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宿災備忘録 ー 空 薄鈍、そののち

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生まれながらに災厄を身に宿した存在【宿災】。その運命に生まれた少年と、ともに生きるもの達の物語。短編集。 使用画像 ・壱/みんなのギャラリーより/スナフ様(https://n…
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2024年1月の記事一覧

雨、降りしきる夜の窓辺・2

「今夜は冷えますね……少し温まりませんか?」  ふわりと背中を揺らした声に振り返らず、少…

Luno企画
10か月前

雨、降りしきる夜の窓辺・1

 雨の夜に生まれた言葉を  なぜか君に伝えたくなる  君とは誰か。少年は僅かに高揚した心…

Luno企画
10か月前

雨、降りしきる夜の窓辺・3

 ひっそりとした室内。気配を伝えてくるのは、雨音とストーブの炎の揺らめきのみ。そこに潜ん…

Luno企画
10か月前
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雨、降りしきる夜の窓辺・4

「今宵の雨は元気が良いですね」  少年の中にある闘いに割って入った、灯馬の声。その言葉通…

Luno企画
10か月前

雨、降りしきる夜の窓辺・5

「果たして災厄だけなのでしょうかね、過剰な嫌悪感を抱いたのは……あの程度の零念、放ってお…

Luno企画
10か月前

雨、降りしきる夜の窓辺・6

「災厄が私を離れて行く時、不思議な感覚を味わいました。ひどく淋しく、怖いんです。心……そ…

Luno企画
10か月前

雨、降りしきる夜の窓辺・7

「地上から零念が消えることはない。それほど人間は穢れている。それでもお前は、この世界を浄化し続けるのか?」 「はい」 「お前に宿る災厄全てを放てば、一時的だが浄化は進み、清らかな世界になる。お前も自由になる。その可能性を試そうとは思わないのか?」 「はい。全く」 「なぜだ?」 「失うものが大きすぎます」 「怖いのか?」 「否定できませんね」  交えた視線は互いの真剣さを伝え合い、相手が動く時を見逃すまいと、瞬きは訪れない。  少年の前髪。見間違いかと思う程の微かな動き。そ