度に関わらず「病院へ行くことにしました」、「診察を受けてみて、病気だったんだと知りました」と自ら動いた方もいらっしゃいます。

こうしたことから、組織風土という観点での変化もあったんです。セミナー後、ある男性社員が声を掛けてくれました。その社員には女性の上司がいて、「当たりが強くなり、イライラしているのが伝わることが何度かある。私は嫌われているんだろうな」と感じていたそうなんです。しかし、セミナーの受講で、その社員は「もしかすると女性特有の症状が原因なのでは……?」と思い至り、勇気を出して上司に話を持ちかけました。それにより、彼の上司が、重いPMSの症状に悩んでいたことを知りました。「会社に指摘されることがいままでなかったので、なんとかうまくやれていると思っていました。迷惑をかけてしまっていたんだなと気づいて、変わろうと決意しました」と、上司は病院へ行って対処することにしたんだそうです。

「ホルモンバランスのせいだとわかって、上司に対しての見え方はがらりと変わりました。なにより、腹を割って話ができたことで、関係性が非常によくなった」と教えてくれました。我々は、女性にだけセミナーを開いているのではなく、管理職や周囲の同僚に理解を促すことも視野にいれて取り組みを実施しています。その結果、組織風土にも好影響を与えている実例が聞こえ始めてきているんです。

小山:性別に関わらず、健康に関する知識を獲得しておくことで、身近な人の症状に気づけたり、対処がスムーズにできたり、原因を自分に置き換えたりせずに済みます。社内の共通言語として、健康に関する知識は全員が深めることが大事だと改めて気づけるエピソードですね。

松尾:知識としてなかったら、特に男性は思い至ることすらないわけですよね。ただただ「よくわからないけど、嫌だな」と負の感情だけが残ってしまいます。そうなってしまう仕組みを理解しておくことで、受け取り方は随分と変わると思うんです。

小山:私共も、研修実施後にはアンケートを実施しています。月経前症候群があることに気づいた、という女性から「不安な気持ちを抱える自分のことを嫌っていました。バイオリズム上、仕方がない変化なんだと知れて、自分を責めなくていいんだと思えるようになりました」と感謝の声をいただいたことがあります。ヘルスリテラシーは、さまざまな方の心の支えになっていますね。

松尾:生理に関しても、人によって症状の差が大きくあります。なので、“同じ女性だから理解できる”というわけでもない事象ですよね。また、自分の症状について事細かく他人に話すような領域でもありません。だからこそ、セミナーで他人の体験談を知り、自分の経験とは違いがあると気づくことも大切な機会なのではないでしょうか。

小山:管理職向けセミナーでの反応はいかがでしたか?

松尾:管理職は男性の方が多い状態なので、「他人事に捉えてしまう人が多いのでは……」と実施前は懸念しておりました。しかし、嬉しいことにそれは杞憂でしたね。「生理はあくまで一つの事象で、他の病気や介護など、話しづらいことを抱えて働いている人がいるかもしれない。その社員のためにどうしたらいいのか、一人一人が活躍できる環境はどうやって作ろうか」と考えてくださる方がものすごくたくさんいました。

生理痛をテーマに開催したセミナーでしたが、個別性の高いさまざまな事情を抱えた社員へまで目を向けるきっかけとなっていたんです。企画した私たちが真に伝えたいことでもありました。それを、管理職社員自らが感じ、言葉として発してくれたのは、驚きすらありましたね。

日本の教育上、生理の話など性差に関する話題は、女性と男性が隔たれて学んできたことです。それにより、男性は“触れちゃいけないことだ”と、女性は“男性には相談しちゃいけないんだ”と、意識づけされてきました。“みんなの体に起きる、普通のことである”と捉え直し、話したいときに相手の性別関係なく相談できる状況へ変えていければいいなと思います。

小山:LYLで、20代〜50代の男性社員に対し「女性の不調について知りたいと思いますか」というアンケートを実施したところ、世代問わず8〜9割の男性が「知りたいと思う」と回答されました。女性活躍を推進する必要性と、マネジメントの観点からそのように答えた方もいたのですが、「仕事で一緒に働くメンバーのためだけでなく、家族や子どものためにも、自分に必要な情報だと感じるので知りたい」とおっしゃる男性が多く、印象的でした。

松尾:女性自ら声をあげていく必要性もやっぱり感じますね。パフォーマンスを発揮するために必要な要求ですから、仕事をする上で声に出すことは当然ではないでしょうか。

小山:お互いに働きやすい環境をつくっていく、その歩み寄りが大事ですよね。我々も研修の際に、不調による労働損失の話題に触れるのですが、これはなにも女性に限った課題ではありません。花粉症や男性更年期でパフォーマンスが下がっている方もいらっしゃるので、女性の健康をテーマとしたセミナーや研修であっても、ターゲットが女性に限定していると思われることなく、全社で健康に目を向けるきっかけとなってほしいです。

松尾:あくまで、女性の健康というのは入口でしかありません。それを機に、いろんな事情を抱えた人・体調不良を抱えた人に目を向け、寄り添い、対話し、パフォーマンスが発揮できる環境づくりへと改善する流れをうんでいきたいですね。それが、インクルージョンにおける大事な観点なのかなと思います。

世の中に、もっと女性の健康問題に取り組む企業が増えて、ムーブメントが起きた先で、働きやすいと感じられる人が増えると思っています。なので、会社の区切りを越えて、一緒になって取り組んでいきたいです。

小山:LYLがご支援していただいてる企業でも横のつながりを大事にしています。ビジネスとなると競争や守秘義務、コンプライアンスの関係で相談できる相手がいない状況は珍しくありませんが、ダイバーシティと健康というテーマは、企業の垣根を越えて、一緒になって取り組みやすい領域です。LYLも、日本全体での推進のお手伝いができれば幸いです。松尾さん、背中を押してくださるメッセージをありがとうございました。




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LYLでは、女性特有の不調に関するリテラシー向上サポートプログラム「QOLI Femtech(きゅおりフェムテック)」を法人向けにご提供しています。
女性活躍の一環として健康を切り口にした対策を検討している企業様はお気軽にご相談ください。


また、ダイバーシティ3.0を掲げ、経営×ダイバーシティを実現する組織コンサルティング・プログラムを展開。個人と組織の両方から、企業課題の解決をサポートしています。D&I推進、女性活躍推進、リーダー育成、ウェルネスのお悩みをお持ちの企業様、ご興味がある企業様はこちらをご覧ください。

https://lyl-coaching.com/

「企業向けではなく、個人向けの研修やセミナーはありますか」という声をいただき、個人向けプログラムの展開を始めています。自己探求と未来に向けたスキル / 実装力を高め、自分軸をデザインするセルフデザインプログラム「L MUSEUM(エルミュージアム)」です。詳しくはこちらをご覧ください。




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