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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

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槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(…
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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱1

あらすじ 槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続…

Luno企画
1年前
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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐5

 槙家の縁側。ヒグラシが夕暮れを告げている。座敷に敷かれた布団で、維知香が静かに眠ってい…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参3

「脱厄術師がいくら強固な結界を施しても、貴方の中に宿るものは反応を示すんですよ。好奇心、…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参4

 部屋の窓から見える空は、刻一刻と約束の時の色に近づいている。維知香に宿る災厄は、ざわめ…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参5

「維知香様ご自身も、心を弱くされていた。あの状態では、とても災厄と通じることはできません…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参6

 灯馬は自身の手をじっと眺め、ぐっと握り、静かに開いた。 「こんな風に、手を握って、開い…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参7 

 紫黒に染まった空を渡り、鷹丸家へ。二階にある維知香の部屋の窓へ向かって、灯馬は器用に風を操る。その巧みさに、維知香は心を弾ませた。 「風と一体になるって、どんな気分なのかしら?」 「今、維知香様もひとつとなっておりますよ」 「貴方によって、だわ。私自身、そうなってみたい」 「ご希望とあれば、お教えしますよ」 「本当? 教えて欲しいわ!」 「必ずや……さあ、到着です。ご家族が驚きますから、屋根に足音を響かせないよう、お気をつけ下さい」 「ええ」  維知香は囁くように返事を