マガジンのカバー画像

組織づくりについて

17
側島製罐という老舗中小企業で、どうやって組織が変わっているかについての記録。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

100年以上経営理念が存在しなかった中小企業で社員と一緒にイチからMVVを作った話

今回はMVV策定についての話です。 弊社では今回、約1年という長い時間をかけてMission Vision Value(以下「MVV」という)を策定しました。最近ではパーパスだったりフィロソフィーだったり志だったり、会社によって色んな言い方があると思いますが、つまりは経営理念や行動指針に該当するものです。 今回はMVVをなぜ策定しようと思ったか、そしてどうやって策定したか、について書いていきたいと思います。手前味噌ですが、弊社のメンバーが本気で頑張ってくれたおかげで、可能

「掃除は始業前に済ませる」という同調圧力を正して変わったこと

ヘッダーのような当番表、誰しも一度は見たことがあるのではないでしょうか。これは以前、側島製罐で使っていた事務所の掃除の当番表です。くるくる回して当番変えるやつですね。 側島製罐では以前まで、「掃除は始業前に終わらせるもの」という暗黙の了解がありました。少なくとも始業の10分前くらいには机を拭いたりごみを捨てたりし始めて、朝礼が始まるまでには掃除を終わらせていないといけない、という仕組みですね。昔からやっているということで何となくそのまま続けていましたが、「これはサビ残の無償

経営者が指示命令や評価という特権を手放した会社では一体何が生まれるのか

自分が代表取締役を務める側島製罐では2020年の事業承継開始以来、組織のあり方が大きく変わってきました。古色蒼然とした老舗中小企業をみんなで立て直しをした結果、2021年に経営理念(MVV=Mission,Vision,Values)を策定、2023年に自己申告型報酬制度を導入、「社長」という役職も会社から無くすことになり、現在では従前のようなトップダウン経営から転換して、自律分散型組織のような状態になっています。 この過程で、指示命令・マネジメント・評価・給与決定など、自

”中小企業型ティール組織”という新しい未来への挑戦

側島製罐では2021年に全員でMVVを策定したのち、2023年からは「みんなで経営 自己申告型報酬制度」と銘打った制度を導入しました。今年導入したばかりなので実際の成果などはこれからでほぼ社会実験みたいなものですが、内容としては過去の実績を評価して給与額を決めるというやり方をやめて、各自の自律性や発展性を信じて未来に先行投資する形で給与を先払いするというやり方で、正に社運を賭けた挑戦です。この制度を導入するまでに三年間も要してしまいましたが、考えに考え抜いた末にこの制度に辿り

従業員満足度調査が孕む分断のリスク

「従業員満足度調査」みたいなのって結構危険なんじゃないかなと思っていて。 自分がアンケートに答えた時って”権利意識”みたいなものが無意識に生まれてしまってないかなあ。そして、その後に自分の意見が反映されないと、あんなにアンケートに一生懸命書いたのにと残念に感じてしまったりしないか。「言ったのに何も変わらなかった」「この会社は動いてくれない」みたいな愚痴を溢したくなる気持ちになるのもそりゃ当然だと思う。 でも、そもそもそうやって誰かが何かを一方的に評価するような仕組みって本当

信頼関係は有償サンプルからはじまる

サンプル品を有償化したって話なのだけどね。うちの会社は昔から下請けのお仕事をたくさん頂いてた歴史があり、とにかくお客様のご要望の通りに最大限お応えするのがうちらしい営業活動だった。うちの会社で大小・丸四角、更には普通はあまりやらない溶接タイプの缶まで幅広く作れる技術と設備があるのは、そういう「御用聞き」に真摯に取り組んできた結果だと思っている。 だけど、その御用聞きも行き過ぎていた部分があって、例えば缶のサンプル送付がその一つだった。製品をピッキングして、段ボールに詰めて、

代表取締役に就任した僕がみんなと交わした一つの約束

先日、側島製罐株式会社の代表取締役に就任しました。3月初旬に「もう代表という肩の荷を下ろしたい」と先代からの強い要望もあり、父親が70歳になることや自分が家業に入って3年経過したことなどを鑑みて、このタイミングで自分が代表に就任することになりました。先代は取締役会長となり、ボードメンバーとしては残りつつ代表ではなくなります。 せっかく代表就任なので決意表明でも書くかなと思ったのですが、そちらは上記の通りプレスリリースを出してるので割愛して、今回は代表就任に際して、会社のみん

経営者だって不完全な人間でいいじゃない。

自分事ですが、家業に入ってもうすぐ3年が経ちます。元々はただのサラリーマンでマネージャー職すらやったことない自分が実経者として3年間旗振りをしてきたわけなのですが、振り返ってみると日々ぶつかり稽古で経営者ごっこ的になってしまっていた場面がたくさんありました。フラットな組織にしたいとぼんやりとした理想を持ちながらも、実際にやってきたことは完璧を求めた権力行使による命令だったりしたこともあり、スタッフのみんなを混乱させてしまったことも多かったなと反省するわけなのですが、とはいえ3

任せるのは仕事、託すのは夢。

「自分の居場所を守るために自分の仕事を手放さない」 という属人的で独りよがりで非合理的なやり方は市井でも蛇蝎のごとく嫌われてるわけですが、いざ自分が誰かに何かを任せるとなったときにものすごい苦悩と葛藤がありました。今回は、そもそもなぜそのような感情が湧いてしまうのか、どのようにその気持ちを消化してきたか、というところについて書いていきたいと思います。 新しい事業には新しい人が必要になる2020年4月に自分が側島製罐に入社してからはこれまでやったことのない新しいことに挑戦し

中小企業の革命は言葉からはじまる

2022年最後の記事です。 仰々しく抽象的なタイトルで恐縮ですが今回は”言葉”についてです。僕が2020年4月に側島製罐に入社してから3年弱を振り返ってみて、大きく変わってきた弊社で最も重要なファクターだったのは言葉だったなと考えています。「組織改革」みたいな話になると行動規範だとかマネジメントだとかそういう冷えたワードが先行しがちですが、言葉という日常的でありながら人と人が繋がるうえで不可欠なツールを疑ったり見直したりしながら血を通わせていって、日々のコミュニケーションを大

パーパスが人の思想を変えるという嘘

パーパス経営とかデザイン経営とかって言葉が躍って自分たちの事業の意義を言語化して再定義する流れがあり、自分たちも例に漏れず会社で理念をイチから作ったりもしたわけなのですが、実際に理念をイチからつくってみて、それを掲げて、カルチャーに変えていって、という一連の体験を経て気付いたところがあるので改めてまとめてみようと思います。 もともと、自分自身は会社の理念を作ったら全員がその理念に共感をして、その理念に基づいて行動するようになるものなのだと思っていました。実際に、弊社ではMi

法律以上の正しさを追い求める勇気

「出張時の移動時間を残業時間としてカウントするかどうか」 約1年前、この点について会社のスタッフとぶつかって、運用を改めたことがあります。今思い返してみると、会社のスタッフのための環境整備とその認識が不十分で、法律を盾にミニマムなルール設計をしがちだった自分の大反省なのですが、会社のルールをつくるうえで非常に重要なポイントだと気付かされた事案だったので、振り返りながら法律以上の正しさを追求する意義について書いていきたいと思います。 世の中の”常識”を基にしたルール設計

「働く幸せとは何か」という問い

今回は2021年の総括記事です。 2021年もあっという間に終わってしまいました。予定では2年目にはインフラ整備を完全に終わらせて3年目はいよいよ代表者交代に向けての準備期間と思っていましたが、一朝一夕にはいかずというところです。 とはいえ、今年も去年以上に挑戦を続けてきました。艱難辛苦の日々も振り返ってみれば良い思い出で、会社も自分も一年前と比べたら大きく変わることができたと思っています。 今回は総括記事としつつも、タイトルの通り「幸せに働くとはどういうことなのか」と

優越的地位を手放すことがパートナーとなるための第一歩

自分は会社の意思決定者という立場であり、会社の経営を見ている立場なのですが、このポジションについてからというもののずっとモヤモヤし続けているのがこの”優越的地位”というものです。世の中的には「優越的地位の濫用」という独禁法などの文脈で出てくるくらいの聞きなれない言葉かもしれませんが、結論的にはこの優越的地位というものを辟易していて、いつも何とかして自分から引き剥がそうと試みています。結論的には、この優越的地位を手放すことが、人間らしく楽しく働いていく上での第一歩だなと思ってい