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【あとがき】無花果の愛

 初めて5000字を超える小説を掲載した。いつも投稿している『ショートショート』のジャンルは800~4000字のものを言うらしい。なので今回は『短編小説』とくくることに。
 せっかくなので、あとがきを書いてみようと思い立った。ネタバレというか解説を含むので、本編未読の方はどうか本編を先に読んでいただきたいです。

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 愛の形ってなんだろう、そう考えたのがはじまりだった。かつては見合い結婚の時代であったし近年は恋愛結婚の時代であるが、その様相もどうやら変化しつつあるらしい。スピード婚という言葉は以前から聞いていたが、交際0日婚なんて言葉も聞くようになった。

 世界全体がもうだれもが感じ取れるくらいの変化を迎えている。巷では風の時代の到来、という言葉もよく耳にするようになった。そこで少し調べてみると、風の時代では恋愛や家庭ももっと自由な形式になっていくらしい。同性婚だけでなく、事実婚や別居婚やポリアモリー(同意のもとの多重恋愛)も認知されていくのだとか。自由と言えば自由だろうが、選択肢が増える中で一致する相手を見つけるというのもかなり大変そうだなあ、というのが正直な感想であった。
 
 そんな中、本作では所謂セフレからの脱却を試みた女性に焦点を当てた。結末がどうなったかは読んでいただいた通りなわけだが、これは型に捉われない在り方を描きたかった結果である。個人的に、恋人期間というのは花の期間だと思っているのだが、彼らは恋をしていない。少なくとも、世間一般的に見ての恋人同士らしいことはしていない。きっと、相手がいなくとも生きていける同士である。甘酸っぱい想い出の匂いに相手は存在しないし、心が千切れる程懐かしくなって戻りたくなる中に相手はいないだろう。そこから題に『無花果』を入れた。
 あともうひとつ、描きたかったものがある。恋ではない盲目、だ。冒頭に登場する男性を、敢えて『合うかもしれない人』にした。そして郁也との対比を描いて、主人公の盲目を表現することにした(できていただろうか。不安である)。「恋は盲目」と世間では言う。されども、「盲目は恋」に限らないのだ。あらゆる情は盲目となり得る。
 さて、書き終えてみて、主人公への反応はまちまちであろうな、と予想している。よかったね、かもしれないし、この女馬鹿じゃないの、かもしれない。ちなみに作者はどっちも思っている。もちろん作者の思い及ばないところで、他にもたくさんご意見や感想はあるだろう。色々な反応を呼び起こす物語を書きたいから、そうであってほしいと願ってもいる。

 男性目線にすると話は変わるのだろうな、とも思う。郁也でもいい。裕大(名前の登場シーンがあまりに少なかった)でもいい。もしくは結末のその先を考えてみれば。
 けれど、それはまた、別の物語。いつかまた、別のときに話すとしよう。(この言い回しが通じる方は心の友です。よろしくお願いいたします)


 さて、あとがきだけで1000文字に到達しそうだ。あ、到達してたわ。
 新たな時代に、新たな物語がたくさん生まれることを願って。
 拝読、ありがとうございました。


  ――利瑚 莉朱(Lyco Ris)

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