石川貴也

創業118年の側島製罐の代表取締役六代目37歳です。老舗中小企業で「社長」という存在を…

石川貴也

創業118年の側島製罐の代表取締役六代目37歳です。老舗中小企業で「社長」という存在を無くして、みんなで経営する自律分散型の組織づくりを目指しています。日本政策金融公庫→内閣官房→缶屋

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  • 組織づくりについて

    側島製罐という老舗中小企業で、どうやって組織が変わっているかについての記録。

  • 挑戦したことについて

    事業で挑戦したことについての記事をまとめてます。採用、広報、新規事業、理念策定、などなど。

  • 旅について

    「何のために旅をするのか」という永遠の命題に対する自分なりに思うところをつらつらと。

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    仕事とは、働くとは、生きるとは、自分なりに思うところについて言語化してみてます。

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100年以上経営理念が存在しなかった中小企業で社員と一緒にイチからMVVを作った話

今回はMVV策定についての話です。 弊社では今回、約1年という長い時間をかけてMission Vision Value(以下「MVV」という)を策定しました。最近ではパーパスだったりフィロソフィーだったり志だったり、会社によって色んな言い方があると思いますが、つまりは経営理念や行動指針に該当するものです。 今回はMVVをなぜ策定しようと思ったか、そしてどうやって策定したか、について書いていきたいと思います。手前味噌ですが、弊社のメンバーが本気で頑張ってくれたおかげで、可能

    • 「掃除は始業前に済ませる」という同調圧力を正して変わったこと

      ヘッダーのような当番表、誰しも一度は見たことがあるのではないでしょうか。これは以前、側島製罐で使っていた事務所の掃除の当番表です。くるくる回して当番変えるやつですね。 側島製罐では以前まで、「掃除は始業前に終わらせるもの」という暗黙の了解がありました。少なくとも始業の10分前くらいには机を拭いたりごみを捨てたりし始めて、朝礼が始まるまでには掃除を終わらせていないといけない、という仕組みですね。昔からやっているということで何となくそのまま続けていましたが、「これはサビ残の無償

      • 経営者が指示命令や評価という特権を手放した会社では一体何が生まれるのか

        自分が代表取締役を務める側島製罐では2020年の事業承継開始以来、組織のあり方が大きく変わってきました。古色蒼然とした老舗中小企業をみんなで立て直しをした結果、2021年に経営理念(MVV=Mission,Vision,Values)を策定、2023年に自己申告型報酬制度を導入、「社長」という役職も会社から無くすことになり、現在では従前のようなトップダウン経営から転換して、自律分散型組織のような状態になっています。 この過程で、指示命令・マネジメント・評価・給与決定など、自

        • 薄利多売の世界で中小企業が価格競争力を手放した先に手に入れられるもの

          チョコレートを買いに来て、フェアトレードを謳っているものとそうでないものがあったとしたら、多少割高でもフェアトレードのものを選ぶことはあると思います。規格外の果物や野菜等がフードロスの名目で売っていたら思わず手が伸びてしまうんじゃないでしょうか。こういうのを倫理的(エシカル)消費と呼びますよね。 では、自分の会社で材料や副資材を調達するときはどうでしょうか。協力会社に外注するときはいかがでしょう。調達する材料がエコかどうか、発注先の会社の事業が公明正大でフェアかどうか、果た

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          ”中小企業型ティール組織”という新しい未来への挑戦

          側島製罐では2021年に全員でMVVを策定したのち、2023年からは「みんなで経営 自己申告型報酬制度」と銘打った制度を導入しました。今年導入したばかりなので実際の成果などはこれからでほぼ社会実験みたいなものですが、内容としては過去の実績を評価して給与額を決めるというやり方をやめて、各自の自律性や発展性を信じて未来に先行投資する形で給与を先払いするというやり方で、正に社運を賭けた挑戦です。この制度を導入するまでに三年間も要してしまいましたが、考えに考え抜いた末にこの制度に辿り

          ”中小企業型ティール組織”という新しい未来への挑戦

          従業員満足度調査が孕む分断のリスク

          「従業員満足度調査」みたいなのって結構危険なんじゃないかなと思っていて。 自分がアンケートに答えた時って”権利意識”みたいなものが無意識に生まれてしまってないかなあ。そして、その後に自分の意見が反映されないと、あんなにアンケートに一生懸命書いたのにと残念に感じてしまったりしないか。「言ったのに何も変わらなかった」「この会社は動いてくれない」みたいな愚痴を溢したくなる気持ちになるのもそりゃ当然だと思う。 でも、そもそもそうやって誰かが何かを一方的に評価するような仕組みって本当

          従業員満足度調査が孕む分断のリスク

          信頼関係は有償サンプルからはじまる

          サンプル品を有償化したって話なのだけどね。うちの会社は昔から下請けのお仕事をたくさん頂いてた歴史があり、とにかくお客様のご要望の通りに最大限お応えするのがうちらしい営業活動だった。うちの会社で大小・丸四角、更には普通はあまりやらない溶接タイプの缶まで幅広く作れる技術と設備があるのは、そういう「御用聞き」に真摯に取り組んできた結果だと思っている。 だけど、その御用聞きも行き過ぎていた部分があって、例えば缶のサンプル送付がその一つだった。製品をピッキングして、段ボールに詰めて、

          信頼関係は有償サンプルからはじまる

          世界の果てまで行っても本当の自分なんて見つからない

          昔、チリの南端から二週間の旅で150万円もかけて南極に行ったことがあるのだけどね。平均的で凡庸な自分が昔から嫌で嫌でしょうがなかった僕は、いつも自分の存在意義を証明するような誇りのような何かが欲しいと思っていて、その極めつけが南極に行くことだった。そんな稀少なマイルストーンがあればきっと自分も一目置かれる一角の人物になれるんじゃないかと信じて止まなかった、って感じで。だけど、現実は全然違った。「南極に行ったことがある」と自慢したところで「すごいね」と言われる程度で、自分自身も

          世界の果てまで行っても本当の自分なんて見つからない

          「好きな人に幸せになってほしい」という原点に軸足を置くこと

          「人を好きになって、街を好きになって、その人たちのために何かしたいという気持ちこそが、営業担当者としての矜持だなと思いました」 これは自分が10年前転勤するときにSNSへ投稿してた言葉のコピペで、すごく達観して偉そうな物言いにも見えるのだけど、今の自分にも強く根付いて大事にしている考え方だなあと改めて思う。 金融営業をやり始めたばかりの僕は、とにかく数字に追われてばかりで、目の前のお客さんのこともロクによく見ようともせず「借りてくれ借りてくれ」と言って客先をまわる日々

          「好きな人に幸せになってほしい」という原点に軸足を置くこと

          人の生き死にに寄り添えない会社なんてなくなってしまった方が良い

          数年前、僕が家業に入ったときは本当に雰囲気が悪かった。例えば、僕は入社して数か月後に祖母が亡くなった時、当時はとても休めるような雰囲気もなくて悲しみに暮れる間もなく葬式だけ出てすぐにまた出社したのだけど、ご愁傷様とか、大変だったねとか、そういう労りの言葉をかけられることはほとんどなかったし、それどころか「ゆっくり休めただろう。」と吐き捨てるように言われる事まであった。いくら会社の雰囲気が悪いと言っても限界があるし、こんな人の尊厳を蔑ろにされるような場所でまともに働けるわけがな

          人の生き死にに寄り添えない会社なんてなくなってしまった方が良い

          「『案件処理』って表現おかしくない?」

          という問いかけをされたことがある。時は2013年、浜松は肴町の居酒屋で先輩と飲んでいた時のことだ。当時の僕は金融マン二年目で、融資第一課という部署で窓口申込の審査担当をしていた。自分がいた浜松支店では各担当が月に30件程度の審査をして、融資の可否について稟議にあげるというのが日常業務になっていた。内容にもよるが30件というとなかなか負担が大きく、毎日相当なスピードで対応していないとあっという間に案件が溜まっていってしまう。案件が溜まれば審査スピードが落ちてクレームにも繋がりや

          「『案件処理』って表現おかしくない?」

          電話の早取りが職業人生をつくるという教え

          僕は社会人初期の頃に、代表電話の対応とかコピー用紙の補充とか、誰も担当が決まってない中間フライみたいな仕事を進んでやるように教えられてきた。 金融機関の代表電話は一日に何百件も鳴ることがある。すぐに担当に代われる内容のものもあれば、申込書や創業計画書の書き方とか30分以上かかるヘビーなのもある。なのでみんな通常業務に支障が出るから電話には出たがらなくて、支店でもよく「電話の早取励行」みたいなお説教が降ってきてた。 そんな背景も知らないビジネス赤ちゃんだった僕に、当時の僕の

          電話の早取りが職業人生をつくるという教え

          JTCのカルチャーを変えた役員の教え

          前職の日本政策金融公庫で初めて本店に配属されたとき、めちゃくちゃ緊張してたんですよね。半沢直樹よろしく、金融機関の本店って魑魅魍魎が集う伏魔殿みたいなところで、他部署の上司に対して軽々しく話しかけられるような雰囲気もない感じで、本店に配属されてすぐの時はそのピリピリした空気に圧倒されてました。周りの人がみんな雲上人のように感じて自分なんかがここにいていいのかなって思いながら委縮して過ごしてました。 で、そんなときに部門全体の100人くらいでの歓迎会があったんですよ。席につい

          JTCのカルチャーを変えた役員の教え

          代表取締役に就任した僕がみんなと交わした一つの約束

          先日、側島製罐株式会社の代表取締役に就任しました。3月初旬に「もう代表という肩の荷を下ろしたい」と先代からの強い要望もあり、父親が70歳になることや自分が家業に入って3年経過したことなどを鑑みて、このタイミングで自分が代表に就任することになりました。先代は取締役会長となり、ボードメンバーとしては残りつつ代表ではなくなります。 せっかく代表就任なので決意表明でも書くかなと思ったのですが、そちらは上記の通りプレスリリースを出してるので割愛して、今回は代表就任に際して、会社のみん

          代表取締役に就任した僕がみんなと交わした一つの約束

          経営者だって不完全な人間でいいじゃない。

          自分事ですが、家業に入ってもうすぐ3年が経ちます。元々はただのサラリーマンでマネージャー職すらやったことない自分が実経者として3年間旗振りをしてきたわけなのですが、振り返ってみると日々ぶつかり稽古で経営者ごっこ的になってしまっていた場面がたくさんありました。フラットな組織にしたいとぼんやりとした理想を持ちながらも、実際にやってきたことは完璧を求めた権力行使による命令だったりしたこともあり、スタッフのみんなを混乱させてしまったことも多かったなと反省するわけなのですが、とはいえ3

          経営者だって不完全な人間でいいじゃない。

          「自分の子供がもしセクシャルマイノリティだったら、正直嫌だな」

          恥ずかしながらこれは8年くらい前に、僕の口から出た言葉です。 最近のニュースで政治に関わる方々がセクシャルマイノリティに対して「気持ち悪い」とか「近所にいてほしくない」とかって発言を拾われて炎上的なニュースになってるわけなのですが、自分も7,8年前までは同じような感性を持っていたような気がします。多分、最近のニュースで見え隠れする人の本音みたいなのに近いものだったと思うんですよね。リベラルぶって澄ましたような顔をしながら、実は腹の底では”普通”という感覚を持ち続けて理解には

          「自分の子供がもしセクシャルマイノリティだったら、正直嫌だな」