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ドイツと日本の働き方の違いについて

ドイツで仕事をして計3年ほどになりました。日本でも同じくらいの期間働いていたので、この記事ではドイツと日本の働き方について、自分の経験をもとに比べてみたいと思います。

結論から言えば、純粋に働き方だけを見た場合、ドイツの方が格段に働きやすいです。しかし、日本の方が就職がしやすく、職の安定性が高いと思いますし、ドイツでは外国人として働くことになるのでビザの問題もあります。

なお、私は日本で官庁とITの外資コンサルで働いており、ドイツのベルリンに留学で来てからは、ITのスタートアップでビジネスデベロップメントの仕事をした後、今はキャリアチェンジをしてプロダクトデザイナーとしてUX・UIデザインの仕事をしています。

ちなみに、ドイツでのデザイナーへのキャリアチェンジについては、こちらの記事にまとめてあるのでよかったら読んでみてください👇

というわけで、日本にいたときとドイツに来てからでかなり異なった業種で働いており、同じ業種での比較はできないので、あくまでも個人の経験として受け取っていただければと思います。また、私は今まで東京とベルリンでしか働いたことがないので、両国の他の地域についてはよくわかりません。


働きやすさの比較

東京で大学院を出て初めて就いた職業が国家公務員で、毎日終電以降帰りという生活だったので、流石にそれに比べれば、残業がなく有給も多いドイツは働きやすいと断言できます。(その次に就いた職業がコンサルでそれなりに残業も多かったので、日本での仕事の比較対象が偏っている気もしますが...)

ドイツのIT系の仕事に限って言えば、ベルリンのスタートアップだとしても残業が毎日ある会社というのは聞いたことがなく、実際に今までこちらで在籍したどの会社でも、定時以降の勤務を求められたことはほぼありません。割り当てられたタスクをこなし、ミーティングに出ていれば、勤務時間についてうるさく言われることはないです。今の会社はフレックス・リモート勤務で、大体9時から18時まで仕事しています。

傷病休暇は有給に関係なく取ることができますし、体調が悪ければ医師の診断書も無しに3-4日休むことが可能です。ベルリンの祝日は年間9日ほどしかありませんが、有給はどの会社も年間25日から30日ほどあるため、1ヶ月不在にする同僚なども存在します。夏やクリスマスあたりの時期は特に多くの人が休暇を取るので仕事が回らないのではと思いきや、意外と回るような気もしています。(スピードは確実に遅くなります)

また、こちらで私が特にありがたいと思うのは、怒鳴る・暴言を吐くといったパワハラをする上司がほぼ存在しないことです。(私が経験したように)少人数のスタートアップであればこの限りではないかもしれませんが、一定以上の社員数がありかつHRがいる会社では、パワハラがあれば解雇されるはずです。ただ、もちろん例外はありますし、確率の問題かもしれませんが、それでもドイツでパワハラ上司に遭遇する確率は非常に低いと思います。

ちなみに私が日本で働いていた時は、チームや部署内に一人はパワハラをしてくる人や、それによって精神を病む方がいたのですが、普通の会社は日本でもそんなことはないのでしょうか...。

むしろ、こちらのリーダーシップのトレンドが「褒めて伸ばす」といった感じなので、基本的にドイツでの上司は私が何かタスクをこなすとわりと大袈裟に褒めてくれます。定期的にあるフィードバックではそれなりに冷静に分析されますが、お互い日々気分良く仕事ができるのはとてもありがたいです。

そのほか、こちらではジョブ型の採用が基本なので、例えばデザイナー枠で入社したのに事務をやらされている、というようなこともほぼありません。急な部署の異動や、他の地域への強制的な転勤というようなこともないです。

また、全体的な雰囲気として、仕事が最優先という人はベルリンでは特に少ないと思います。金曜日の午後から週末が始まっているような緩いところがあります。


就職のしやすさと仕事の安定性の比較

ドイツの良いところだけを書いてきましたが、一般的に言って就職は日本の方がしやすいと思います。また、解雇されにくいという点で日本の方が仕事の安定性が高いです。

日本の就活は悪く書かれがちですが、ドイツの採用方法と比較すると、何も経験やスキルがない新卒をフルタイムで雇ってくれるというのはすごいことだと思うようになりました。

ドイツでは基本的に数ヶ月かもしくは数年のインターンを経て、働きぶりが認められればフルタイムの社員として雇用される、というのが一般的です。なので学生は大学にいる間に、その後の就職に直結するインターンをできるだけこなそうとします。

しかも、大学で何を勉強したかが重要なので、例えば大学で歴史をしたが、ビジネス系の仕事に就きたいといった場合は、さらに就職難易度が上がります。他の欧州の国に比べても、専門性を重視するドイツではこの傾向は強いと思います。

なお、大学名はほとんど重視されない気がします。一応ドイツでも有名な大学というのはありますが、その名前だけで就職が容易になるといったものではないようです。もちろん、イギリスのオックスフォードやケンブリッジ、アメリカのハーバードというような、誰でも知っている世界の名門大学を卒業している場合には一定の尊敬を受けている印象はあります。ちなみに、私は早稲田と東大にいたのですが、こちらでは誰も知りません。日本でどこの大学にいたかなどは完全に関係ないですし、そもそも就職してから大学名を気にする人は皆無です。

また、ベルリンと東京を比べると東京の方が圧倒的に求人が多いです。特にベルリンで英語で仕事をしようとする場合、ドイツ人だけでなく世界各国から来た移民と競合することになるので、職を得るハードルは高くなります。

ただ、ITスキルなどの専門性があれば仕事のオファーは出やすくなりますし、それが一定の給与額を超えていれば、ビザの取得は容易です。なので、海外で就職したい場合、日本で大学卒業後、数年IT関連の仕事に就き、その間に英語を勉強してリモートで海外就活というのが一番現実的かつ無理のないパターンかと思います。

私はドイツに来てからキャリアチェンジをしたので、ビザの面でも金銭・時間な面でも非常に効率が悪くリスキーでした。唯一ラッキーだったのは、最初に1年間の学生ビザを申請した際、なぜか3年のビザが降りたので、このビザを使って学生として長期間インターンができたことです。もしこのビザが降りていなかった場合、途中で確実に日本に帰らざるを得なかったと思います。

ちなみに、ドイツで採用された場合、研修というものはほとんどありません。大学を卒業して初めてのフルタイムの仕事だったとしても、採用されたからには、既にその仕事をこなすのに十分なスキルや経験があるとみなされるからです。正直に言って、入社後に文字通り即戦力として結果を求められるのは少し辛いところがあります。また、ビザを必要とする外国人の場合、解雇されて一定期間内に次の職を見つけなければ、ドイツ国内に止まることができません。

また、試用期間は6ヶ月もあり、この期間中に仕事が一定水準に満たないと判断された場合などは容赦無く解雇されます。この傾向はやはりスタートアップだとより顕著で、本人の能力にさほど問題がなくとも、経営状態の悪化などの他の要因でこの期間中に解雇されることがあります。

パーマネントの契約で6ヶ月を過ぎると流石に解雇されにくくなりますが、とはいえIT系の仕事の場合、大体多くの人が約1-5年ほどで転職していきます。主な理由は、転職すると給与が上がりやすいからです。この辺は次の項目で詳しく見ていきたいと思います。

日本だとあまり転職回数が多いとネガティブに見られる傾向が強いようですが、ドイツでの転職回数はそれほど問題にならない印象です。欧米のテック業界だと1社2年ほどの勤続年数が望ましいというような話を聞いたことがありますが、真偽はともかく転職は非常に一般的ですし、誰もが転職を前提に働いているようなところがあります。

私としては一つの会社に何年もいると飽きてしまうので、こうした転職文化は割と好きです。常に転職活動しているような気もしますが笑


給与の比較

税金や物価の問題や職種の違いがあるので、単純に日独で給与について比較するのは非常に難しいのですが、東京とベルリンを比べると、東京の方が税金が低い分、手取り額が多かった気がします。東京での手取り額は額面の75-80%くらいでしたが、ベルリンでは65-70%ほどです。

また、日本の企業では家賃手当や交通費が支給されるところが多いですが、ドイツではこういったプラスアルファの手当てがあることは稀だと思います。一応いま勤めているベルリンの企業では給与にプラスしてトレーニング・スキルアップ学習用の予算が少しありますが、一般的なのはそのくらいでしょうか。

ただ、物価を考えると東京に住む方がベルリンに住むよりも生活費がかかっていたので、総合的に考えると毎月の生活費を引いて手元に残る額はほとんど同じかもしれません。少なくとも体感的に大きく差があるものではなかったです。

ところで、ドイツでの給与決定のなされ方というのはなかなかわかりづらいです。日本の企業であれば、例えば求人票に給与レンジが提示されていたりしてそれなりに明快だと思うのですが、こちらでは年収を毎回面接時に交渉しなければなりません。

うまく交渉できた場合、年収の2倍増しも珍しくないはずです。ただ、この辺は場合によりますし、それほどオープンになっていない部分なので、正直に言って給与がどのように決まるのか私自身もまだよくわかっていません。

一般的にはGoogleで都市と職種名を検索して、平均年収を把握し、自分の経験を考慮して交渉という感じでしょうか。例えば、UXデザイナーのドイツの給与を取り上げると、こちらの記事によると目安は以下の通りとなります。
Low: €36,000 (約460万円)
Average: €51,000 (約650万円)
High: €76,000 (約970万円)

デザイナーの給与については、こちらのシートからドイツだけでなく、世界各国の実態をより詳しく知ることができます👇(今のところ日本は入っていませんが)やはりアメリカは別格で、年収$300Kも入っていますね 👀
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1ZK3x80Nt2J0fCMpyJB8Z5_v9tJx4M9OWm2o7GGk38Vc/edit?usp=sharing

大体の場合、給与交渉時に「希望年収はどのくらいですか?」と聞かれるので、給与の大体の目安を知っておくことは非常に重要だと思います。会社側も求職者がこのような情報を知っていることを前提にしているようで、妥当だと思われる水準よりも高すぎたり安すぎたりする数字を提示してしまうと、給与交渉は難しくなるかもしれません。希望額の20%増くらいの金額から徐々に交渉するのが良いと聞いたことはありますが、今後慣れていきたいところです。

ちなみに、シリコンバレーのソフトウェアエンジニアの例ですが、給与の交渉についてはこの「How I negotiated a $300,000 job offer in Silicon Valley」という記事が面白かったです。真似できるかは別として、考え方は知っておくと良いかもしれません。


ひとまずはこんなところでしょうか。上記の通り日本で働く方が良いこともありますが、個人的には今のところドイツで働ている方が満足度が高いです。最終的にはコスパなどではなく個人の好みによると思いますが、参考になれば嬉しいです。

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