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【発達×英語】不注意優勢型ADHDと語学学習

先日の記事で、不注意優勢型ADHDについて「集中することが難しい」「何事にも飽きっぽく長続きしない」という話をしましたが、これらの特性は残念ながら語学学習においてかなり不利となります。私も長年ダラダラと(途中で何度かブランクを挟みつつ)英語を勉強して何とかそれっぽい資格を得ましたが、「普通の人ならこの半分の時間でマスターできるよな」と思っています。
ASDの「一つのことを長期間にわたって地味にコツコツ続けられる」という特性は語学学習に有利に働きますが、これにADHDが併発しているタイプの場合、地味にコツコツ続けるのは難しくなります。

今回は不注意優勢型ADHDが直面する語学学習のハードルについて自身の経験を交えながら考察したいと思います。

ADHDの「集中できない」「飽きっぽい」は語学学習の大敵

「飽きっぽい」「面倒くさい」「集中できない」というのは語学学習の大敵です。これらの困りごとを全部抱えている私は、英会話教室も通信教育も最後まで終わらせることができずことごとく挫折しています。

昔、大学時代に「1000時間ヒアリングマラソン」というのをやったことがあります。大体1日3時間ぐらい英語を毎日聞き続けると1年で1000時間達成となります。毎月教材も送られてくるのですが聞く題材はNHKラジオ講座でも何でもよく、英会話教室で過ごした時間もカウントされます。

この「ヒアリングマラソン」を始めて1ヶ月ぐらいはノリノリで1日3時間どころか5時間ぐらい聞いていました。大学への通学時間の往復約3時間+大学の英会話1時間+家でBBCやVOAなどの短波ラジオの英語ニュースを1時間聞けば達成できるのです。1000時間達成した暁にはノイズの洪水のような英語もまるで日本語のようにスラスラ聞き取れるのではないかとワクワクしたものです。

ところが3ヶ月もすると始めた当時の意気込みはどこへやら、まるで憑き物がストンと落ちたように英語リスニングに飽きてしまったのです。通学時間に聞いていた教材のテープはいつの間にか洋楽の曲の入ったテープに替わってました。「英語の歌だからいいやリスニング時間にカウントしてしまえ」と割り切る勇気は私にはありませんでした(←確かNGだったはず)。
月末のリスニングテストを受けて毎月提出しないと修了とならないので一応最後まで頑張りましたが日頃いい加減に聞き流しばかりしていたせいで毎回あまりスコアは良くなかった記憶です。高い教材だったしもう少し真剣に聞いておけばよかったなと思います。

リスニングがなかなか上達しなかったのは飽きっぽいことに加え元々の「注意の困難」もあります。
TOEIC(TOEIC L/R)にはリスニングテストとリーディングテストがありますが、多くの人はリスニングのほうがリーディングよりスコアが高く出ます。
ところがADHD当事者にはこのリスニングに苦手意識を持つ人も少なくないのです。「聞いたそばから話の内容を忘れてしまう」「聞いている途中で注意力が切れて聞き流してしまう」などその理由は様々です。聞いている途中で聞き取れない箇所にぶち当たるとそこで止まってしまうことも多々あるでしょう。私もその一人で「これ多分日本語でも満点は無理」と思っています。
近年の改訂で話者がアメリカ英語のみから発音のそれぞれ異なる米・英・豪・加の4ヶ国に増えたり、会話問題の話者が2人から3人に増えたりしており、このハードルはますます上がっているようです。

すぐに効果の出ない勉強は飽きやすい

勉強には「すぐに成果が表れやすい」ものと「時間をかけて努力しないと成果が表れにくい」ものがあると思いますが、語学学習は後者だと思います。
以前、(途中で飽きて通学を止めてしまった)某英会話教室の先生が英語上達の方法について「効率的な方法というのはなく、何でもいいからひたすら英語をインプットするしかない。最初はバラバラな知識がそのうち形になり全体像が分かってくる」ということを言っていましたが、ADHDの特性を持っていると「形になり全体像が分かってくる」までに飽きて挫折してしまうでしょう。
先ほどの「1000時間ヒアリングマラソン」も最初の200時間ぐらいでもう飽きてしまうわけですから、その間に何らかの形で成果が感じられないと続けるのが苦痛になります。
中学生の頃に英語が好きだったのは、知識ゼロの状態からスタートしているので勉強すればするほど「わかった」という感動がその都度得られたからなのでしょう。高校に入ると語彙も格段に増え文法も複雑になりその「わかった」という感動を得るのがだんだん難しくなります。

「将来役に立つ」よりも「勉強そのものが楽しい」と思える語学を選ぶ

語学学習に限らず、ADHDが継続的に勉強を続けるには「常に自分の前にニンジンをぶら下げる」という動機付けが必要です。それも飽きないように色んな形や味のニンジンを用意する必要があります。
語学学習の動機づけには色々あると思います。例えば「マスターすれば将来役に立つ」から頑張る、という人もいるでしょう。
しかし報酬系が弱く遠い先の成功より目の前の刺激にハマりやすいADHDにとって「将来役に立つ」というのは語学学習の動機づけとしては弱いと思います。いくらメジャーな言語がキャリアアップに役立つとはいえその言葉や文化が自分にとって興味が持てない言語は勉強しても退屈なだけでいずれ挫折するでしょう。

個人的には「メジャー/マイナーにこだわらず自分が勉強してて楽しい語学を選ぶ」というのがお勧めです。「自分が興味ある国の言語」でもよいのですが、一番のお勧めは「その言葉を聞く/読むだけで楽しい言語」です。
私は一時期スペイン語を勉強していました。英語学習の成果がなかなか出ず煮詰まっていた時期にたまたま家のスポーツ番組で見ていたサッカーのスペインリーグ(リーガ・エスパニョーラ)にハマってスペイン語のニュースサイトを読みたいと思ったのがきっかけです。それまでに色んな言語(韓国語、ロシア語、フランス語、アラビア語等々)に手を出しては挫折を繰り返していたのですが、スペイン語が比較的長く続いたのはスペイン語の音自体が聞いてて心地の良いものだったからだと思います。結局西検4級(英検準2級相当)で満足して勉強をやめてしまったのですが、大学時代の第二外国語だったドイツ語よりもスペイン語のほうがまだ読めるかもしれません。

他にお勧めとしては「海外の人とメールやメッセージのやり取りをする」というのがあります。ADHDの場合、一人で黙々と勉強するよりも誰かと話す方が楽しいですし「相手のために頑張ろう」というモチベーションが生まれるので続けることができます。私も若い頃に共通の音楽的趣味を持つ香港の女子大生と数年間メールのやり取りをしてましたが、その時が一番英作文の力が鍛えられたものです。
今はTwitterで海外のアーティストのツイートに英語でリプライをするというのも手軽でお勧めです。たまにアーティスト本人から自分のリプに「いいね」がつくとモチベーションが格段に上がります。

以上はあくまで一例で全てのADHDの方に向く方法というわけではありませんが、自分に合った方法で「常に前にニンジンをぶら下げる」状態をキープしたいものですね。

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