おすすめ画像診断教科書〜医学生/研修医/後期研修医/放射線技師向け編〜

こんにちは、画像診断医/放射線科医のるなです。私は放射線診断専門医であり、核医学専門医、マンモグラフィ読影認定医も持っております。読影は下手ですが好きです^^

今回、よく”おすすめの教科書”を質問して頂ける中で、完全に独断と偏見で、私の"画像診断"の教科書の"推し"を紹介したいと思います。

恐らく、私のnoteやtwitterを一番見てくださっているのは後期研修医の先生や、放射線技師さんだと思っておりますので、今回は

*医学生で国家試験に向けて画像の勉強をしたい。

*研修医で当直に向けて画像の勉強をしたい。

*画像診断医として駆け出しで画像の勉強をしたい。

*放射線技師として最低限、読影の勉強をしたい。

という方向けに記事を書いてみようと思います^^

ちなみに私の大先輩である和田先生(@wadase2)が、おすすめの教科書を書いてくれておりますのでこちらもご参照ください^^


~学生編~

結論から言うと、"国家試験に合格する"というところを目標とするのであれば、下で紹介する「画像診断コンパクトナビ」一冊で、国家試験に必要な知識は得られると思うので、これだけ買えばいいと思います。病院実習をしている学生さんはほとんど持っている印象ですが、国家試験ということを主眼とすると、国家試験に落ちる学生は「周囲と違うことをしている学生」なので、逆に持っていない人はこの一冊に書いてある内容くらいは理解しておいた方がいいと思います。

画像診断コンパクトナビ

”医学生が国家試験を解くために必要な知識がコンパクトにまとまっている”という観点に特化すると、名著だと思います。ただ、研修医で放射線科を回る先生でもこの本を持っている先生を散見しますが、正直、あまり実践性には向かないと思います。あくまで国家試験合格用と割り切るのが吉な書籍かなと思っています。

国家試験の画像診断については決まった問題しかでないので、読影自体は過去問を解けば大丈夫であると思います。なので学生の方はここで読むのをやめてもらってもかまいません。しかし、付け焼き刃の知識だと、研修医になってからとても苦労します。なぜなら、「画像診断は証拠が残る」からです。当直中、研修医がファーストタッチで救急を診ることが多いと思いますが、その中で画像を撮ったときに「上級医を画像を確認してもらうためだけに起こす」ということがめちゃくちゃ気を使います。ときには起きてくれない上級医もいます。そういうとき、外科へのコンサルトを急ぐべきかそうではないのか、ある程度、画像の知識が必要になります。「証拠がのこる」ため、万が一そこで判断を間違えたら、確実に問題になります。研修医になったら、研修医は労働の駒としてフル稼働させられるので、まとまって勉強する時間はないですし、系統的に教えてくれる病院は稀だと思います。ですので、学生さんで、まとまって時間がとれる学生のうちに勉強したいという人はこの先も読んでみてください^^

~初期研修医編(主に救急)~

基本的に臨床研修病院であれば、放射線科がいることがほとんどですし、待っていれば2日以内に画像診断報告書が出ることも多いですし、上級医もいます。研修医の読影知識というものは日常診療ではそこまで求められません。しかし、「救急・当直」の場面は別です。救急疾患については、初期研修医の「上級医の判断を仰ぐか」「他科オンコールヘ相談するか」がときに、患者さんの命を左右することがあります。ですので、研修医の先生は「救急疾患」に焦点をしぼって画像診断の勉強をすることを勧めます。

理想としては、「頭部」「胸部」「腹部」「その他の救急疾患」に分けてそれぞれについて1冊くらいは教科書を読むのが理想だと思います。ただ、研修医の先生はそこまで時間も余裕も無いと思います。また、私は勉強するときに「まずは完璧に理解できなくても全体像を把握する、概要を把握する」ことが非常に大切と考えています。ですので、2つの意味でまずは下記の2つの本で網羅的に勉強するのを勧めます。この2冊で救急画像診断の全体像を把握してから、後に紹介する教科書で勉強するのが理想だと思います。

画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン

私が一番推したいのはこの本ですね。この本は本当に素晴らしいと思います。研修医が救急当直で出会うような、common diseaseを網羅していますし、特に好きなのは、”異常の基準値”が明示されているところですね。主膵管拡張は○mmから異常、虫垂拡張は○mmから異常など、根拠が明示されているので、研修医にとっては心強いと思います。また、肺区域をテニスのスイングにたとえて、説明したり、解剖の知識もフランクに明示しています。ちなみに中堅にさしかかった私も未だに、たまに参照しています。放射線科診断専門になっても使える一冊。この本だけはマジで絶対買いと、断言できるくらい名著ですね。是非買ってください!ちなみに2も名著です^^


CT読影レポート、この画像どう書く?〜解剖・所見の基礎知識と、よくみる疾患のレポート記載例

これも素晴らしい名著ですね。とちらかというと"放射線科の後期研修"向けに”画像診断レポートをどのように書くか”を説明している本ではありますが、プロセスの違いはあれど、若手が遭遇するcommon diseaseの所見の取り方、知識が網羅されており、もう一冊買うならお勧めしたい一冊です。ちなみに私のtwitterの師匠であるフクロウ先生(@tk2cafe)も大絶賛しています!ちなみにアマゾンの月間ベストセラーを常にとってます、この本。医学書としてはモンスター本なんでしょうね!^^

ユキティのER画像Teaching File

ユキティの「なぜ?」からはじめる救急MRI

上記2つの教科書より、もっと「救急画像」を「フランク」にというところにfocusしたのが下記2つの教科書です。非常に読みやすく、さらっと読めます。これまで上で紹介した2つの教科書はより、実践的ですね。ただ、より即効性がある反面、エッセンスよりはテクニック集的な要素あるので応用面という点ではやや物足りなさはあります(disではなく、これらの要素は表裏一体なので仕方ありません)、一通り知識がある先生向けではないかもしれません。1-2冊目に読む本としては超推したいと思います!^^


~後期研修医、放射線技師、初期研修医2-3冊目編~

次に上の初期研修医編で書いた内容をなんとなく概要を把握した、という初期研修医の先生や、放射線科後期研修医の先生、放射線技師さんにお勧めの本を紹介します。より、深い画像診断や画像診断の本質を学ぶ入り口に最適な本を紹介します。これらの先生も、まずは救急疾患での読影力が主に求められると思いますので、救急疾患を中心にご紹介します。

この段階にくると網羅的な教科書もいいですが、より「頭部」「胸部」「腹部」など分野を絞って、病態生理や画像所見の成り立ちを考えた読影ができると理想だと思います。

すぐ役立つ救急のCT・MRI 画像診断 別冊 KEY BOOK

より、救急疾患全体を網羅的にかつ系統的にまとめた教科書ですね。この本の内容を、通読して理解すれば最低限救急画像は大丈夫だと思います。ただ、最初の1冊として読むにはやや、ページ数が多いのと硬いので、まずは上で紹介した本で導入して、2-3冊目でこれを読むというのが正着かなぁと考えます。

圧倒的画像数で診る! 画像アトラス〜典型例から応用例まで、2000画像で極める読影力!

すごく売れてるわけではないですが、私が好きなのは圧倒的画像数で診るシリーズです。普通の教科書は1疾患で載っていても画像が2-3枚なんですが、1疾患について5-6症例は画像が載っているんで、その疾患について、なんとなく共通したイメージができるんですね。また嬉しいのは、その疾患と鑑別診断を要する疾患の画像や鑑別診断のポイントが書いてあるので、結構実践的でもあるんですよね。たとえば、「肺のすりガラス影」の患者さんがいたとして、「肺水腫」という疾患が思いつけば、「肺水腫」のところを調べてから、その他の「肺すりガラス影」を呈する疾患も一緒に検証できるわけです。いわゆる「絵合わせ読影」ができるので、とても重宝しています。また、こういう系の本って往々にして、解説がpoorなんですが、むしろこの本で初めて知った知識も書いてあったりして、結構解説が充実しているのもgoodです。3冊全部買っても全く損はないと思います。

ちなみに確か数年前にテント下のPMLを調べていて、日本語の教科書でテント下のPMLの画像がこの本に載っててびっくりしたことがあります。

救急疾患の画像診断とインターベンション

特に、夜間の当直で最も、決断が迫られるのは腹部画像なんですね。頭はいうても脳血管障害がほとんどですから、梗塞・出血があるかだけわかれば夜はしのげることが多いです。胸部も異常があれば、一見して分かることが多いです。しかし、腹部は時に微妙な所見を見逃すと、次は大事になって帰ってくることがあります。そういう意味では、まずは分野別に絞るなら腹部から勉強した方が良いでしょうね。 この本は血管内治療(インターベンション)についても言及して、診断から治療までの導線を意識した本になっており、大変名著です。また、考え得るほとんどの急性腹症の原因となり得る疾患を網羅しており、非常に勉強になった一冊です。まずはこの本をおすすめしたいと思います!

ここまでわかる急性腹症のCT 第3版

もう一冊、これはもう名著of名著ですね。一昔前の放射線科医はみなこの本で急性腹症を勉強したと思います。比較的最近、新版が出ています。volumeたっぷりですが、正直この本を通読して理解が出来れば、夜間当直は怖くないと思います。もちろんこの本から読み始めてもいいとは思うのですが、2-3冊目に読むのが一番効率がいいかなぁと思います。私も未だにたまに参照しています。

レジデントのための腹部画像教室

この本は救急という観点からいくとちょっと違うんですが、画像の成り立ちや病態生理など、非常にわかりやすく書いてあって、この本に書いてある原理原則があれば、診たことない疾患でも”危険”だなと感じることが出来る能力が身につく名著ではないかなと思っています。

レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室[ベストティーチャーに教わる胸部X線の読み方考え方] 改訂第2版

また、上記本の胸部編もご紹介しておきます。この本は、私も読み直して、非常に勉強させていただきました。なぜ胸部異常陰影が出るのかということに関して、非常に理解が深まる名著です。

本当は教わりたかった ポータブル胸部X線写真の読み方 サクッと読めて、ガツンとわかる7日間特別講義

胸部の本でもうひとつ、ご紹介します。これも最近出た本ですね。今まであるようでなかった、ポータブル胸部写真の本です。胸部単純写真についてはマンパワーの関係で、レポートが出ない施設が多いですし、毎日CTをとれるわけではありません。しかし、ポータブルしか撮影できないような状態の悪い患者さんは、ポータブル写真の所見がときに命の分かれ目となるときがあります。逆に、放射線科医より、臨床の先生に読んでいただきたい一冊でしょうか。もちろん、放射線科の先生が読んでも勉強することしかありません。


~解剖編~

最後に画像解剖の本を紹介して終わりにします。やはり、画像診断は正常がわからないと異常に気づけませんから、解剖・正常をしるというのは画像診断の基本なわけです。

CT/MRI 正常所見ポケットアトラス

これ、すごい名著なんですが、もしや絶版なんでしょうか・・?なんと頭から骨まで全ての大きさや長さの正常値が書いてある本で、私未だに参照頻度上位の書籍なんですが、是非是非、再版や類似本の出版をお願いしたいところですね!!

画像解剖 徹頭徹尾-疾患を見極め的確に診断する

私はこのシリーズが好きですね。ページ数も適当で、かつ色々なモダリティで、臨床的に実践性のある画像解剖や系統的な知識が網羅してあります。カラーや構成も綺麗で非常に読みやすいです。解剖の本ってどうしても厚くなってしまい、携帯性にも劣ることが多いのですが、これらの本はそういう点もカバーできる点が好きです^^

頭頸部画像診断に必要不可欠な臨床・画像解剖

頭頸部の解剖はこの本一択ですね。この本は最初は画像診断の2号連続企画として出版され、その後、増刊号として出版され、今は製本化されたんですけど、一時期増刊号が絶版の時期があり、私はヤフオクでわざわざ高値で買いました(笑)。株でいうと負けてますね(笑)。今の研修医はこの本が定価で買えるなんて幸せです。非常に実践的かつ、頭頸部の画像解剖が明快に分かる本であり、私は穴が開くくらい読みました。余談ですが、頭頸部のエキスパートの先生が、「頭頸部画像診断は画像解剖が9割だから、頭蓋の模型をかってひたすら触って眺めろ」っていってましたね。誰か私に模型買ってください、笑。


マイヤース腹部放射線診断学: 発生学的・解剖学的アプローチ

最後に腹部解剖の本を2冊紹介して終わりたいと思います。これはもう古典的名著ですね。解剖学的な発生から間膜などの画像では見えない構造を診る、疾患を診るという本であり、私の知っている腹部のエキスパートの先生は大体この本は一度は通読されていますね。それくらい、バイブル的な本です。

Canal Foramen, Fissure, Space & Membrane 読影の手立てとなる局所解剖と画像診断

もうひとつはちょっとニッチな、名前があるような解剖構造と解剖構造の間の間隙や膜に注目した解剖書です。当然、構造と構造の間にも病気は起こり、つながりがあるので、とても重要な概念です。この本はさすさに放射線科後期研修医向けでしょうか。ただ、本当にこれも読み応えがあったいい本です^^


ここまで読んでいただきありがとうございました。

普段、私は画像診断・医療について

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