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ほどけるプリン ~ショートショート~

 パチパチパチ……。PCのキーボードが鳴る音が響く。音を立ててキーボードを押し込むと、なにかをしている実感が出て良い。それに今このオフィスには誰もいないのだから、騒音だとか気にする必要はない。いっそ歌でも歌ってやろうか。
 iPhoneに手を伸ばし、お気に入りの曲を流そうとして気づいた。

――新着メッセージ1件

 FaceIDで開く画面は、すぐにそのメッセージの内容を表示する。

――最近どう?美味しいプリンがあるんやけど、久々に会わへん?

「ありゃ」
 思わず漏れた声は、ひとりきりのオフィスの絨毯に吸い込まれて消えた。一旦iPhoneをデスクに戻し、ふーっと伸びをする。進行中の作業への集中は途絶えた。脳内に浮かぶのは彼。最後に会ったのは3ヶ月ほど前だろうか。この歳になると日々なんてあっという間に過ぎるから、もうそれすら定かでないけれど。
 端正な顔立ち。くっきりぱっちりした目をいたずらっ子のように輝かせて、いつも冗談を言っていた。「このプリン食べたい」と言うと買ってきてくれて、そこからはなぜかプリンばかり買ってくるようになった。それが嬉しくて毎度毎度飽きもせず喜んでいた。大好物はプリン、憚ることなくそう公言していた。

 そうか、彼の中ではまだ、大好物はプリン、なんだな。

 彼のしてくれることが嬉しくて、彼が思う自分自身を肯定したくて。そうやってキラキラと毎日を過ごしていた。彼に会いたくて、近付きたくて、特別になりたくて、視界がキラキラと輝いていた。



 メッセージが来ていたのは6分前。
 仕事はまだ、残っている。けれど集中力は既に切れた。
 さあ、どう返事をしようか。


                    <To Be Continue.>


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この後主人公はどうするんでしょうか。
作者も分からないので、好きに想像いただければと思います。
もしかしたら続き書くかも。
 

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