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発達障害と食事について。

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)と食事の関係については昔から度々論じられてきました。
巷では「食事で発達障害がよくなる」という趣旨の本が何冊も出ていますが、これらは「治るなら藁にもすがりたい」と切実に願う当事者や当事者の親にとっては惹きつけられるものかもしれません。

本当に食事で発達障害がよくなるのでしょうか?また発達障害があると食生活にどのような影響が出るのでしょうか?発達障害の当事者である私の経験から考察してみたいと思います。

偏食のために体調を崩しやすいASD

ASDの感覚過敏が味覚に現れると偏食となりやすいです。私も子供の頃は偏食が酷くて野菜や魚は殆ど食べず肉やチーズなど乳製品、加えてスナック菓子ばかり食べていました。中学~30代ぐらいまで洋楽や英語など欧米文化にかぶれていたこともあり、和食よりも欧米食の方に魅力を感じていたのだと思います。
しかし小学生の頃から脂漏性皮膚炎になり、思春期に入るとニキビや吹き出物に悩まされるようになりました。社会人になっても吹き出物は治らず、40を超えてからはさらにアトピー性皮膚炎が出てくるようになりました。親からは「ちゃんと顔を洗え」と言われ、学校の同級生や会社の同僚からは「どうしたの?可哀想」と心配され、数試した市販の薬や病院の処方薬も効果がなく、鬱々とした気持ちに度々陥りました。
また原因不明の頭痛や胃痛、激しい生理痛にも絶えず悩まされ、若い時期の殆どを体調不良と痛みと肌の炎症に苛まれながら過ごしてしまいました。

後にわかったことですが、私は肉や乳製品中心の欧米食よりも米や野菜、大豆や魚中心の和食のほうが圧倒的に体質に合っていたのでした。最近になって肉を食べるのをやめ和食中心の食生活に切り替えたところ、1年もたたずに長年悩まされてきた肌のトラブルや頭痛が劇的に改善し自分でも「今まで辛かったのは一体何だったんだろう」と驚いています。
ASDの味覚過敏からくる偏食が長年これらの食材を遠ざけていたのは、今から思うと本当にもったいないことだったと思います。
最近の研究でASDは腸内細菌叢のバランスに偏りがあるということが指摘されていますが、それだけ食材に過敏に反応したりストレスを受けやすいのかもしれません。

刺激物や甘いものに依存しやすいADHD

脳の覚醒度が低めのADHDはついつい脳を覚醒させるための刺激物を求めてしまいます。
コーヒーやエナジードリンクのカフェイン飲料の他に、激辛ラーメンやカレーのような刺激物が大好きなADHD当事者も少なくありません。私は学生の頃は激辛料理や激辛スナックが大好きで、大学近くの喫茶店の激辛カレーを食べるのが日課だったことがあります。20代前半までラーメンにはラー油、ピザやパスタにはタバスコ、そばやうどんには七味や一味の唐辛子をドバドバかけていたものです。
先ほどのASDの味覚過敏と矛盾しているように見えますが、ADHDとASDの併発タイプにはこのような「刺激追求性と感覚過敏の共存」があり、それが味覚にも現れていたのかもしれません。
しかし年を経るにつれてこれら激辛食材が胃腸に負担がかかるようになってしまったので今はお腹のために辛さは「ほどほど」にしています。

またお菓子など甘いものに依存してしまうADHD当事者も多いです。「ADHDは肥満が多い」という海外の研究がありますが、元々の特性というよりは砂糖など甘いもの依存の影響と考えられます。
何故ADHDは砂糖に依存してしまうのでしょうか?それは砂糖によって血糖値が上がると瞬間的に覚醒効果が得られるからです。
以前、低血糖疑いで糖負荷試験という血糖値の検査を受けたことがあるのですが、前日午後から一切絶食だったため当日フラフラになりながら病院に着いたのですが、検査前にトレーランというサイダーのようなブドウ糖液を飲んだ瞬間それまでボーっとしていた脳が劇的に覚醒してビックリしたことを今でも覚えています。「砂糖が覚せい剤と言われるの納得」と思ったものです。
そもそも低血糖になったのも日中仕事中に飴やグミ、ラムネ、チョコレートなど甘いものを常時口にしていたからで、私自身も「甘いもの依存/砂糖依存」だったのですよね。
よく「砂糖がADHDの原因」という説を見かけますが、ADHDは生来の脳機能の偏りなので砂糖で血糖値が乱高下することによるメンタルの不安定化とは別物です。ただし砂糖がADHDの特性からくる問題行動を増長させる可能性はあると個人的には思います。

食事で発達障害は治るのか?

さて、実際に「食事で発達障害は治る」のでしょうか?個人的な感覚から言うと「治ったりはしないが少なくとも悪化は抑えられる」ということはいえるのかなと思います。気温や気圧と違い食事は数少ない「コントロールできる外部ストレス」なので、悪化抑制のために食事を工夫する価値はあると思います。
またASDは腸内細菌叢のアンバランスから腸が弱い傾向があるので、自分の腸にとって負担のかかる食べ物はできるだけ避けたほうが、私自身の経験を振り返っても「よい」と思います。

ちなみにASDに共通の「腸に良い食材」というのは今のところは「ない」と考えたほうがいいと思います(今後ASDの腸内細菌叢の研究がさらに進んで共通のパターンや共通の「良い食材」が見つかるかもしれませんが)。私は肉を食べないほうが体調がよくなるタイプですが、著名な発達障害カウンセラーである吉濱ツトム氏は逆に糖質を制限し肉や卵などの動物性たんぱく質を積極的に摂取する「ローカーボ療法」を推奨しています。どの食材が自分に合っているかは実際に自分の身体で試してみないとわからないのがもどかしいところではあります。
自分に合った食を選ぶことは自分に合った生き方を選ぶことに通じる」ということが言えるかもしれません。それぐらい難しく、しかし価値のあることだと思います。

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