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S.Valentino a Venezia

サンヴァレンティーノ ア ヴェネーツィア
「サン・ヴァレンティーノをヴェネツィアで」
という意味です。

イタリアでも2月14日はバレンタインデー。
聖人の名前、サン(ト)・ヴァレンティーノの日で、
『Il Giorno degli Innamorati』
イル ジョルノ デッリィンナモラーティ
『恋する者たちの日』
と呼ばれている。

つまりその日の主役は
恋人(カップル)たち ということで

パートナー同士で特別なデートをしたり、
逆に家でゆっくり特別な過ごし方をしたり
なにか記念になるようなことや、
お互いに贈り物を贈り合ったりする。

パートナーのいない人たち同士で何かする、ということは特になく
そういう人たちにとっては、普通の一日。

いつも同じ面子で集まる仲間うち
「今日はサン・ヴァレンティーノだから、あいつは来れないよ」
と、恋人がいる人とはアポを取るのが難しい、という程度。

でも付き合いの長い恋人同士やご夫婦だと
「わざわざ何かをする、ってことはもうやらない」というカップルもいました。

私の周りのイタリア人カップルたちは
30代くらいで、仕事を持っていて、という人たちが多かったんだけど、わりとこの日を大切にしていた印象がある。

仕事の後
着替えておしゃれしてから、ちょっと良いお店に、二人でチェーナ(cena 夕食)に出掛けたり

ちょっとしたものから、お値段の張る豪華なものまで(人によって様々)、二人でプレゼントを交換したりしてた。

誕生日以外の「何かを贈る良い機会の日」でもあるみたい。

休日を合わせてとったり、日帰りで、
近場ちかばへ小旅行するカップルも居て

サン・ヴァレンティーノの後で友達たちが集まった時には、
独り身もカップルも関係なく
その日は何をした、どう過ごした、
何があったか、どんな日だったか…
それぞれ質問したり話したり、
お互いの大報告大会(笑)になる。

私の想い出のサン・ヴァレンティーノは、ヴェネツィアで過ごした『恋する者たちの日』。

ヴェネツィアでは毎年、2月~3月の時期には『謝肉祭 しゃにくさいCarnevaleカルネヴァーレ』が開かれるのが恒例だけど
その年はちょうど、カルネヴァーレの開始直前にサン・ヴァレンティーノが重なっていた。

ところでなぜ毎年カルネヴァーレの開始日が変わるのかというと

先ずこれは、キリスト教のお祭りで、

キリストが十字架にかけられ
亡くなって三日後に蘇ったことを祝う《復活祭》(イタリア語でパスクア)が、
春分の日を過ぎた最初の満月のあとの日曜日で

謝肉祭は、その復活祭まえの節食期間(肉食を断つ46日間)の「前に」行われるものだから、だそうです。
(私もよくわからない★)

とりあえずは
「そっかー、毎年時期が違うんだね」と思っておいて

ヴェネツィアのカーニバルの公式HPで、その年の日にちを確認できます。(英語版)

https://www.carnevale.venezia.it/en/

今年は 2/4~2/21 みたい。
(今からでも行こうと思えば行けますね♪)

ここで観光に行かれる方に重要情報。

ヴェネツィアでは、カルネヴァーレ開始から期間中は、ホテル代が3倍くらい上がってしまうのだけど(値上率はホテルによって異なる)
公式開始日までは普通の料金で泊まれるので、日程を組む時の参考にして下さいね。

その時の私たちはタイミングに恵まれて、ヴェネツィアでサン・ヴァレンティーノを過ごしたあと
カルネヴァーレ公式オープニングの朝にチェックアウトする、という日程だったので、通常料金で済んだけど

たとえば
フィレンツェからヴェネツィアまでは、ユーロスター(イタリア語発音ではエウロスタール 最後は軽い巻き舌で小さく「ル」)
でたしか2時間半くらいだから、
宿代が恐ろしく高くなるうえに
確保するのも難しいこのカルネヴァーレの時期は
別の街に泊まって、
ヴェネツィアへ日帰りで行くというのも手。
(カルネヴァーレ開催期間って、日本ーヨーロッパ間のエアチケット自体は安い時期に重なること多し)

私は初めて行った時からヴェネツィアに恋してしまったので、イタリアに住んでいた間、何度もこの街を訪れた。

冬の、カルネヴァーレの時期のヴェネツィアがいちばん好きで
夏は、朝はまだ爽やかで気持ちのいい散歩ができる日もあるけど…
正直なところ、夏のヴェネツィアはあまりおすすめしない。

フィレンツェ同様、人は一年中すごく多い街だけど、夏は特に多いし、
だいいち情緒がないし…

ヴェネツィアという、
色味のくすんだ路地裏と
堂々として壮麗な運河沿いのパラッツォ(建物)と、
たゆたうなだらかな水で街が構成されている
『ヴェネツィア共和国の残照ざんしょう』には、
夏の、まるで蛍光灯のような、ただ明るいだけの強い光を当てても、
私の目にはその美しさは逆に隠されてしまい、
魅力的には感じられなかったので…

陰影いんえいの似合う街というか、
うっすらと白くかかる霧も
ヴェネツィアには似合うと思うし
パリみたいに、この街にはどちらかというと、曇り空の方が似合う気がする。

私としては、特に夕暮れ時のヴェネツィアが
たまらなく魅力的なのだけど、

早朝の空気のなか、まだ人が歩いていない
静寂せいじゃくのヴェネツィアも、ほんとうに素敵だし

夜、運河にゆらゆらと反射する光を
足元に見ながら
あたたかな色のお店の明かりに誘われて
入ってみたり
(Bacaro バーカロと呼ばれる居酒屋的なお店がいくつもある)

昼間、人が多過ぎてよく見られなかったショーウィンドウを
美術館の絵みたいに、
たっぷりと時間をかけてながめたり

いつもよりゆっくりとした速度で気ままに散歩するのも、とても楽しかった。

そうだ、これはただの個人的な意見だけど…

旅行先で歩くのに、スポーツシューズは確かに合理的なんだけど
ヴェネツィアを、もし人の居ない時間帯に歩く機会があるのなら
私は敢えて、革靴(ブーツを含む)をお薦めしたいかな。

あの街を、厚く柔らかいゴム底の靴で、
早足で歩くのではなくて

じぶんのかかとが鳴らす足音の響きを
ひとつひとつ
街の風景と共に味わいながら
自分にとって自然な速度で歩く。

そうすると 変かも知れないけど

足音がひとつ響くごとに 
街と会話しているような、
街が語ることを 聴かされているような、
(昔語りなどの話を)

そんな気分になることがあって
それが私には、
日本ではあまり経験できない、すてきな体験だったから。

サン・マルコ広場のCafe Florianカフェ フロリアンも、
もし混み過ぎていて中に入ることは出来なくても、アンティークやレトロなものがお好きな人は、必ずのぞいてみて欲しい。
(外から窓越しに見えるので)

特にカルネヴァーレの時期は、中世や、何世紀も前の装いをした人々であふれ、
古いカフェの雰囲気と調和して、まるでタイムスリップした光景を見ているかのよう。

もうね、なんだかアジア人はお邪魔しちゃいけないなって世界。
びなんか、お呼びじゃないです(笑)。
とにかく華美で豪華ゴージャス、装飾過多。
でもそれが、何とも蠱惑こわく的で美しい。

実際のところ、頑張って仮装しているのは、ヴェネツィア人以外の西洋人が多いみたいだけど…

ドレスや髪、アクセサリー、持ち物やお化粧、
もちろん仮面や、男性の服装も、
趣向を凝らしたモダンな仮装も、
美しさにため息を誘われたり、
はっとさせられたり、

時間を忘れて見入って(魅入って)しまうし
目に映るものすべてに心が踊り、
楽しくて、心が嬉しくて喜んでしまう。

カフェ・フロリアンは
昼間はまだいているので
実際に店に入って、気に入った席に座り
まるでヨハネの首でも載せて来そうな銀の盆(*)でサーヴされるカフェとケーキなどを、
店内のインテリアや、窓から眺める広場、
他のお客たちの姿を見ながら楽しむのが
私は好きだけど
このカフェは、実はお値段もかなり「良い」ので

その時は
ヴェネツィアが初めてで、当然このカフェにも初めて来たルカが、カメリエーレ(給仕)が置いて行った伝票を見るなり
まー、怒ること怒ること…

1720年から続いているカフェ(世界最古)なんだよ、内装の維持・修復とか、歴史的遺産を守っていくのに、本当のカフェ代だけもらってたんじゃ足りないでしょ?

と、ぼったくりじゃないよと説明したし、彼が旅行中の食事代を出してくれていた(何故か本人の申し出で…)代わりと、
ここには私が来たかったということで、最初から私が全部払うという話だったのに、お店を出ても、まだぷんすか怒っていた💧

その後、街を散策しながらヴェネツィアングラスを選んで買ったりするうちに普通に戻って、せっかくの『恋人たちの日』を台無しにされずに済みました。よかった…
(ウチの父親もだけど、ずっと機嫌直さない人いるよね。迷惑★)

夜、美味しいヴェネツィア料理を楽しんで
ホテルに戻ったあとは
私が浴室を使っている間に(おそらく煙草を吸いたくて)外へ出たらしく、
探したのか偶然通りかかったのか、
たぶん街のバラ売りの少年から買った、
イタリアでは男性が愛する人に贈るという
《深紅の薔薇》の花束をサプライズでプレゼントしてくれたり、
豪華な朝食をベッドで取ったり
素敵ベタなバレンタインの想い出になりました。

翌日のカルネヴァーレ公式オープニング日のヴェネツィアの街は、前日までとは比べ物にならないほどの人混みになっていた。

すでに数日前からもう、仮面と衣装をつけた人々はけっこう街を歩いていて、謝肉祭の雰囲気は盛り上がりを見せていたのだけど、

大人たちの優雅で豪奢ごうしゃな仮装もさることながら
子供たちの、天使や動物やお姫様や海賊など、さまざまな仮装もほんとに可愛くて、私はよく子供たちにも見惚みとれていた。

これも個人的な考えだけど

ただ見物するだけの観光客として、そのままの格好で街を歩くより
みずからも多少、街全体の雰囲気を作る一部となり、参加するために

美術学校の生徒や芸術家が、観光客の顔にエレガントなペイントを施す小遣い稼ぎを街のあちこちでしていたりするので、それを頼んで描いてもらったり

お土産や自分の想い出のためなら
ちゃんとした職人さんが作るものが良いのだろうけど
旅の予算の都合を考えるなら、屋台の店など、手頃な値段で手に入る仮面もあるので
それを買って着けて歩き、
自分もヴェネツィアの謝肉祭を祝う群衆の一人になる。

あの幻想的な街の
幻想的なカルネヴァーレは

機会があったら
いちどその場所に、身をおいてみることをお薦めします。

とても魅惑的な体験だから。

その時はぜひあなたも
マスケラ(Maschera 仮面)をつけて。


(*)『Salome'』Oscar Wilde
  ヨカナーン = バプテスマのヨハネ


ヴェネツィアという街 (3:34)
Oliver Astrologo



カルネヴァーレの雰囲気① (4:31)
Emo Col Ciuffo


カルネヴァーレの雰囲気② (3:05)
Simone Ori


カルネヴァーレの雰囲気③ (3:16)  
Claudio Marcato


カフェ・フロリアン(5:43)
Piero Fontana

演出ではなく、本当にそこにいた人(お客さん)たち
(って書いてある)

今回は動画を選びきれなくて、たくさんになってしまいました。
内容紹介のあとの(  )内は、再生時間です。


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書いたものに対するみなさまからの評価として、謹んで拝受致します。 わりと真面目に日々の食事とワイン代・・・ 美味しいワイン、どうもありがとうございます♡