【経営者・人事向け】uchu代表・金藤美樹穂×LYL代表・小山侑子によるセミナー「健康から考えるダイバーシティ」を開催しました!
ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する正しい知識を獲得・理解し、活用する能力のことを指します。学生時代や新入社員のころは授業や研修などでリテラシーを身につける場があったかもしれません。しかし社会人経験を積むにつれて、知識をアップデートする機会は少なくなっているのではないでしょうか。
女性社員の不調に対してどう接してよいかわからない、自分の体調について同僚に話しづらい。このようにヘルスリテラシーが低い、あるいは普段から健康課題について話題に上がらない環境の場合、社員のパフォーマンスの低下、コミュニケーションの不和、離職率の上昇などのリスクが生じる可能性があります。
そこで株式会社LYL(リール)では2023年3月23日に、「健康から考えるダイバーシティ」をテーマにセミナーを実施。株式会社uchu代表取締役であり、不妊治療や妊娠・出産の経験がある金藤 美樹穂(きんとう みきほ)さんをゲストとして迎え、LYL代表の小山と一緒にヘルスリテラシーを向上させる時間になりました。
今回のnoteでは、セミナーの内容をダイジェストでお届けします。健康問題や働き方、組織の中のダイバーシティについて改めて考えるきっかけになれば幸いです。
▼小山が代表を務めるLYL(リール)について
ダイバーシティを推進することで、社員から選ばれる企業に
LYL・小山:「健康から考えるダイバーシティ」ということで、まずはわたしたちLYLが考えるダイバーシティとは何か、前提を共有させてください。
企業の人事担当者やダイバーシティを推進している方とお話ししていると、ダイバーシティと言えば、「女性活躍」「障がい者採用」「外国籍社員採用」などをイメージされている方が多い印象を受けます。
しかし、ダイバーシティというのは特定の方に注目する考え方ではなく、誰しもが多様な人材の中のひとりであるという考え方です。「性別」「健康状態」「働き方」「国籍」「年代」「スキル」「価値観」など、社員それぞれに多様性があります。それらを尊重し、一人ひとりが強みを発揮している状態こそがダイバーシティの本質だと、わたしたちは考えています。
では、社員それぞれのダイバーシティが認められると、組織はどんな状態になるでしょうか。
社員同士が相互理解している状態で対話が弾み、各々がコラボレーションを始めるようになります。トップダウン的な組織ではなく、自律的な組織へ変化していき、次第に組織全体のパフォーマンスが向上する。
この状態をLYLでは「ダイバーシティ3.0」と呼んでいます。これまでに大手飲料メーカー、保険会社などでプログラムを実施し、ダイバーシティ推進の可能性を感じています。
▼ダイバーシティ3.0の詳細はこちら
ダイバーシティが実現された組織になるために、重要なのが相互理解です。一人ひとりの個性が発揮される組織を1本の木にたとえると、葉っぱが個人で、それらをつなぐ幹となるのが相互理解やコミュニケーション。そして樹木全体を育む土壌が、正しい知識や認識(リテラシー)です。
たとえば、社員全員がヘルスリテラシー研修を受けることで、自分や他者の健康に関心が寄せられ行動も改善されます。それがコミュニケーションの増加や相互理解につながり、組織の中でのびのびと働けるようになって、個人の才能が開花するイメージです。
一人ひとりのヘルスリテラシーが向上する「QOLI Femtech(きゅおりフェムテック)」
LYL・小山:わたしが推進しているサービス「QOLI Femtech (きゅおりフェムテック)」では、ステップ1として一人ひとりのヘルスリテラシー向上、ステップ2として相互理解のためのコミュニケーション促進などのサポートを実施しています。
LYL・小山:たとえばステップ1では、医師による研修やリテラシーテストの実施、診察などを行い、女性特有の悩みについて理解を深める時間にしていただきます。
PMSや生理トラブル、更年期障害など、自覚症状がある不調を抱えている方は約65%。その中でも特に生理トラブルに関しては、98%の方が病院での診察が必要なほど重度の自覚症状があるのです。
自分よりつらい人がもっといるはずと思わずに、治療が必要なのかどうか、まずは自己理解を始めることが大切です。もちろん男性も研修に参加可能で、身近な人がつらいときにどんなケアが必要なのかを、「QOLI Femtech」では学ぶことができます。
女性の不調に関する知識+自己理解で改善に向けた行動変容につなげる
uchu・金藤:小山さんからお話があった女性特有のお悩みというのは、仕事やキャリアに大きな影響を及ぼします。生理トラブルやPMSなどの苦痛を緩和させるためには、大きく分けて3つのアプローチが大切だとわたしは考えています。
1つ目は、“女性特有の不調はこういうものだ”というマインドから脱却すること。生理期間中はつらくて当たり前だし、何年も耐えてきた。これからもひたすらガマンするしかない。そう捉えてしまっている方が非常に多くいます。まずは固定観念を取り払って、セルフケアをスタートさせることがヘルスリテラシー向上の第一歩になります。
2つ目が、自分のバイオリズムを把握すること。生理周期や体温測定などすでに習慣になっている方は多いかもしれませんが、過去に止めてしまった方や記録した経験がない方などは、習慣づけることが大切です。それによって心身の変化がいつ起きるのか予測でき、ご自身で早めに対策を打てるようになるかもしれません。
3つ目が、適切な医療サポートを取り入れること。女性特有の悩みには何らかの病気や、不妊リスクが隠れているケースがあります。症状緩和はもちろんですが、ぜひ定期的な医療機関の受診・検査も行って頂きたいです。
ちなみにわたしは20年ほど前からピルを服用しており、仕事のパフォーマンスが改善したり、日々の過ごしやすさの向上につながったりしています。セルフケアだけでなく専門家の力を借りるなど、さまざまな方法を試してみると良いでしょう。
「もっと早くに知っておけば」将来を考えるうえで受けた方が良い検査とは?
uchu・金藤:わたしが考える、知っておいたほうが良い重要なヘルスリテラシーは、不妊のリスクです。一般的に、加齢に伴う妊娠率の低下や流産率の上昇が指摘されますが、その理由のひとつに卵子の老化が挙げられます。
卵子の元となる原始卵胞は、皮膚などと違って、細胞分裂して新しく生まれるということが無い細胞です。そのため、ご自身の年齢と一緒に卵子も歳を重ねます。30歳で排卵した卵子はご自身と同じく30年の時を経た卵子なのです。加齢により卵子の質が老化することは、妊娠率の低下や流産率の上昇に関わっています(*1)。
uchu・金藤:卵子の質は年齢に相関しますが、卵子の数の減少速度は人それぞれです。そこでご自身の卵子について理解を深めるために、AMH検査(*2)を受ける人が増えています。
LYL・小山:昨年わたしも初めてAMH検査を受けて、AMH値が正常の範囲内だが少し多いと診断されました。卵子の数が一定数あることには安心しましたが、数が多ければ良いというわけではないようです。卵巣内に多数の卵胞がたまる多嚢胞性卵巣症候群になっている可能性もあり、排卵異常、不妊の原因にもなるそう。検査を受けて身体の状態を知ることで、自分の将来について考えさせられました。
uchu・金藤:現時点で卵巣内にどれくらい卵子が残っているか、すなわち妊娠可能期間の目安を知ることは、これからのライフ・キャリアを考えるうえで、重要な指標になりますよね。一番避けたいのは「もっと早くに知っておけば、こうならなかったのに」となることで、後悔が生まれてしまうのはご本人やご家族にとってもつらいはずです。
せっかく仕事を頑張りたいと思っていたけど、それが叶わないのは社員と会社の双方にとってもったいないことです。会社としてヘルスリテラシー向上や検査の機会を提供することは、結果的には皆さんのパフォーマンスアップや離職率の低下にも影響すると考えています。
(*1)参考:医療法人浅田レディースクリニック「卵子の老化」
(*2)参考:医療法人浅田レディースクリニック「AMHについて」
職場において、なぜヘルスリテラシーが必要?
uchu・金藤:企業でダイバーシティを実現するうえで、相互理解を促すことは大切です。そして適切なコミュニケーションをするためには、一定以上のリテラシーも必要です。
たとえばAさんが不妊治療について上司に相談する場合、Aさんの今後の働きやすさは、上司の不妊治療に関する知識によって左右される可能性があります。
知識・治療経験がない上司の場合、「不妊治療によってAさんが体調を崩すかも」という発想に至らず、「サポートはそこまで必要ない」「いつもと同じように頼めば、Aさんはスケジュールや業務量も調整してくれるはず」と考えてしまうかもしれません。
しかし不妊治療の内容によっては、週に2、3回の半休や全休が必要になったり、精神的につらくなったりすることもあります。知識があるかないかによって、Aさんが職場で独り苦しんでしまうのか、誰かと一緒に悩めるのかが大きく変わってきます。
uchu・金藤:小山さんの話にもありましたが働きやすい職場を作るために大切なのは、まず前提として個人が皆、ヘルスリテラシーを持っていること。
次に、コミュニケーションをする際に相手の立場を考えられる状態になっている。そして社員全員がリテラシーを持っているという、心理的安全性が生まれている。これらが揃うことで働きやすさが向上し、より相互理解が促進されるはずです。
LYL・小山:たとえば、「QOLI Femtech(きゅおりフェムテック)」ではヘルスリテラシー研修を実施しています。受講者の方にアンケートを取ってみると、研修を受ける前と後で「女性特有の健康課題が、あなたのキャリアに及ぼす影響を解決 / 軽減するために、協力してくれた人がいる」と回答する人は軒並み増えました。
LYL・小山:これは、同じ職場で女性も男性もヘルスリテラシー研修を受けていると認知されていたこと、そして、研修中に「今日学んだことや感じたことを、ぜひ周りの人に話してみてください」とお声がけしており、女性社員の皆さんが自宅や職場で女性特有の悩みについて周囲と話すきっかけになったことが要因として考えられます。
その一方で、約7割の方が「上司の協力が必要である」と考えているのに対し、実際には増えたといってもまだ約2割程度の方しか協力を得られていません。まだまだ理想と実態のギャップが大きいため、リテラシー教育や社員同士の相互理解の場を作ることは、継続していくことが必要だと実感しています。
質疑応答
——セミナーにご参加いただいた方から、質問が届いています。
LYL・小山:わたしは、ダイバーシティ企業に向けた第一歩として、ヘルスリテラシー教育は良いアプローチだと思っています。
実は男性が多い職場でも、女性の不調をテーマにした研修のニーズが多いんです。事前アンケートでも「女性の不調に関して知りたいか」という質問に対して、20〜50代の約9割の男性社員が「知りたい」と回答しており、わたしたちもびっくりしました。
学校教育の場ですら、女性の不調に関しては詳しく学びませんし、おそらく社会人になってもほとんどの方は学ぶ機会がなく、男性自身もプライベートや職場でマネジメントを行う場面で、女性の不調に関する知識不足をどう補うか、困っていたのではないかと考えられます。
たとえ職場で女性活躍が進んでいなかったとしても、まずは男性が研修という場で学び、ご自身で考えてもらう。そして職場やプライベートで学んだことを意識することで、だいぶコミュニケーションが変わってきます。そこから徐々に、ダイバーシティな組織に変わっていくと私達は考えています。
uchu・金藤:本日はヘルスリテラシーとして、妊娠や出産などをメインに触れていましたが、ヘルスリテラシーにはもちろん、更年期なども含まれています。
たとえば35歳で出産すると子どもが15歳のときに、お母さんは50歳で更年期真っただ中。さらには親の介護が重なることも。思春期・更年期・介護が同じ時期に問題としてやってきて、仕事に集中できなくなる方も多いようです。
男性もご自身のお子さんやパートナー、親御さんがそんな状況にあると知っておくことで、家庭内の状況にうまく対応できるでしょう。家庭が不安定だと、少なからず仕事にも影響するので、男性が知識をしっかり持っておくことがとても重要だと思っています。
——ほかにも、参加者の皆さんから感想をいただいています。本日はご参加いただきありがとうございました!
女性特有の不調に関するリテラシー向上サポートプログラムとして、本セミナーでは企業様向けに「QOLI Femtech(きゅおりフェムテック)」を紹介しました。女性の健康問題について対策を検討している企業様はお気軽にご相談ください。
LYLでは、ダイバーシティ3.0を掲げ、男女問わず働く人たちが、自分らしさや家族との時間など何一つ諦めることなく個性を発揮しながら働き続けられるサポートをしています。中でも、 症状や重さが一人ひとり違う女性の不調を理解することは「健康状態の異なる社員の”個性”を力に変える企業」と考え、個人のヘルスリテラシー・生産性の向上、男女問わず働きやすい職場環境の醸成をサポートしています。ご興味のある方は下記をご覧ください。
また参加者の方から「企業向けではなく、個人向けの研修やセミナーはありますか」という質問をいただきましたが、個人の方に向けたプログラムもございます。LYLでは、自己探求と未来に向けたスキル / 実装力を高め、自分軸をデザインするセルフデザインプログラム「L MUSEUM(エルミュージアム)」をリリースしました。詳しくはこちらをご覧ください。