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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

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槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(…
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#和風

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱1

あらすじ 槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続…

Luno企画
1年前
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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・参2

 鷹丸家の中庭に面した縁側。そこに座る頃、空間は完全に夜の様相となっており、涼やかな夜風…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・参3

 再開した正一の響きは、篤実さを増し、重みを含んでいる。それ感じとり、深遠は座を改めた。…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・参4

「……上の息子達が、幼くして旅立ったのは、以前お話ししましたね。私は不謹慎ながら、貴方の…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱3

 顔面を覆うほど伸びてしまった前髪と、肩を過ぎてしまった後ろ髪を、ばさりと切り落としても…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱4

 夕刻。鷹丸家の座敷。かつて正一が座っていた場所には、吾一の姿。 「今回も、ご苦労様でし…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱5

 維知香が言った通り、夕餉の食卓は豪勢で、会話の途切れない、楽しい時となった。しかし昼間の一件を気にかけているのか、維知香の顔には、晴れ空のようないつもの笑顔はなかった。  卓から皿が消え、吾一と深遠の前にのみ猪口が並ぶ状態となると、維知香は片づけを手伝うと言って台所へ。その姿が消え、足音が遠ざかると、菊野は静かに音を放ち始めた。 「思春期というものなのかしら。昔っから感情を包み隠さず出す子だけれど、今日はまた、随分とわかり易く拗ねて見せて。そんなところも可愛らしいと私は

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱6

 深遠は黙して言葉の続きを待った。吾一は卓上に視線を固定したまま、静かに音を再開させる。…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱7

 正直に胸の内を吐き出した。その安堵なのか、若干心が軽くなったように感じる。本当に、わか…

Luno企画
1年前