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Lunatic tears _ASTERISK 1

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Lunatic tears _ASTERISK 第1巻「静寂に奏でるアリア」
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2023年11月の記事一覧

LTRA3-1「Disguised Orphan」

 不鮮明ながらも開けていく視界が、最初に捉えたのは、白い天井だった。そして目元には、クリアグリーンの何かが見える。酸素マスクか。
「……助かったんだ……」
誰にも聞こえないほどの声で呟く流雫。しかし、それよりも気になることが有る。
 顔を左に向けると、其処には同じようにベッドに寝かされている少女がいた。
「澪……」
弱々しい声で、最愛の存在の名を呟く流雫。
 ……胸は微かに動いている。生きている。

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LTRA3-3「Cling To Honor」

 「僕は……アリスを救いたい」
その言葉に目を見開く聖女。その目を見つめながら、流雫は続ける。
「聖女アリスを愛する人が……泣かなくて済むのなら」
 ……神でないものに縋る、それはタブーだと教えられて、アリスは生きてきた。人に頼ることを知らないまま育った。そして、助けるだの護るだのと言ってくる信者もいたが、全部言葉だけだった。
 今は、謂わば非常事態。それでも信じてはいけないのか、否か。予想外の言

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LTRA3-2「Lost Place」

 父の職場に泊まるのは初めてだったが、流雫とアルスが何処で夜を明かすか、と思えば逆に好都合。澪はそう思った。そうやって、少しでもポジティブになるものを見つけなければ、やってられないのが本音だ。
 性別の都合で流雫とは相部屋にできないのは、仕方ないが不満。だから澪は、隣のコンビニに行く口実で流雫を外に誘った。
 冷たいココアを口にした後で、臨海署裏の岸壁に並ぶ2人。こうして隣にいるだけで感じられる安

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LTRA2-13「Bit Of Light」

 「る……な……!?」
そう口にした澪の頬が濡れ、絶望と焦燥感が少女を支配する。
 やだ……!
「流雫……!」
最愛の少年の名を呼びながら近付く澪。その身体を抱え、唇を重ねる。この身体に残る全ての酸素を送りたい。
「……っ……!」
今人工呼吸しても、何の役にも立たないことぐらい判っている。しかし、何が何でも流雫を救いたい。その唇と絡めた指に残るほのかな熱に、一縷の希望を託して。

 大教会の前は騒

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LTRA2-12「Dancing Blue」

 アリスに背を向けて立ち上がった澪と、扉の近くに立つ流雫。その2人に挟まれる形の男は3人。揃って着ているネイビーのスーツは、太陽騎士団の制服のようなものだ。
 アリスがクローンだと知っていたから、撃った。敬虔な信者としての正義が暴走したのか。いや、そこまで高貴なものじゃない。そもそもどうやって、アリスの秘密を手に入れたのか。
 2人のスマートフォンがほぼ同時に鳴った。しかし、通知に目を通すことはで

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