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Lunatic tears 1

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Lunatic tears 第1巻「Faust」
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2023年5月の記事一覧

LTR 1-2「Tokyo Attack」

 トーキョーアタック、と云う言葉が有る。元々、トーキョーアタックとは1945年3月、WW2の最中に発生したアメリカ軍による東京大空襲を指す。
 そして、トーキョーサリンアタックと云う言葉も有る。1995年3月、カルト教団によって発生した地下鉄サリン事件を指す。日本転覆を狙った宗教団体が、有機リン化合物の神経ガスであるサリンを自前の施設で生産し、東京の地下鉄車内で散布した。
 名前を出すのも憚られる

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LTR 1-1「Deadly Delay」

 2時間遅れでパリ、シャルル・ド・ゴール空港を飛び立った飛行機は、30分だけ遅延を取り戻して東京中央国際空港に着陸した。いささか時代遅れ感も否めない4基のエンジンが、ややハードな接地から少し遅れて大きく音を上げ、一気に速度を落とす。
 本当はもう30分早く、つまり予定より1時間遅れで済むハズだったが、別の飛行機が緊急着陸をすることになり、一度着陸をやり直すことになったのが原因だった。
 滑走路から

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LTR 1-0「at twenty three」

 「美桜、明日河月駅に何時だっけ?」
スマートフォンのスピーカー越しに聞こえてくる同級生の声に、美桜と呼ばれた少女は
「8時かな?」
と答える。壁に吊り下げられたカレンダーには、志織と東京とだけ書いてある。
 ウェーブが掛かった黒いセミロングヘアを撫でながら、ピンクの薄いルームウェアに袖を通した欅平美桜は明日の楽しみを抑えられず、微笑んでいた。
 ……明日は同級生、笹平志織と2人で日帰りで東京に行

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LTR Op「In My Eyes In Your Eyes」

 雲一つ無い、綺麗な蒼のスクリーン。未だ冷たさを残す東京の空は、同じような蒼を纏いつつも、蒸し暑かったあの日を思い出させる。
 ……僕の瞳に映る、僕が生きてきた証。あたしの瞳に映る、あたしが生きていく光。その全てを引き寄せたのは、あの日世界から切り取られた少女が掛けた、最初で最後の魔法だった。今ではそう思える。僕とあたしが、この世界で彷徨わないようにと。
 狂ったように泣き叫んで、それでもまた立ち

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Lunatic tears(ルナティックティアーズ)

●シリーズ全体のキャッチコピー
「世界は時を止める、君の瞳に宿る僕のために」
●Lunatic tearsキャッチコピー
「護りたかったのは、君といる未来」

●概要
 国民に銃の所持と使用が認められた、2024年の日本。そのきっかけとなった2023年8月の東京同時多発テロ、通称トーキョーアタックで恋人を失った高校生、流雫(ルナ)はSNSで澪(ミオ)と名乗る少女と出逢い、彼女に心を開き始めていた。

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