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【逗子日記】 20231114

 この土日は寒かった。海が、人で溢れたバカンスの様を見送ってから逗子を囲む山々の木枯らしを見るまで、僕にとっても長い長い残暑と不安定な気候を感じる日々だった。さらに大きな季節の変化に思いを馳せれば、コロナ禍を乗り越え、四年ぶりに開催された逗子海岸花火大会をはじまりに、三年に一度のトリエンナーレとして例年より大きく開催された逗子アートフェスティバルをおわりに、それはまた、弾ける低音をまとうような高揚感のあるイベントがおわり、クリスマス、年末年始にかけての、このたった1ヶ月程度の短い期間は、ヴァイオリンとピアノのデュオで奏でるクラシックの小品のように可愛らしく、そして少しずつ浮かれていく人々の心は、街のあわい光を見上げ、ふと、側溝に膨らむ落ち葉なんかに寂しく希望を抱くだろう。そこには、もう既に感じようとする春の兆しの先取りではなく、来年もまた、もしかしたら無事に春がやってきてくれるのかもしれないという、祈りを隠すための静かな酔いが街中に漂う。
 今日、僕の心はそんな街で、薄着で手を繋ぐ人々や大きなコートを着る人々にぼんやりと寄り添っていたように思える。
 12月から2月にかけての逗子海岸。誰もいない夜中の砂浜には凍えるような風が吹いている。楽しみだ。僕も誰もが海に行かない日があれば、そこには最も自由な風と波との演奏が広がっている。

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