【建築・インテリアを考える前に読むブログ】第11回 ビジネスにおけるデザイン

前回書いた<クライアントから見る良いデザイナーとは>では良いデザイナーはクライアントの思いとデザインの折り合いをうまくつけられる人ということを書きました。

今回はその折り合いをつけていく中で考えることについて書いていきます。


案件の多くはビジネス目的です。
その場合、デザイナーではあっても当然ビジネスを踏まえたデザインを提供する
必要があります。

例えば前回例えで出した「飲食店をオープンしたいです。」
という依頼に対してデザイナーとしてどこまで踏み込んだことを考えるのか。

デザイナーが単に格好良いデザインだけを考えれば良いわけではなく、
予算も含めてクライアントがビジネスをする上で効果的で役に立つものを提供する
ことがデザインの前提であるということです。

ではコンサルタントのように「ここの導線をこう。ここの回転率がどう。」
とまで言い出すと、それはクライアントのやりたいことに対して
自分達のデザインが押し付けになってしまうかも知れません。

効果的で役に立つものをどこまで考えてデザインするのかが
ビジネスシーンのデザインに重要な要素です。

私の場合、まずひと通りこの飲食店の経営内容についてお聞きします。

平均客単価や想定されている顧客層はどのような方なのか、スタッフは何人で稼働し、売上目標はいくらなのか、利回りはどのくらいで考えておられるのかなど。

経営される目的や今後の展開についてもお聞きします。
多店舗展開を目指されているののか否か。
ビジネスですから利益を出すのは当然なのですが、利益第一主義なのかそうではないのか。

これらを伺いながらクライアントが描いているビジョンを掴んでいきます。

なぜここまでお聞きするかというと、コンサルティングをするためではなく、
例えばサービスや回転率・客単価はレイアウトやデザインにも影響するからです。
ソファー席一つとってもクッション付きかどうかで滞在時間変わってきます。

マーケティングの領域になるかもしれませんが、
回転率やリピート率を考える上での座席レイアウトやデザインについては、
例えばスターバックスコーヒーはソファー席やハイカウンターなど
色々なタイプの席が用意されている店舗が多いです。

色々な席をレイアウトすることで、
立ち寄ったお客さんの状況や人数に応じて相応しい席を提供することが出来るのです。
つまりどんなシーンでも使ってもらえる店としての立ち位置を確立しているので
出店が絶えず、これだけの人気をキープ出来ているのだと思います。
(弛まぬブランディング戦略の継続も言わずもがなですが)

客席数だけを稼ごうと思えば理路整然と並べれば良いのですが、
スターバックスコーヒーはリピート率を重視している結果、そのようなレイアウトになっているのだと推察します。

回転率が必要なければ居心地の良い居住性の高い席を目指しますが、
牛丼チェーン店のような回転率重視の店舗であれば、
座席の造りを簡素化し、居心地を悪くすることで滞在時間の短縮を図ります。

何をどこまで見せたいのかも聞きます。
スタッフが働くところを見えるようにするのか。
例えばラーメン屋で麺を捏ねてるところを
ガラス張りにして見せているところがありますが、
その様に調理しているところを見せるか見せないか。

また、食材ストックのスペースはどれ位必要かで
厨房面積が変わり、空間構成も変わってきます。

その上でターゲット層によって当然見た目(デザイン)が変わってきます。

それら全部を含めたものをデザインとして起こしています。
ですので最初の要件だけを聞いてファーストインプレッションで
「最高のデザインです、どうですか格好いいでしょう、イケてるでしょ」
とはなりません。

初めにあらゆる情報を拾い上げ、それを自分の中で咀嚼してデザインを起こします。

クライアントがビジネスをする上で効果的で役に立つものを提供する為に、
店舗側の仕掛けとしてクライアントが考えていらっしゃる事も含めて、
それら全てを理解し、考え、我々はデザインをしています。


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